二次創作 アトリエ(1) [二次創作SS]
ユーディーのアトリエのSS
うーん、アンソロとかであまり好きにはなれない、本気でまじめ話を書くになってしまった。
内容知らない人に不親切すぎるのであらすじと人物紹介。
時間を止めるアイテム、竜の砂時計の大量発注を受けたユーディーだが
調合をミスって200年後に飛ばされてしまう。
そこで出会ったたくさんの人たちに助けられながら、
紆余曲折を経て、帰還用の竜の砂時計を完成させる。
ユーディット:主人公、くまさんむにー
ラステル:200年後で親友になった少女、その想いはいつしか
クリスタ:盗賊の頭領の娘、色眼鏡でみなかったユーディットには感謝している
ポスト:学術都市にある図書館の館長、頭脳労働担当
※宿の一室を長期で借りて、アトリエとしています。マイバウムの塔行かないけどご容赦を
全力で百合なので注意
うーん、アンソロとかであまり好きにはなれない、本気でまじめ話を書くになってしまった。
内容知らない人に不親切すぎるのであらすじと人物紹介。
時間を止めるアイテム、竜の砂時計の大量発注を受けたユーディーだが
調合をミスって200年後に飛ばされてしまう。
そこで出会ったたくさんの人たちに助けられながら、
紆余曲折を経て、帰還用の竜の砂時計を完成させる。
ユーディット:主人公、くまさんむにー
ラステル:200年後で親友になった少女、その想いはいつしか
クリスタ:盗賊の頭領の娘、色眼鏡でみなかったユーディットには感謝している
ポスト:学術都市にある図書館の館長、頭脳労働担当
※宿の一室を長期で借りて、アトリエとしています。マイバウムの塔行かないけどご容赦を
全力で百合なので注意
二次創作 アトリエ(2) [二次創作SS]
ユーディーのアトリエって、ほかのと比べて結構異色ですよね。
ゲーム的に期間制限がないのが目立ちますけど
フラグが建つのが、女の子しかいなかったり
賢者の石は作れなかったりね。
管理人が、本格派アトリエはこれが初めてだったので
思い入れも強いのから、そう思うのかもしれませんけどね。
まぁ、異邦人だから最初から惚れてるキャラいないのは当然だけど
誰も、口説き落としに行ったりしないんだよなあ。
年長者二人はたぶん、妻子もちだからいいけどさ
コンラッドとか、遺跡深部までつっこんでいくユーディーは最適だと思うけどな。
ゲーム的には、一番役立たずなのであんまり深いイベント見たことないけど。
まぁ、このゲーム基本的に男キャラは女キャラの下位互換なんですけどね
独自性のある、年長者二人はまぁともかく。
物語のプロット的には、ずっとラステルと一緒でいちゃついてるんだろうなあ……。
そんなわけで、頼まれたとき用に練習を兼ねまして
本編第二回へ行きましょうか。
若干、ユーディーさんこんなに弱くないといわれそうですけどね。
ゲーム的に期間制限がないのが目立ちますけど
フラグが建つのが、女の子しかいなかったり
賢者の石は作れなかったりね。
管理人が、本格派アトリエはこれが初めてだったので
思い入れも強いのから、そう思うのかもしれませんけどね。
まぁ、異邦人だから最初から惚れてるキャラいないのは当然だけど
誰も、口説き落としに行ったりしないんだよなあ。
年長者二人はたぶん、妻子もちだからいいけどさ
コンラッドとか、遺跡深部までつっこんでいくユーディーは最適だと思うけどな。
ゲーム的には、一番役立たずなのであんまり深いイベント見たことないけど。
まぁ、このゲーム基本的に男キャラは女キャラの下位互換なんですけどね
独自性のある、年長者二人はまぁともかく。
物語のプロット的には、ずっとラステルと一緒でいちゃついてるんだろうなあ……。
そんなわけで、頼まれたとき用に練習を兼ねまして
本編第二回へ行きましょうか。
若干、ユーディーさんこんなに弱くないといわれそうですけどね。
二次創作 アトリエ(3) [二次創作SS]
突然ですが、このSSのコンセプトはラステル×ユーディーではありません。
もちろん、ユーディーのアトリエは原作のゲームからして
