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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Aパート [星瞬きし宇宙の海で]

第一話 ……反撃します!!

「はぁ……」
 トラムに揺られながら、俺はもう何度目かもわからない溜息をついた。
「誠也」
「ん?」
「もういい加減うっとおしいんだけど?」
 流石に、他の乗客もいる車内なので声のトーンは控えめだが、隣に座る幼馴染でこれからの同僚、白樺桜のイライラはだいぶ募っているようだった。
「最後くらいいいだろ? 着いたらそれも無理になるんだから」
「何がそんなに嫌なのよ?」
「だって7艦隊だぞ? 若いんだし、バリバリやりたい」
 大和星系国家宇宙軍・第7艦隊。それが学校を卒業した俺たちが配属になる場所。1~7の各艦隊は、第1艦隊が星系外縁部防衛、第2艦隊が首都・3番惑星防衛といったように、基本的に星系各所の防衛を分担しているが、第7艦隊は違い、最悪、残り6つ(厳密には、第5、第6艦隊はそれぞれの任務である在第5、第6惑星民間人の護衛退避完了後に第4艦隊指揮下に編入されることになっているから4つだが)の艦隊全てが敗走するようなことになった場合に、反攻作戦を実施するための戦力を保管しておくのが任務だ。
「バリバリとって言うなら、7艦隊は十分忙しいでしょ」
 桜の言うとおり、第7艦隊は忙しさでいうならトップクラス。なぜなら、大量の戦力を保管すると言う任務の都合上、その戦力をもっての反乱を防ぐため、そんなことが出来ないよう、本当にギリッギリの人員で回しているからだ。とはいえ、忙しければいいと言う訳でもない。
「まぁそうだけど、やっぱり軍人になったからには、負ける前に前線でとは思う訳で」
 それについては、桜も思うところがないわけではないようで。
「それは……、分からないわけじゃないけど……。それならどこがよかったのよ?」
「ん、1、2、3艦隊ならどこでもいいぞ」
 言うからには、行きたいところははっきりしている。
「7以外なら、どこでもいいんじゃないのね……」
 それを言われると、少し痛いところではあるんだが。
「……フィールがいなけりゃ、4、5、6でもいいんだけどなあ」
 フルネームをフィールライン・フォーレル、4艦隊司令、グレミオ・フォーレルの孫にあたり、俺たちの同期で主席と、それだけでもちょっと近寄りがたいやつだった。
「4艦隊だっけ……、呼び戻されたんだろうけど、素直に従ったんだね」
「みたいだな」
 在学中、俺は目の仇にされていたから、爺さんには従わずに追いかけてくるかもと戦々恐々だったりしたのだが、まぁとりあえずそれは避けられたようだ。
「まぁダブルじゃなくなっただけでも、よかったでしょ。これっきりにしてよね、そろそろ着くし」
「……努力する」
 俺の返事に、今度は桜の方が溜息をつくのを聞きつつ、俺は車窓に見えてきた目的地を一瞥した。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Bパート [星瞬きし宇宙の海で]

西暦2300年代初頭、ワームホールを利用した空間連結による超光速転移航法の理論が完成し、さらに50年の時を経て転移実験にも成功した。しかし、消費するエネルギーが膨大過ぎてジェネレーターとセットで宇宙船に組み込もうとすると、際限ない巨大化を招いてしまうことが判明し、外宇宙への夢は頓挫することとなった。しかし、逆を言えば宇宙船外に転移航法装置を設置すれば、1回限りではあるものの超長距離の移動が可能ということになる。これに目を付けたのが、国連であった。

国連は、20世紀の大戦以降、かろうじて世界規模の全面戦争は回避してきたものの、世界に散在する諸問題の解決は一向になされず、限界はだれの目にも明らかであった。そんな折のこの超光速転移航法の完成は、渡りに船。国連は、強引に恒星間移民法を採択し、その責務を盛大にブン投げたのである。

恒星間移民法の大筋は、国家・民族・企業その中心は何でもいいが、とにかく個別に移民船団を構成し、国連が製造する転移航法装置を利用して、移民可能な恒星系へ移民を行うというものである。各船団の転移先については国連が管理し、同じ恒星系を目標にしての転移は禁止される。要するに、小規模な集団には有り余るものを用意し、さらに他者とは光年単位で引き離してしまえば、大概の問題は解決ないし先送りにできる、ということだ。しかし、こんなものは誰がどう見てもハイリスクローリターンの博奕でしかない。何も変わらないだろうと誰もがそう考えた。

しかし、意外にも先進国の多くが手を挙げた。地球というリソースはその範囲を月や火星あたりまで広げたとしても、そう未来があるとは言えなかったし、長くお金を割いてきた外宇宙観測によって、テラフォーミングを経ての移住に関しては、それなりにリスクなく可能と判断できる恒星系を発見できていたからである。日本もその一つであった。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Cパート [星瞬きし宇宙の海で]

日本船団は、銀河中心方向約200光年ほどの位置にある星系を目標に転移。さらに諸々を含めて出港から50年ほどで、テラフォーミングの完了した第3、第4惑星への入植が開始され、この新天地は旧国名から大和星系と呼称されることとなった。

テラフォーミングと並行して進められた星系内の調査中、太陽系と同じく第4惑星と第5惑星の間に存在するアステロイドベルトにおいて、漂流する人工物が発見された。調査解析の結果、地球外知的生命体による探査船の類で、船内に残された記録によれば、この星系へ調査に派遣されたものの転移航法の出現地点誤差により、転移直後に小惑星と衝突して遭難、その後救助されたようである。

その後、LS1(ロストシップワン)と名付けられたそれは回収されて徹底的な解析が行われ、真空からエネルギーを取り出す相転移炉、重力制御システム、さらに目標座標上に存在する粒子(後に、particle of advocated by extraterrestrial civilization :地球外文明によって提唱された粒子を縮めてアデック粒子と呼称)を利用することで大幅に省エネ化、相転移炉と合わせて転移航法システムのダウンサイジングなど、大きな技術革新をもたらした。そうして、新たな技術を取り込みこの新天地が順調に発展を遂げていた頃、星系外縁部に設置されたレーダーが突如として出現した巨大人工物を捉えた。

