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星瞬きし空の下で 第一話 Bパート [星瞬きし空の下で]

「何から話そうか」
 流石におおっぴらに話す内容ではないので、二人は放課後になるのを待って桜の家に来ていた。道中沈黙したままの気まずい空気だったので、桜は早めに切り出したのだ。
「最初からお願い」
 もっとも、そう訊かれるであろうことは察しがついていたので、桜はゆっくりうなずくと口を開いた。
「うん。ただ、これから話すことは口外しないでね」
 深耶もうなずく、親友である自分にも秘密にしていたことなのだから、それ相応の理由と重みがあるのだろう。
「もちろん、わかってるよ」
そう答えると、桜は少し笑って話し始めた。

 桜が語った内容は要約すれば、彼女の修める清月流剣術は対魔剣術であるらしい。つまり霊力は実在し、霊的なものや魔もまた存在する。そして桜のような存在の人々をまとめる、“組合”と呼ばれる組織によって、今日のような事件の対処などを行われ、裏で平和が守られているとのことだった。
「実際見ちゃったんだから信じるしかないか」
 まぁこういう反応が大半なんだろう、桜も苦笑いを浮かべている。しかし、それなら無理に秘密にする必要もないような気がする。深耶はそれを訊くことにした。
「ねえ、正直言いふらしたところで、笑い飛ばされるのがオチだと思うんだけど」
「うん、まぁそうなんだけどね。もし、この話が真実だと知れ渡ってしまったら、持つものと持たざるものの対立が起こるのは間違いないから」
 そこまで気が回らなかったが、確かにそうだろう。だから無闇に言いふらしたりはしないように決められてるんだよと桜は続けた。
 それで、秘密が守られている理由は分かったが、そうなると人間次に気になるのは自分の力というものだ。
「で、私ってどうなのかな?」
 その質問は予想済みだったんだろう、ため息をつきながら桜は答えた。
「並だね、霊力が高ければ春香の視線の先にいたのが見えたはずでしょ?」
 それもそうだ、残念ではあるがそんなもんだろう。
「……まぁ、素質はあるんだけどね」
 桜は聞こえないように小声でつぶやく。命の危険もあることだから、親友を巻き込みたくはなかった。
「ん? 何か言った?」
「ううん、何も言ってないよ」
 深耶は訝しげな表情をしていたが、すぐに興味の対象が移ったようだ。
「ところで、春香ってどうなの? 最初に悲鳴をあげたぐらいだから見えてるんだよね、彼女も“組合”の一員なの?」
「違うよ、彼女から感じる霊力とか今日の様子とか見ると、おそらくはっきり見えていると思う。でも、闘えるほどの霊力はないから」
「そっか見えるぐらいじゃダメなら、桜はもっとすごいってことか」
 自分には、それを感じる能力も欠如しているらしいから分からないが、親友が大変な世界に身を置いているらしいことはわかった。
「大変じゃない?」
 そう尋ねた、でも桜は笑って
「大変だよ、でもそれで守れたものがたくさんあるから。これからも続けていけるよ」
 そう答えた。


 つづく。
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