それはもう全力でラステル×ユーディーではあります。
二人のイベントでかかるBGMのタイトルが『ちぎり』だったり
実は、ユーディーと呼ぶのはラステルだけだったり
果ては、真EDはラステルと別れたくないから帰らないという選択だったりね。
だから、このSSでも基本はラステル×ユーディーなのですが
管理人は思うことがあります。「クリスタも大概じゃね?」と。
というわけで、ユーディー×クリスタがコンセプトなのです。
まぁ、完全なユーディー×クリスタは話がおもつかなかったので
本編をなぞる形で、ちょっとクリスタに甘えるぐらいになっちゃいましたが。
ところで、女性キャラはあとエスメラルダとパメラがいますけど、この二人は淡白ですよね。
まぁ、パメラのほうは「マナケミア」でパメラが持っているくまのぬいぐるみは
ユーディーのもの説が正しいのなら、忘れないではいてくれてるようですけどね。
アルビレス学園は、マリーかエリーが作ったっぽい記述があるんだそうな。
管理人は見つけきらんかったけども。
さてそろそろ、本編に行きましょうかねー。
次回たぶん最終回。
もちろん、ユーディーのアトリエは原作のゲームからして
それはもう全力でラステル×ユーディーではあります。
二人のイベントでかかるBGMのタイトルが『ちぎり』だったり
実は、ユーディーと呼ぶのはラステルだけだったり
果ては、真EDはラステルと別れたくないから帰らないという選択だったりね。
だから、このSSでも基本はラステル×ユーディーなのですが
管理人は思うことがあります。「クリスタも大概じゃね?」と。
というわけで、ユーディー×クリスタがコンセプトなのです。
まぁ、完全なユーディー×クリスタは話がおもつかなかったので
本編をなぞる形で、ちょっとクリスタに甘えるぐらいになっちゃいましたが。
ところで、女性キャラはあとエスメラルダとパメラがいますけど、この二人は淡白ですよね。
まぁ、パメラのほうは「マナケミア」でパメラが持っているくまのぬいぐるみは
ユーディーのもの説が正しいのなら、忘れないではいてくれてるようですけどね。
アルビレス学園は、マリーかエリーが作ったっぽい記述があるんだそうな。
管理人は見つけきらんかったけども。
さてそろそろ、本編に行きましょうかねー。
次回たぶん最終回。
二次創作 アトリエ(4) [二次創作SS]
ぶっちゃけた話、ここから先はほぼゲームどおりなんですよね……。
というわけで、申し訳ないけど今回で最終回、続きは本編をやってみてほしいな。
流石に、ここまで露骨な描写なんかないし、本編だとここからってところはあるけどね。
まぁ、レヴューでも書きましたけど、追加要素が残念すぎてねえ。
PS2版なら安いのは安いでしょうけどね、あれもフリーズはあるしなあ。
ガストちゃんはフリーズとなかなか決別できませんな。
ほんと、ユーディーの問題はやりこみまくって超性能アイテムを作っても
実験台がいないというのが最大の問題でしたからねえ。
追加要素がきちんと機能してくれていれば……。
そんなわけで、最終回スタートです。
というわけで、申し訳ないけど今回で最終回、続きは本編をやってみてほしいな。
流石に、ここまで露骨な描写なんかないし、本編だとここからってところはあるけどね。
まぁ、レヴューでも書きましたけど、追加要素が残念すぎてねえ。
PS2版なら安いのは安いでしょうけどね、あれもフリーズはあるしなあ。
ガストちゃんはフリーズとなかなか決別できませんな。
ほんと、ユーディーの問題はやりこみまくって超性能アイテムを作っても
実験台がいないというのが最大の問題でしたからねえ。
追加要素がきちんと機能してくれていれば……。
そんなわけで、最終回スタートです。
二次創作 ヨーコ(1) [二次創作SS]
それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコOUTWAVE:
>YOHKO