そのような事態は想定されてはいた。人が減っていけば、国連による転移座標の管理が杜撰になるのは目に見えていたし、なにより先行するものにとってはまだ資源なども残っているから問題ないが、遅れるものたちはどんどん不利になっていく。そう言った事情が重なっていけば、後発組が先行組から奪い取りたいと考えても不思議はないからである。しかし、予見出来ていたからと言って全力で軍備を行える余裕があったわけではなく、対抗するには戦力不足が否めない状況であったため、暫定作戦司令部はLS1系の技術を導入した、実験中の艦艇や人型機動兵器を決戦に投入することを決定した。

大和星系外縁部で行われた艦隊決戦は、一方的な展開となった。レーザーなどの光学兵器、プラズマキャノンなどのエネルギー兵器の一切を完全に無力化し、大砲・ミサイル等の物理攻撃に対しても直撃を防止する空間歪曲場フィールドによって地球艦隊の攻撃はほぼ通用せず、重力波砲という発射の兆候察知も地球側には不可能な兵器によって艦隊は蹂躙され、機動部隊も空戦から脱却できていない地球側の航宙戦闘機は、機動の自由度の違いによって人型機動兵器には対抗できなかった。こうして、後に革新戦役と呼ばれることになる戦いは、大和星系側の勝利で幕を閉じ、再度の侵攻に備えて第1から第7までの宇宙軍各艦隊が整備されていくことになった。

しかし勝利とはいえ、こういう事態が発生したと言う事実は、後に大きな確執を生むことになる。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Dパート [星瞬きし宇宙の海で]

「副司令、まもなく海面ですがどうします?」
 首都3番惑星に降下してきた航宙戦艦のブリッジ、その艦載機管制用オペレーターシートに座る雪原琴希は、中央の艦長席に座る自分よりもだいぶ年下の少女に声をかけた。
「琴希、今は艦長だ・い・り」
「失礼しました。どうしますか、霧原美咲艦長代理」
 内心ではちょっとだけめんどくさいと思いながら、琴希は訂正して聞き返した。
「アリス、各部のチェックはどう?」
 艦長席の前、艦全体の統括制御を行うメインオペレーターシートにはこれまた非常に幼い少女が座っていた。
「通常のチェックは終了。現在は、各部のカメラで再確認中」
 どうやら、追加でより念入りなチェックまでやってくれているらしい。
「了解。じゃあ、それが終わるまでは高度150を維持」
「了解」
 アリスと呼ばれた少女は、必要な言葉だけを返すと作業を続ける。そちらは任せておけば大丈夫だろう。
「琴希、大丈夫? 疲れてない?」
「あ、そうですね……。流石にちょっと」
 琴希の表情を見る限り、それは少し我慢した言い方かもしれない。
「そっか……。何なら休んでても」
「いえ、大丈夫です。今回だけですし、通常航行なら問題ないですから」
「ならいいけど……」
 まぁもうすぐ着く目的地では、新たな乗員を拾うことになっている。そうなれば、今のこの艦全体で3人しかいないという極端な状態は解消されるから、どうにかなるだろう。とはいえ、せめていま少しでも何かと考えていると、アリスから報告が入る。
「チェック完了」
「じゃあ着水して、水上航行で」
「了解」
 アリスが事務的にそう答えると同時に、艦はすっと高度を下げた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Eパート [星瞬きし宇宙の海で]

「すみませんが、こちらでしばらく待機をお願いします!!」
 IDのチェックなどを受けトラムを降り、案内に従って施設内を5分ほど歩くと、見渡す先が水平線の桟橋へ出た。
「こんなところで待たされるってことは、迎えはまだってことか」
「そうだね」
 せめて近くにはいないかと、海の方を探してみるが、それらしい影は見えない。尤も、今の時代、艦が海面にいるものとは限らないわけだが。
「時間分かってるんだから待たせるなよなー」
 桜は、また愚痴かという表情で、俺から視線を逸らした。
「意外と同期多いね」
 確かに、知らない顔は思ったほど多くない。もちろん、いないと言う訳ではないが。
「だよなあ……。まぁ、あの辺は同期って言っていいのかわかんねえけど」
「誰のこと……って、ああ、あの子ね」
 俺の視線の先にいるのは、課程は別で戦術・戦略科を今年卒業した大塚初音。入隊で見れば同期と言うことになるが、士官学校に入学したのは俺たちよりも一年遅い一昨年度という、所謂飛び級生だ。しかも、そんな制度はないというのに、それで猶そうするしかないと言わしめたという話だから怖ろしい。
「でも、なんでここなんだろ?」
 確かにそれは思う。まぁ上には上の考えがあるんだろうが、それこそ最前線の第1艦隊や花形である第2艦隊でもいいはずだ。
「まぁなんかあるんだろうぜ?」
 急に会話に入ってきたのは、こちらは本当に同期の雨宮霜太……とその双子の妹時雨だった。
「お前らもか」
 そう言えば、IDチェックを受けたときにちらっと見えた名簿に名前があった気がしないでもない。
「おう、時雨共々これからもよろしくな」
「よろしく」
「こちらこそ」
 今まではライバル的な部分もあったが、これからは背中を預ける……と言うのは立場上来ないことを祈らないといけないところが何とも言えない。改めて挨拶をしたことで、そんなところに思い至ってしまった。またそこでループに陥る前に、話を進めることにする。
「他はいるのか?」
「いや、見てないな。まぁ転属組は分かんねえけど、機動兵器科で直は俺たちだけっぽい」
「そうか。ま、7艦隊だしな」
 ギリギリの人員がデフォルトなのだから、こんなものかもしれない。そんなことを考えながら、もう一度海の方を見ると、今度は水平線に船影を見て取ることが出来た。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Fパート [星瞬きし宇宙の海で]

「はぁ……、俺らみたいな新人の迎えに冷泉型とはなあ……」
 第7艦隊は、まぁ反攻作戦を実際に行うことになった場合に、型落ちばかりではまずいということで、保管装備については最新型もそれなりにあるが、逆に自分たちが使うもの関しては、他の艦隊が更新して余った旧型が多い。宇宙軍の最新鋭航宙戦艦である冷泉型は、確かまだ1隻しか回されていなかったはず。そんな虎の子を、こんな任務に使うというのは、まぁ慣熟訓練は必要だろうとはいえ、かなり豪勢だと思う。
「だねえ。……艦名は、“YS-701 YUUGIRI”夕霧かあ」
「え?」
 船体に書かれたその名を、桜は特に気にする様子もなく読み上げたが、俺は引っかからずにはいられなかった。
「どうかした?」
「いや、冷泉型の命名規則から外れてるから」
 冷泉型の命名規則は源氏物語の帖名となっているが、人名(夕霧など一般的に人名扱いされるものを含む)は前型の朱雀型で使われたために除外されている。……尤も、夕霧は光源氏の息子と言う都合上、他のくくりで使うかもということで使われないままに、冷泉型への更新が始まってしまったりはしているのだが。
「じゃあ、違うってこと?」
「そうなんだろうけど、だからって違うところも……」
 パッと見見当たらない。
「下が違うのかな?」
「そうかも」
 当然、喫水線の下は見えないのでかもしれないが、中身かも知れない。だが、どちらにしても、未知の艦が目の前にいる。それは、もしかしたら、俺の思っていた退屈な毎日とは違うものが第7艦隊にはあるのかもしれない。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Gパート [星瞬きし宇宙の海で]

「艦長代理、どうかしました? さっきからなにか落ち着かない感じですけど」
 琴希によると、入港する頃から、急に虚空を睨みつけたりキョロキョロしてみたりとらしくない行動をしていたらしい。
「ごめん、なんかちょっと嫌な予感がね……」
「え? 大丈夫なんですか、それ?」 
「分かんない」
 嫌な予感はするものの、どうにもその正体までは分からない。
「アリス、状況は?」
「新人の乗艦は完了。現在はトゥエルの積み込み作業中」
「切り上げられる?」
 宇宙軍の汎用人型機動兵器トゥエル、確かに重要な積荷ではあるが、最悪、乗員が揃ったのであれば、残りのスケジュールに支障が出ても、今、動ける状態を作った方がいいレベルの予感ではあったのだが。
「するのは構わない、でも、これタイプS」
 タイプSは、主機を交換し特殊な制御システムを組み込んだ第7艦隊仕様。保管用の機体なら問答無用で切り上げさせるが、何が起こるか分からないこの状況でそれをしてしまうと、それはそれで裏目に出かねない。
「そうか……、そうだった。急いでもらって」
「了解」
 待たなければならないなら、他のことで時間を短縮するしかない。美咲は、艦長席から降り
「琴希、先にやってしまおう」
「わかりました」
 琴希はもともと用意はしていたようで、すぐに立ち上がると、二人でブリッジを後にした。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Hパート [星瞬きし宇宙の海で]

『乗艦各員へ、ブリーフィングは1時間後の予定でしたが、変更し直ちに行います。総員第一ブリーフィングルームへ集合のこと』

 迷ったわけではないが、やっとこさあてがわれた部屋にについて、荷物を置いたところ。少しはゆっくりと行きたかったが、そうもいかない。あわてて出たところで隣の桜も同じように部屋から出てきた。
「なんかあったのか?」
「そう言われても……」
 まぁそりゃそうだ。分かるわけがない。
「ブリーフィングルームは確か、道中にあったような……。急ごう」
「うん」

「霧原、白樺、お前たちもこっちだ」
「おう」
 先に来ていた霜太のところへ行くと、IDと同じ番号の席があり、俺は席に着き、桜もその後ろに座る。どうやら、この列が機動兵器隊ということのようだ。そしてつづく雨宮兄妹のさらに後ろに、知らない顔が二人いた。挨拶しようかと思ったのだが、どうやら揃ったらしい。
「顔合わせがあるのは分かるけど、始めますよ」
 いつの間にか、正面モニターの前に、二人の……俺とそう年が変わらなそうに見える……。いやむしろ、よく知る人物がそこにいた。
「美咲!!? お前なんで!!?」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Iパート [星瞬きし宇宙の海で]

 突然叫んで立ちあがった俺と壇上の美咲とを、この場にいるすべての人間が交互に見比べている。なんらおかしくない当然の反応だが、流石にいたたまれなくなって俺はすごすごと着席した。それを見た美咲は。
「えー、ちょっとしたアクシデントはありましたが、みなさんようこそ第7艦隊へ。私は、第7艦隊副司令兼本艦夕霧副長の霧原美咲です。隠しても仕方ないので言ってしまいますが、機動兵器隊の霧原誠也は兄です。どうぞよろしく」
 なんでここにという俺の問いに対する答えも含むそれは、予測の範疇を大きく超えていて、当然のごとく理解が追い付かない。そんな俺を美咲は一瞥すると、さらに続けた。
「ここに来るまで、人に会わなかったはずなので察しはついているかとは思いますが、この艦には私と彼女、雪原琴希ともう一人しか乗っていません。ぶっつけ本番となりますがみなさんに運用してもらいます」
 あちこちから、驚きの声が上がる。まぁ当たり前の話だ。尤も、向こうもそれは当然予測済みなのだろう、意に介していない様子で今度は美咲が紹介した彼女が口を開く。
「言いたいことはあると思いますが、本艦は第7艦隊が独自に建造した新型艦であり、そのテストはこの艦について知らない人間にやってもらう必要があるための今回の措置です」
 そう言われれば分らないではないが……。
「本来なら、大気圏内での運用テストを数日行った後、第7艦隊司令部へテストしながら帰還する予定でしたが、出港後ただちに大気圏を離脱し帰還せよとの命令が下りました。不測の事態が発生する可能性があるため、この後は総員第一種戦闘配置で待機してください、以上解散!!」
「配置については、各自の端末にデータを転送してあります。確認して、ただちに配置についてください」
 各部署、端末を突き合わせて各自確認を済ませると、ぞろぞろとブリーフィングルームを後にしていく。俺もそうしなければならないが、その前にどうしても、美咲に聞かなければならないことがあった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Jパート [星瞬きし宇宙の海で]