年が明けて、さらになんだかんだで季節は新学年を迎えていた。プリズムの一件で、オールドタイマーに会いに行くため、銀河系外縁部に向かうことになったものの、エスタナトレーヒは未だに総司令部シルフィウムの周辺で待機している。物凄い長旅になるのだろうから、準備に時間がかかるのは分かるけど、それにしたってもうそろそろ半年になるわけで。
「いつまで待たせるのよ、ローソン!!」
呼び出しておいて資料を読んでいるローソンを、二つの意味で怒鳴りつける。
「ああ、済まない。今回の対戦相手の資料がやっと届いたんでね、呼んでたの忘れたよ」
案の定、分かりやすい方の答えしか返ってこないけど、まぁローソンはこういうやつだ。
「でも、戦闘なんて久しぶりね。バレンタイン頃にやったのが最後だっけ」
まどかの言うとおり、ちょくちょくこっちにも来てはいるけど、戦闘での呼び出しは結構久しぶりだったりする。今や名実ともに、タイラント艦隊のトップ戦績であるエスタナトレーヒ分艦隊の長期戦線離脱を、タイラント艦隊上層部がいい顔をするわけはない。それでも、TERRA上層部からの要請でなんとか遠征の許可は下りたけど、代わりに三ヶ月ほど馬車馬のように働かされた。
「せやなあ、なんかウデがなまってしまいそうや」
その気持ちも分かる、遠征の準備に入ってからは一切戦闘の予定は入れられていなかったから、あたしも戦いたくてうずうずしてる部分はあった。
「それで、遠征準備を中断してまで対戦する方々はどういう方たちなんです?」
「ああ、タイラント艦隊の新規参入チームでね。半年ほど前から参戦はしてたんだけど、遅れてた専用新型艦の建造がようやく終わったってことで、テストマッチを申し込まれてるんだ」
「その新造艦、そんなに興味深いわけ?」
TA-2系列艦を作ったローソンは、並みの艦では興味を示さない。こんな忙しい時期にわざわざ申し出を受けるということは、よっぽどの出来の艦なのだろうと思う。
「ああ。流石に詳細は伏せられてるけどね、巡航速度や相転移炉の出力なんかの基本的なスペックはTA-2系列艦を上回ってる。結局はプレイヤー次第なところはあるけど、期待できるんじゃないかな」
「ふーん」
内心の高揚を隠しつつ、あたしたちもデータを見せてもらう。確かに、公開されているスペックはTA-2系列艦を上回っているけど、それが即脅威につながるとは思えない。何より経験がまず違う、レッドブルだってベッテルのような天才やウェバーみたいなベテランだからこそ無双できたわけで、ブエミやアルグエルスアリだったらグダグダだったはず。
「確かに、性能は上のようですけど……」
「あたしが乗るってんならともかく、負ける気はしない。……ってこの子は!!」
プレイヤーの顔写真が表示されたそこには、見覚えどころじゃない人間が写っていた。
つづく。
第二話
>YOHKO
年が明けて、さらになんだかんだで季節は新学年を迎えていた。プリズムの一件で、オールドタイマーに会いに行くため、銀河系外縁部に向かうことになったものの、エスタナトレーヒは未だに総司令部シルフィウムの周辺で待機している。物凄い長旅になるのだろうから、準備に時間がかかるのは分かるけど、それにしたってもうそろそろ半年になるわけで。
「いつまで待たせるのよ、ローソン!!」
呼び出しておいて資料を読んでいるローソンを、二つの意味で怒鳴りつける。
「ああ、済まない。今回の対戦相手の資料がやっと届いたんでね、呼んでたの忘れたよ」
案の定、分かりやすい方の答えしか返ってこないけど、まぁローソンはこういうやつだ。
「でも、戦闘なんて久しぶりね。バレンタイン頃にやったのが最後だっけ」
まどかの言うとおり、ちょくちょくこっちにも来てはいるけど、戦闘での呼び出しは結構久しぶりだったりする。今や名実ともに、タイラント艦隊のトップ戦績であるエスタナトレーヒ分艦隊の長期戦線離脱を、タイラント艦隊上層部がいい顔をするわけはない。それでも、TERRA上層部からの要請でなんとか遠征の許可は下りたけど、代わりに三ヶ月ほど馬車馬のように働かされた。
「せやなあ、なんかウデがなまってしまいそうや」