「おい、美咲!!」
 琴希と連れ立って出て行こうとする美咲に呼び掛けると、美咲は振り返った。
「なんでここにいるんだよ」
「霧原少尉、早く配置についてください」
「家族のことなんだぞ、なにも聞かないうちに、そんなことできるか!!」
 そうまくしたてる俺に、美咲は大きくため息をつく。だが。
「なんでいるのかって言われたら、時桐和葉第7艦隊司令にね、頼まれたんだ。力を貸してくれってね」
「な、なんでそんなことお前に……?」
「それはまだ言えない。帰り着いたら教えてくれるよ、和葉がね」
 それだけ言うと、美咲は今度こそ立ち止まらずに出て行く。それをただ見つめる俺の視線を、桜が遮った。
「誠也、私も気になるけど、今は行かないと。大丈夫だよ、今だってちゃんと答えてくれたんだから、言った通りの時になったら全部教えてくれるよ」
「……分かってる」

「副司令、あれでよかったんですか?」
「ああするしかないよ、言っちゃったらテストにならないんだし」
「まぁそれはそうですけど……」
 何かあるかもしれないと、すぐに宇宙へ上がろうとしている今、クルーの、それも機動兵器隊の人間が疑問を感じていることが、琴希は流石に心配なようだ。
「大丈夫、桜お姉ちゃんがちゃんとフォローしてくれるはずだから」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Kパート [星瞬きし宇宙の海で]

 俺と桜が遅れて格納庫へ飛び込むと、整備班員らしき女がいらいらした様子で待っていた。
「遅い!!」
「すいません!! 機体は!!?」
「霧原はそっちの1番機、白樺はここじゃなくて奥の2番格納庫の2番機」
「「了解!!」」
 桜と別れて自分の機体へ走るが、近寄って改めて見上げてみると、それは宇宙軍の正式採用機トゥエルではなかった。近くの整備員に聞きたかったが、ただでさえ遅れているのだから、乗った後に教えてくれることを祈って、搭乗を急ぐことにした。

 コクピット内に入ってシートに着きハーネスを締めつつ内部を見渡すと、シートの形状など細部に違いはあるようだが、操縦する上で困るようなレイアウトの違いといったものはなさそうに見えた。
「1番機搭乗完了」
「了解しました、総員配置完了です」
 ブリッジとの回線を開いて告げると、応答した艦載機管制オペレーターらしい少女は、振り返りそう報告した。すると、今度は通信用の別のウィンドウが開いて、件の飛び級生、大塚初音が大写しになった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Lパート [星瞬きし宇宙の海で]

「艦長を拝命しました、大塚初音です。正直に言って、私のような若輩がこの大任に着くことに皆さん不安があるとは思いますが、全員でまずはたどり着く、そのために力を貸してください。よろしくお願いします」
 噂に聞く大塚初音と言う人は、もっとこう自信家タイプだと聞いていたが、噂が当てにならないのか、それとも考えて抑えているのかは分からないが、ともかく意外な挨拶だった。まぁ、ここには他からの転属で、初音の噂なんて聞いたこともない人も居るだろうし、よく耳にしていた俺たちだって実際のところその指揮を見たことがあるわけじゃないから、全員に不安はあるはずだ。もし、ないとするなら美咲と雪原さんとそれともう一人いるらしい最初からの乗員、つまりは初音を選んだ側の人間だけ。だから、こうやって自分にまだないものを認めるのは信頼できると思う。
 そんなことを考えていると、初音を映していたウィンドウが消え、再びオペレーターの彼女のウィンドウが大きくなる。
「機動兵器隊の皆さん、艦載機管制を担当する谷澤春香です。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしく、……ってのはいいんだけど、この機体って」
「あ、そうですよね。気になりますよね」
 そういうと、またしても後ろを向いて今度は雪原さんを呼んだ。
「このほどロールアウトした新型機、AA-01バニティ・セイヴァーです。2番機以外は、基本的にトゥエルとほぼ同じ機動特性を維持しつつ、それぞれの実機・シミュレーターでの運用データを反映してありますから、そう違和感なく使えるはずです」
 まぁそう言われても、今は動かせる状態じゃないので俺や霜太、時雨の機体が変わらないと言われても何とも言えないのだが。
「え? 私は変わるんですか!?」
 変わると言われてしまった桜はどうすればいいのか。
「ええまぁ。……でも」
「でも?」
「本来やりたかったことが、出来るようになってるはずだから安心して。と言われて安心できるものじゃないですね、今シミュレーターモードを」
 そう言いながら雪原さんがコンソールを操作すると、俺の方もシミュレーターモードが起動した。すぐにいじくってみると、確かにそう変わらないようで、実機もこの感じなら問題なくやれそうではある。だが、このときはまだ、桜が言われた“本来やりたかったこと”が、俺にとってもそうだということをまだ知らなかった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Mパート [星瞬きし宇宙の海で]

「フォーレル司令、任務部隊より、作戦開始予定宙域に到達。配置完了しました」
「よし。下のアランに始めさせろ」
「了解」
 第4艦隊司令、グレミオ・フォーレルは悠然と立ち上がり。
「この作戦に、我々の命運がかかっている。各自、奮闘努力せよ!!」
 司令部に集う全てに檄を飛ばす。そして正面の大型モニターへ視線を移すと、映し出される画像が切り替わり、下こと4番惑星の首長、息子のアラン・フォーレルによる演説が始まった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Nパート [星瞬きし宇宙の海で]

「大気圏離脱まで、あと300秒」
 艦は特に問題もなく順調に高度を上げていく。ここまで大幅に予定を変えておいてなんだが、気のせいだったならばその方がいいことは間違いない。しかし、いやな予感は相変わらず消えない。むしろ、強くなっているように思えた。
「艦長、全チャンネルに強制割り込みが」
 遂に来た。そう感じて、美咲は初音を待たずに叫んだ。
「モニターに!!」
「は、はい。了解」

『我々4番惑星政府は、その独立を宣言し、大和星系政府に対して宣戦を布告するものである』

「そんな……なんで……」
 入隊したばかりの春香がそう思うのも無理はないが。
「なるほどそういうことか、だいぶ早い……」
 遅かれ早かれこうなるであろうことは、軍人ならばほとんどの人間は分かっていたことだろう。
「どういうことですか?」
「この4番惑星首長、アラン・フォーレルの向こうにいる、第4艦隊司令グレミオ・フォーレルの行動には裏がありましたからね。そうですよね? 副長」
「うん、そうだね」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Oパート [星瞬きし宇宙の海で]

「若紫型の4番艦の件は知ってる?」 
「えっと、確か3艦隊に配備予定だったのが変更になって、4艦隊に行くことなったんでしたっけ?」
 宇宙軍の最新鋭人型機動兵器空母、若紫型の4番艦・明石。流石に、軍人になろうかという人間だ、まだなったばかりの春香でもその行き先くらいは知っている。
「そう。これは4番惑星の防衛体制について、現地の世論を鑑みての変更なんだけど……」
 4番惑星というのは、星系に侵攻された場合、民間人は早々に避難し捨てることになっている5番、6番惑星と違い、安易にそんなことはできない規模の人口を抱える惑星であり、その中で最も外側にある惑星である。当然、そのための戦力は配備されているのだが。
「何か問題なんですか?」
「4艦隊は、5番惑星と6番惑星の避難誘導を終えた5艦隊、6艦隊が合流するし、2艦隊にもない低軌道要塞をもっている。ついでに言うなら、1艦隊と3艦隊と戦った上でやりあうんだから、十分な戦力はあるんだけど、まぁ細かいところまでは知らないと、同じ任務を担う2艦隊と比べて艦は少ないわけだから、足りないと思われちゃうのはどうしてもね」
「なるほど」
 まぁ革新戦役があったことで、4番惑星住民に生まれた潜在的恐怖心がそう見せてる部分もあるしと美咲は続ける。
「それを利用して、煽ったのがグレミオであり、この蜂起のための戦力集めだったってことですか」
「たぶんね」
 そこで会話が途切れると、ブリッジには重苦しい空気が流れる。可能性として頭にいれておかなければならなかったことではあるが、実際そうなってしまうともはやどうにもならないわけで。
「それで、私たちはどうするんです?」
「どうするって言っても、急いで帰って守りを固めるしかないよ」
 人員の少ない7艦隊だ、攻撃を仕掛けて戦力をさらに増強しようと言うのは容易に想像がつく。それに対抗するには、この夕霧も貴重な戦力であるから。しっかりしなきゃと、春香はそう思い直してコンソールに向かおうとした時だった。
「重力子干渉波ソナーに感。方位1-7-3」
 そうアリスの声が聞こえた瞬間、前方に広がりつつある暗い宇宙に、複数の光条が疾った。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Pパート [星瞬きし宇宙の海で]

「どこが撃たれたんですか!!?」
「第2艦隊専用港・月読、開放係留部付近と思われます。現在被害確認中」
 2艦隊の大半が駐留する専用港・月読。無防備な状態でそこが撃たれたとなれば、相当の被害が出ているはずである。
「まさか、先にここを狙ってくるなんて……」
 距離があり、出張って来るの時間がかかる1艦隊、パトロール部隊に毛が生えた程度の5、6艦隊をカウントしないにしても、2艦隊と3艦隊を相手にするには、それぞれとの決戦での被害も考えると4艦隊の戦力は心もとない。なにかしらでそれを補う必要は当然ある。だが先に、2艦隊や3艦隊の相手をするということは。
「ウチはいつでも撃てるってことかな」
 仕方ないが舐められたものだと美咲は思う。しかし、そんなことより今はこの場をどうするか。いっそ司令部の和葉に指示を仰ぐべきかと思った時。
「……前部主砲塔群展開、2艦隊を援護、こちらに注意を引きつけます」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Qパート [星瞬きし宇宙の海で]

「それって……」
「……反撃しましょう。反撃って言うのもおかしいですけど、今は出来ることを。私たちは、守りたいものがあるからこの道を選んだはずなんですから」
 それはその通りではある。だが、こういう立場になった以上は、独断でその力を行使することもまた慎重でなければならない。ゆえに、どうしても春香の視線は、複雑な立場の人物に向いてしまう。この艦にいる以上は副長だとはいえ、第7艦隊の副司令でもある美咲に。
「こっちを見る気持ちは分からなくもないけど、私は艦長が決めたなら従うよ」
「ありがとうございます」
「ただ、……覚悟はあるんだね」
 初音は力強く頷いて、そして。
「春香、艦内各部通達を。アリス?」
「主砲塔群展開及び索敵完了、第一射チャージ完了まで40秒」
 アリスはどうせこうなると思っていたのか分からないが、しれっと準備を進めていたらしい。
「一斉射後、最大戦速で高度を上げ、重力圏離脱後機動兵器隊を展開します!!」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Rパート [星瞬きし宇宙の海で]

「4艦隊の動きは」
「改朱雀型数隻が隊列を離れて月読へのコースを取っていますが、それ以外は射撃位置に待機したままです」
 冷泉型の前型である朱雀型戦艦、それを格納庫の大型化などで機動兵器の運用能力を強化した改朱雀が向かっていると言うことは、月読を制圧して第一撃で被害を受けなかった戦力を接収するつもりであるのは間違いないはずだが、それにしても少々動きが鈍いように初音には思えた。しかし、何か意図があるとしても、まず先行する改朱雀型部隊を止めなければならない。行動に選択肢はなかった。
「先行部隊を止めます、主砲自動照準、一斉射撃用意」
「了解、自動照準」
 アリスの復唱と同時に、眼下の主砲塔群がゆっくりと旋回し仰角を合わせる。
「射撃準備完了」
「一斉射撃!! てー!!」