その気持ちも分かる、遠征の準備に入ってからは一切戦闘の予定は入れられていなかったから、あたしも戦いたくてうずうずしてる部分はあった。
「それで、遠征準備を中断してまで対戦する方々はどういう方たちなんです?」
「ああ、タイラント艦隊の新規参入チームでね。半年ほど前から参戦はしてたんだけど、遅れてた専用新型艦の建造がようやく終わったってことで、テストマッチを申し込まれてるんだ」
「その新造艦、そんなに興味深いわけ?」
TA-2系列艦を作ったローソンは、並みの艦では興味を示さない。こんな忙しい時期にわざわざ申し出を受けるということは、よっぽどの出来の艦なのだろうと思う。
「ああ。流石に詳細は伏せられてるけどね、巡航速度や相転移炉の出力なんかの基本的なスペックはTA-2系列艦を上回ってる。結局はプレイヤー次第なところはあるけど、期待できるんじゃないかな」
「ふーん」
内心の高揚を隠しつつ、あたしたちもデータを見せてもらう。確かに、公開されているスペックはTA-2系列艦を上回っているけど、それが即脅威につながるとは思えない。何より経験がまず違う、レッドブルだってベッテルのような天才やウェバーみたいなベテランだからこそ無双できたわけで、ブエミやアルグエルスアリだったらグダグダだったはず。
「確かに、性能は上のようですけど……」
「あたしが乗るってんならともかく、負ける気はしない。……ってこの子は!!」
プレイヤーの顔写真が表示されたそこには、見覚えどころじゃない人間が写っていた。
つづく。
第二話
二次創作 ヨーコ(2) [二次創作SS]
>SYSOP
時は三日ほど遡って、四月第二週の金曜日のことである。
>YOHKO
週末の放課後、あたしはいつも通り視聴覚室へ向かう。中国グランプリ金曜フリーの結果も気になるところではあるけど、今日は新入生に部活紹介があったから、覗いてもし新入生がいたらここの掟を教えておかないと。その上で、対戦したりするのも一興よね。でも、ウチの無駄に多い部活紹介なんて、……あたしもやったはずだけど記憶にないわ。
「RPGやるような馬鹿野郎は来てないでしょうね!!」
とりあえず、それを第一声に視聴覚室の扉を勢いよく開けた。皿成あたりがあわてて新入生に隠させるシーンでも見れるかなと思ったけど、つまんないことになにもなかったらしい。まぁ、今となっちゃあディスクだし、投げ捨てても面白くないんだけどね。だけど、部員が群がってるのは確かみたいで、あたしも画面と新入生が見える位置に移動すると、あまりやらないからぱっとタイトルまでは思い出せなかったけど、シミュレーションがプレイされているようだ。
「あー、洋子遅かったわね」
気づかなかったが、先に来ていたらしいまどかが声をかけてくる。
「誰?」
「新入生よ」
「分かってるわよ!!」
そんなことを言いあっていると、件の新入生が答えてくれた。
「大塚初音です、よろしく」
「え、ああ、うん。よろしく」
初音と名乗った新入生が、こっちをみて笑ったその瞬間目が合った。はっきりとは分からなかったけど、その目はなんか含みがあるように感じた。そのことが気になって初音の方を見ているうちに、ゲームの方は大詰めに差し掛かっていた。
「さて、これでお終いですね」
まだ敵はそれなりに残っているように見えたが、初音がターンエンドすると敵軍は撤退を選択した。その結果に満足したように、初音は立ち上がると部長になった皿成のところに入部届を出すと、荷物を持って視聴覚室を出ていく。そのまま出ていくかと思ったけど、初音は扉の前で振り向くと、口を開いた。
「ああ、洋子先輩、まどか先輩。よろしくお願いしますね」
そう言って微笑むと、今度こそ本当に出て行った。
「なんで、ここの部員でもないあたしたちに挨拶するのよ……」
まどかはそんなことを言うけど、そんなことあたしだってわかるわけない。だからこのときは、これ以上気にしないことにしたんだ。
つづく。
第一話|第三話
時は三日ほど遡って、四月第二週の金曜日のことである。
>YOHKO