「月読の動きはどうなっている」
 4艦隊の月読攻撃任務部隊司令・竹下洋は、小さくなっていく先行部隊を見つめながら、さっきから神経質にそう繰り返し聞いていた。
「今のところは動きはありません」
 もちろん、被害を受けなかった艦が出てきたとしてもこちらは第二撃の準備を整えている、撃てばいいだけの話ではあるのだが、だからと言って安心はできないし、またしてしまうのもよくはない。なんにせよ、打開できないまま時間は過ぎていく。
「到達まで、あと600秒」
 それを聞いて、終わりが少し見えてきた、そう思った時だった。
「高重力子反応!! 重力波砲、来ます!!」
 一瞬身構えるが、夕霧から放たれた光条は遠く艦前方を通り過ぎて、先行部隊の先頭艦に襲い掛かった。幸い、歪曲場フィールドは張っていたため撃沈は免れたが、これで予定通りの作戦遂行は難しくなった。
「どこからだ!?」
「艦下方、大気圏表層からです!!」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Sパート [星瞬きし宇宙の海で]

「初弾命中、戦果確認中も敵艦健在」
 重力子の放出を伴う歪曲場フィールドは、隠密性を重視するのであれば、切っておくのが定石ではある。だが、既に位置が明らかなこの状況に置いては、当然展開して行動しているはずで、そうであれば重力波砲で撃沈まで持っていくのはなかなか難しい。正確に言えば、朱雀型にしろ冷泉型にしろ、主砲はあくまでフィールドを持たない相手、つまり革新戦役と同じような状況を想定しての装備である。それを想定したより高出力で大型の重力波砲も艦首に装備されてはいる。普通は。
「高度を上げて機動兵器隊を出します。両舷全速。主砲は照準そのまま、各砲10秒間隔で連続射撃、牽制続けてください」
「了解」
 慣性制御は行われているが、それでも軽いGを感じるほどに、夕霧は一気に加速を始めた。

「どこの艦だ!!」
「数時間前に降下した7艦隊のテスト艦のようです。YS-701夕霧」
 当然、事前に出来る限りの情報を収集し、なるべく邪魔が入らないタイミングを狙って行動を起こしているわけで、それによれば夕霧も降下後は当面重力下でのテストを行うことになっていたはずだ。
「よほど勘のいい奴でもいると言うのか?」
 しかし、そんなことを言っていても始まらない。任務を遂行のためには、早々に排除すべき相手だ。
「先行部隊を掩護する、全艦主砲照準」
 艦首大型重力波砲は、月読を狙っているため使えないが、相手は一隻。主砲でも、一点集中でフィールドを抜くことはできるはずだ。しかし。
「敵艦、増速!!」
 撃つよりも先に、夕霧は動き出した。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Tパート [星瞬きし宇宙の海で]

「霧原、動かすよ」
 外から声を掛けられて、俺は我に返った。射出開始予定高度まではまだだが、その間に武装を受け取ってカタパルトまでは機体を移動させなければならない。
「了解、ええっと……」
 そう言えば、名前を聞いていなかったことを思い出して、言葉に詰まる。まぁ察してくれたようなのでよかったが。
「北崎深耶。一応、機動兵器班の班長を仰せつかってます。ま、好きに呼んで」
「了解」
 あまり、長々話している場合でもないとは向こうも思っていたのだろう、俺が答えるとすぐに機体がケージごと移動を始め、カタパルトへ続く狭い通路へ進む。一旦止まって、武装が接続されると、もう一度前進してエアロックをぬけてカタパルトへと至る。
「春香、状況は」
「敵本隊が、主砲でこちらへの攻撃態勢に入りつつあります」
 まぁ隊列を組んでいるから、全部が全部攻撃してこれるわけではないだろうが、多勢に無勢、一斉砲撃をくらえばひとたまりもない。引きつけるとは言ったものの状況は良くないかと考えていると、艦長から割り込みがかかった。
「速力の高い白樺機で敵艦隊中枢を撹乱します。一緒に行くのは厳しいですけど、霧原さんも全速で突入フォローに回ってください」
 重力波砲は同じく重力子を用いる歪曲場フィールドを展開した状態では使えない、正確には干渉し合って自らのフィールドジェネレーターにダメージを与えてしまうので、使うと攻撃のその先にまで無防備になってしまう。だから、至近距離まで寄れれば実質的に相手の攻撃を止めることができる、そしてそれをさせないためには機動兵器によるエアカバーが必要なのだ。
「了解」
 艦長が通信を切ると、春香がカウントダウンを始める。刻一刻と迫る、いきなりの初陣はやはり緊張する。まぁフィールドもあるから、敵艦の対空砲火程度なら流石にどうとでもなるが、相手の機動兵器が出てくれば、新兵のこちらとは練度も違うし数も違う。だが、同時に少し自身も感じる。先ほど受け取った武装の中に、琴希が言っていた“本来やりたかったこと”それを俺にもさせてくれる、そう示すものがあったから。
「射出30秒前、カタパルト、開放します」
 ゆっくりと正面の扉が開き、漆黒の宇宙が見え始めた。
「3、2、1、発進、どうぞ」
「霧原誠也、一番機、出ます!!」


 第一話・了
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星海座談会 Re:1 [星瞬きし宇宙の海で]

一同 お疲れ様でした!!!!
誠也 ……といっても、まだ1話じゃねーか。
桜  そうなんだけど、最初の一歩だしね。
誠也 まぁ、そうっちゃそうだな。で、それはそれとしてなんでまたRe:nなんだ?
初葉 そうですね。前の時は再開だから、だったんでしょうけど。
桜  あー、それは……。
美咲 それは?
桜  変えようかとも思ったけど、まぁブログタイトルとの絡みと思えば、そのままでも、だって。
誠也 ……しっくりくるのがなかったな?
桜  かもね。

桜  さて、今回はお知らせです。
美咲 どんな?
桜  2話以降、F1終了開始で夏休み最後に座談会までやる年間1話ペースで行くそうです。
初葉 出来るんですか?
誠也 まぁ流石に1話の間は、あんまり短いのもってやってたしなあ……。
美咲 前のみたく、段々短くなるとだよね。
桜  そこら辺は……、知りません!!
誠也 まぁなあ……。

初葉 ただでさえ不利と言える状況で出撃した誠也たちだったが
桜  そこへ想定外の新たな事態が襲い掛かる……
美咲 それはこの戦いが簡単には終わらないことを如実に示していた。
誠也 次回、『ようこそ、第7艦隊司令部へ』、ご期待ください。

誠也 で、この話はどういうとか、そういう前は追記コーナーにあったやつを話さなくていいのか?
桜  それも次回!!
誠也 次回かよ!?
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Aパート [星瞬きし宇宙の海で]

第二話『ようこそ、第7艦隊司令部へ』

「敵艦より、機動兵器の射出を確認。人型2が先行部隊に、人型1、航宙戦闘機型1がこちらへ。両機種とも機体該当データなし」
「戦闘機?」
 革新戦役において、地球艦隊の航宙戦闘機を圧倒したことによって、戦闘機はあっという間に淘汰され宇宙軍においては最早残っていない。一応、3番惑星と4番惑星の地上防衛部隊には、上昇力で分があるために高高度迎撃機として少数残ってはいるが、それはあくまで大気が存在するからだ。
「迎撃する、こちらも出せ」
「了解」
 それにもかかわらず使用してくるどころか、新型まで作った意図は図りかねるが、なんにせよ、こちらがとる行動が変わるわけではない。それに。
「こちらの新型も、試すにはちょうどいいか」
 そう考えることにした。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Bパート [星瞬きし宇宙の海で]

「おい桜、俺が前に出るべきだろ、待てよ!!」
 桜の機体は別のカタパルトから射出され、初速がそもそも違うというのもあったが、それを考えてもあっという間に引き離されてしまう。
「今は、一秒でも早くつかないと夕霧が撃たれ続けるでしょ!!」
 それはそうだが、単騎で突っ込むのはコンビの意味がないし、危険極まりない。なんとかしようとするが、既にスロットルは限界まで踏み込んでいてどうにもできない。俺の焦りに追い打ちをかけるように、アラート音と春香の声がした。
「カタパルト開放を確認、注意してください」
 当然の対応ではあるものの、少々遅いような気はする。しかし、その理由がなんであれ、接敵する前には出してきたのだから、こちらも遅かったと言うことになる。ただ、今回は桜がこれで止まってくれれば、良かったかもしれないと思ったのだが。
「私が向こうの陣形を崩すから、トドメはお願い」
「お、おい!!」
 止まる気など、一切なかったらしかった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Cパート [星瞬きし宇宙の海で]

「データにない……、向こうも新型?」
 当然、宇宙軍の正式採用機として全艦隊が配備しているトゥエルだとばかり思っていたが、モニターにはアンノウンの表示が踊っている。そうなると余計に注意をしなければならないが、こちらにまっすぐ向かってくる隊はともかく、コースを変えて艦隊の直掩に入る隊をみると、どうもトゥエルに比べると重めの機動特性のようだ。
「まぁこの重装甲っぽさなら、そりゃそうか」
 トゥエルは優秀な汎用機で、機体各部のハードポイントを用いて各状況対応することができ、各艦隊によって運用の方向性は違う。4艦隊は低軌道要塞を中心とした拠点防衛に主軸を置くため、高出力のフィールドおよび、重通常装甲を施した仕様で運用している機体が多い。どうやらそれを、トゥエルのハードポイントで対応するのではなく、そのための専用機として開発された機体らしい。
「そうなるとちょっとやらしいかな……」
 といっても、だからと言って戦わずに済ますわけにもいかないので、とりあえず、向かってくる隊に向けて機体の両翼に取り付けられたレールガンのトリガーを引いた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Dパート [星瞬きし宇宙の海で]

 もちろん、当たってくれると言うなら、それ以上有難いことはないが向こうも素人ではない。さっと散開して回避してみせる。だから、予定通りにそれでできた道に向けて突っ込む。向こうもそれは予測済みだっただろうが、桜の後方からは誠也が来ていることもあってか、直掩部隊に受け渡すことにしたようで、最低限という感じの反撃が行われるのみ。桜はやすやすとかわして見せると、交錯し背後へと躍り出る。人型の特性を活かして、一部は振り向き攻撃を続けてくるが、それを回避しながらトリガーから指をずらして、別のスイッチを押しこんだ。
 人型へと移行した桜の2番機は、背後を晒した迎撃部隊に対して今度は撃墜を目的として正確にレールガンを撃ちこんでいく。誠也への警戒にあたって、桜へは背後を晒したままだった数機は、反応が遅れて直撃をもらう。空間歪曲場フィールドは実体弾も逸らすことが出来るが、機動兵器は艦艇のそれと違い、機体に近い位置にフィールドが張られる上に出力が低くて曲率が小さいために、機体に当たらずに済むほど大きく逸らすことはむずかしい。ただ、重装甲型なことが幸いして撃墜は免れた機体もあった。しかし、桜はそれを思いっきり無視して機体を戻すと、再び敵艦隊を目指す。そいつは、アマリに無防備な桜を向きを変えながら対艦用の重力波砲を引き出して狙うが、その次の瞬間だった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Eパート [星瞬きし宇宙の海で]

 背後から誠也の1番機が迫っていることに気付いて回避しようとするが、間に合わず真一文字に両断され、敵機は爆発四散した。
「切れ味は問題ないけど、ホントにこれそれだけなのか?」
 琴希に聞いたところによると、1番機に装備された刀には、刀身表面にフィールドを展開する機能が備えられており、それが相手のフィールドを中和することで、フィールドを無視して斬断することが出来るらしい。また、そのフィールドによって相手の装甲を斬る際の刀身の破損を防ぎ、常に切れ味を保てるのだそうだが、どうも怪しい気がしないでもない。しかし、今はそんなことよりも桜が残して行った敵の掃討が先だ。そして、それをしながらもうひとつ気になることについて聞くために、再び回線を開いた。
「手負いだったのはあるにしても、あっけなさすぎないか?」
 いくらなんでも、初陣の自分たちにこうもあっさりやられると言うのは異常に思える。経験はどう考えても向こうが上なのだから。
「おそらくですが、実機での訓練が出来ていないんだと思います。この新型はトゥエルと機動特性がだいぶ違うようですが、この蜂起のための新型ですから、絶対に人目にさらすわけには行かなかったでしょうし」
「なるほど」
 今乗っているこの機体も新型だが、トゥエルとの違いはほぼ感じない。桜のは違うとかどうとか言う問題じゃないレベルだろうが、常々窮屈そうに操っていたからアレで問題ないのだろう。疑問が解決したところで掃討を終えた俺は、桜を追った。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Fパート [星瞬きし宇宙の海で]