週末の放課後、あたしはいつも通り視聴覚室へ向かう。中国グランプリ金曜フリーの結果も気になるところではあるけど、今日は新入生に部活紹介があったから、覗いてもし新入生がいたらここの掟を教えておかないと。その上で、対戦したりするのも一興よね。でも、ウチの無駄に多い部活紹介なんて、……あたしもやったはずだけど記憶にないわ。
「RPGやるような馬鹿野郎は来てないでしょうね!!」
とりあえず、それを第一声に視聴覚室の扉を勢いよく開けた。皿成あたりがあわてて新入生に隠させるシーンでも見れるかなと思ったけど、つまんないことになにもなかったらしい。まぁ、今となっちゃあディスクだし、投げ捨てても面白くないんだけどね。だけど、部員が群がってるのは確かみたいで、あたしも画面と新入生が見える位置に移動すると、あまりやらないからぱっとタイトルまでは思い出せなかったけど、シミュレーションがプレイされているようだ。
「あー、洋子遅かったわね」
気づかなかったが、先に来ていたらしいまどかが声をかけてくる。
「誰?」
「新入生よ」
「分かってるわよ!!」
そんなことを言いあっていると、件の新入生が答えてくれた。
「大塚初音です、よろしく」
「え、ああ、うん。よろしく」
初音と名乗った新入生が、こっちをみて笑ったその瞬間目が合った。はっきりとは分からなかったけど、その目はなんか含みがあるように感じた。そのことが気になって初音の方を見ているうちに、ゲームの方は大詰めに差し掛かっていた。
「さて、これでお終いですね」
まだ敵はそれなりに残っているように見えたが、初音がターンエンドすると敵軍は撤退を選択した。その結果に満足したように、初音は立ち上がると部長になった皿成のところに入部届を出すと、荷物を持って視聴覚室を出ていく。そのまま出ていくかと思ったけど、初音は扉の前で振り向くと、口を開いた。
「ああ、洋子先輩、まどか先輩。よろしくお願いしますね」
そう言って微笑むと、今度こそ本当に出て行った。
「なんで、ここの部員でもないあたしたちに挨拶するのよ……」
まどかはそんなことを言うけど、そんなことあたしだってわかるわけない。だからこのときは、これ以上気にしないことにしたんだ。
つづく。
第一話|第三話
二次創作 ヨーコ(3) [二次創作SS]
>SYSOP
回想終了。
>YOHKO
「特一級戦略空母(スーパーストラテジー)RD-03オオツカハツネって、なるほどあの時のよろしくってこういうこと」
つい、大声を上げてしまったあたしをジト目で見ながら、まどかは一人ごちる。その視線を華麗にスルーして、もう一度資料を視ようとしたら、遠慮がちに綾乃が口を開く。
「洋子さんとまどかさんは、そちらの方とお知り合いなんですか」
「ん? 綾乃も誰か知ってるの?」
「はい。この特一級剣術戦艦(スーパーソーディアン)RD-07ヒイラギアズサの柊梓さんに、これからよろしくと言われました」
どうやら、あたしたちと一緒らしい。こうなると紅葉の方が気になるんだけど。
「なんや、みんなしてこっち見て。うちも会ったで、こっちの特一級要撃戦艦(スーパーインターセプト)RD-09アマミヤシグレや」
どうも、全員誰かしらには会っているらしい、そうなると一人残っているわけだ。初音はあそこで待ってたわけだから、あたしに会うつもりだったんだろうしね。
「洋子にだけ会いたいなら、あそこで待つのは微妙よね。会ったわよ、特一級強襲戦艦(スーパーアサルト)RD-05スギサキカナ」
まったく、心臓に悪いことをするもんだ。まぁ別に悪いことでもないし、いいけど。なんていうか、演出過剰よね。とはいえちょっと気になることはある。
「でもローソン、あたしたちは今更後輩ができても別に問題ないけど、クロノスはどうしたのよ?」
「ん? ああ、サザーランド司令から直々の要請があってね、エスタナトレーヒ謹製のものを提供したよ。なんでも彼女たちのチームは、僕たちの遠征の護衛してくれるんだそうだ」
なるほど。でもそれって、あたしらだけじゃ戦力不足ってこと?