「可変機だと!? いや、それはとりあえずいい。コンクエスター隊はどうなっている!!」
 確かに、相手も新型でデータはない。可変機に意表を突かれたと言うこともあるだろう。だが、それはお互いさまで、向こうにもこちらの新型機・コンクエスターのデータはない。その状態で、戦闘が主任務ではない第7艦隊にこうあっさりやられると言うのは、非常事態というほかない。
「根本的な機動性が違うのはあると思われますが……」
 オペレーターは言い澱む。
「なんだ」
「やはり、実機は初めてですから……」
「チッ」
 その辺への懸念はなかったわけではないが、この後に控える戦いの方が当然大きな戦いになる、前哨戦のうちに試したい、そういう事情でこの作戦への新型機投入が決定された経緯がある。多少の損害は覚悟してはいたのだが、まさかこんな事態になるとは思っていなかった。
「先行部隊はどうなっている」
「別働隊の2機と交戦中、やはり足止めされています」
 邪魔が入っていない状態なら、2艦隊の残存部隊が出てきても撃てばよかったが、こうなってしまうと撃てば撃たれる状況である。決断をしなければならない。
「……撤退する。機動兵器隊を回収後、全艦跳躍。合流ポイントは予定通りだ」
「了解」
 先制攻撃には成功したものの、この失敗は後に響くことにはなるだろう。だが、それ以上にこの先の戦いに向かうことが出来なければ、もうそれは完全な終わりを意味するのだから。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Gパート [星瞬きし宇宙の海で]

 桜と交戦に入っていた直掩部隊が急に距離を取るような動きをはじめるの合わせて、艦隊の主砲も、夕霧ではなくこちらへと狙いを変えて撃ってくる。流石に当たりはしないが、明らかに撤退を支援する動きだ。追撃しなければと思うが、畳み掛けるように舷側にならぶVLSの発射口が開き、近接防空用の小型ミサイルが大量に放たれ、こちらをけん制する。
「こういうのなら、お任せできるからいいんだけど……」
 あまり射撃は得意ではないので、プログラムに丸投げしてあっさりと撃ち落としてもらうが、それで出端をくじくのが目的なのだから、そうされたところで向こうは痛くもかゆくもない。桜も似たような状況なようで、その間に多くの敵機が着艦したようだ。そして、粒子の凝集反応を残して、4艦隊は跳躍して消えた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Hパート [星瞬きし宇宙の海で]

「4艦隊、跳躍しました」
 それを聞いて、ブリッジにいる全員がホッと胸をなでおろして、自らのシートに深く身を沈めた。
「引き続き警戒を厳に」
「了解」
 何もなくてもそうすべきことだが、それはそれとして、この引き際には引っかかるものがある。確かに、夕霧の介入によって当初目的を果たせる見込みがなくなったのは事実だろうが、それにしても早く思える。その理由に思いを巡らせるが、それを遮る通信が入った。
「第2艦隊司令部より通信、繋ぎます」
 そこから来るのは当然の流れだが、それを忘れかけていた。あわてて居住まいを正してモニターへ向かうと、第2艦隊司令、片山京一郎自らの登場だった。
「貴艦の援護に感謝する」
「夕霧艦長、大塚初音です。引き続き、周囲の警戒に当たります」
 今のところなにもなく、撤退がブラフだったと言うようなことはなさそうだが、第2艦隊が出られるまではまだ安心はできない。しばらくはこのままと思っていたのだが。
「いや、大塚艦長、貴艦にはただちに第7艦隊司令部へ帰還してもらいたい」
 返ってきた答えは意外なものだった。初音はどういうことか問いただそうとするが、美咲がそれを遮った。
「第7艦隊副司令、霧原美咲です。事情をお聞かせ願えますか」
「本来なら、すべて整ってから4艦隊以外の総力を挙げて対処にあたるべきなのだろうが、先制攻撃を受けたことで、4艦隊が主力を分散していることが分かった。そこでこの機に動ける3艦隊が対処にあたると言ってきた。現状、他で動けるのは7艦隊だけだ。ここは一刻も早く戻って、3艦隊のバックアップに回ってもらいたい」
 なるほど事情は分かったが、遺恨がある3艦隊が対処にあたると言うのは、少々危険に思える。これは従った方がいいと感じた。美咲も頷くのを見て。
「了解しました。これより、帰還します」
「任せたぞ」
 そう言うと、通信は切れた。
「機動兵器隊の回収急がせて、跳躍準備に入ります」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Iパート [星瞬きし宇宙の海で]

 着艦し、機体が元通り固定されると、一気に疲れが押し寄せてきた。初陣だったのだから、それも当然かもしれない。もちろん、軍人になったのだし、革新戦役があった以上、人間同士の戦いへの覚悟がないわけではないが、それでもこのような内乱が起きることへの覚悟まであったかは微妙なところだと思う。
「すぐ終わればいいけど」
 そんな言葉が口を突いて出てしまうが、それを振り払ってベルトを外し、コクピットを出た。

「琴希、どう?」
「流石に慣れるまではかなりの疲労を感じていると思いますけど……」
 琴希の傍に行って、美咲もモニターに表示されている機動兵器隊4人のバイタルをチェックする。確かに、今すぐ倒れたりへたり込んでしまったりはないようではあるが。
「休むように伝えます」
「そうして」
 やはり、いきなりというのは相当にきつい。肉体的にも精神的にも。帰還するまで、これ以上何もないことを美咲は祈らずにはいられなかった。


 つづく。
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