「いらないわよ、そんなの」
直感だけど、オールドタイマーと戦闘になるようなことはないだろうし、NESS相手のいつもの戦闘なら、たとえNESS全軍でかかってきたとしても、負ける気なんてこれっぽっちもないしね。
「まぁ、僕もそう思うんだが……。流石に、司令直々じゃ仕方ないよ」
「仕方ないって言葉は嫌いよ!!」
「まぁまぁ今回のテストマッチは、彼女たちが役に立つってところを示す意味もあるみたいだし」
要するに、ここでボコボコにしてやればお断りできるってことなわけで……。
「そういうことなら、昨日今日乗ったよーな子たちに、格の違いを見せつけてやるわ!!」
そう意気込んで、まどかたちの方を見たんだけど。
「うちは別に……、時雨ちゃんとは映画仲間できてありがたいけどなー」
「私も、梓さんとの手合せ、楽しかったですし……」
「夏用のシナリオあの子に頼んだわ」
どうも三人はあっさり籠絡……もとい、すっかり仲良くなっていたらしい。あたしなんてほんの一言二言だったぞ!! たぶんまどかがいたせいね、あれは。
「いや、私も別にあの子たちと仲良くするのがいやってわけじゃないんだけど……」
気勢をそがれたあたしに、三人はいつも通りにまどかはため息をつきながら、綾乃は微笑んで、紅葉はノリよく口を開いた。
「まぁ、そうね。後輩に負けたとあったら、示しがつかないわよね」
「こちらでも手合せできるなら、願ってもないです」
「よっしゃ、ビシッと決めたろ!!」
うーん、見透かされてるみたいでなんか悔しいぞ。
「あー、洋子くん」
「なによ?」
「そろそろ時間なんだが……」
言われて時計に目をやると、そろそろ独立次元泡を起動しないと、間に合わない時間になっているのは確かのようだ。
「もっと早く言いなさいよ!!」
そう言われて、あたしたちはあわててトラムへと乗り込んだ。
つづく。
第二話|第四話
回想終了。
>YOHKO
「特一級戦略空母(スーパーストラテジー)RD-03オオツカハツネって、なるほどあの時のよろしくってこういうこと」
つい、大声を上げてしまったあたしをジト目で見ながら、まどかは一人ごちる。その視線を華麗にスルーして、もう一度資料を視ようとしたら、遠慮がちに綾乃が口を開く。
「洋子さんとまどかさんは、そちらの方とお知り合いなんですか」
「ん? 綾乃も誰か知ってるの?」
「はい。この特一級剣術戦艦(スーパーソーディアン)RD-07ヒイラギアズサの柊梓さんに、これからよろしくと言われました」
どうやら、あたしたちと一緒らしい。こうなると紅葉の方が気になるんだけど。
「なんや、みんなしてこっち見て。うちも会ったで、こっちの特一級要撃戦艦(スーパーインターセプト)RD-09アマミヤシグレや」
どうも、全員誰かしらには会っているらしい、そうなると一人残っているわけだ。初音はあそこで待ってたわけだから、あたしに会うつもりだったんだろうしね。
「洋子にだけ会いたいなら、あそこで待つのは微妙よね。会ったわよ、特一級強襲戦艦(スーパーアサルト)RD-05スギサキカナ」
まったく、心臓に悪いことをするもんだ。まぁ別に悪いことでもないし、いいけど。なんていうか、演出過剰よね。とはいえちょっと気になることはある。
「でもローソン、あたしたちは今更後輩ができても別に問題ないけど、クロノスはどうしたのよ?」
「ん? ああ、サザーランド司令から直々の要請があってね、エスタナトレーヒ謹製のものを提供したよ。なんでも彼女たちのチームは、僕たちの遠征の護衛してくれるんだそうだ」
なるほど。でもそれって、あたしらだけじゃ戦力不足ってこと?
「いらないわよ、そんなの」
直感だけど、オールドタイマーと戦闘になるようなことはないだろうし、NESS相手のいつもの戦闘なら、たとえNESS全軍でかかってきたとしても、負ける気なんてこれっぽっちもないしね。
「まぁ、僕もそう思うんだが……。流石に、司令直々じゃ仕方ないよ」
「仕方ないって言葉は嫌いよ!!」
「まぁまぁ今回のテストマッチは、彼女たちが役に立つってところを示す意味もあるみたいだし」
要するに、ここでボコボコにしてやればお断りできるってことなわけで……。
「そういうことなら、昨日今日乗ったよーな子たちに、格の違いを見せつけてやるわ!!」
そう意気込んで、まどかたちの方を見たんだけど。
「うちは別に……、時雨ちゃんとは映画仲間できてありがたいけどなー」
「私も、梓さんとの手合せ、楽しかったですし……」
「夏用のシナリオあの子に頼んだわ」
どうも三人はあっさり籠絡……もとい、すっかり仲良くなっていたらしい。あたしなんてほんの一言二言だったぞ!! たぶんまどかがいたせいね、あれは。
「いや、私も別にあの子たちと仲良くするのがいやってわけじゃないんだけど……」
気勢をそがれたあたしに、三人はいつも通りにまどかはため息をつきながら、綾乃は微笑んで、紅葉はノリよく口を開いた。
「まぁ、そうね。後輩に負けたとあったら、示しがつかないわよね」
「こちらでも手合せできるなら、願ってもないです」
「よっしゃ、ビシッと決めたろ!!」
うーん、見透かされてるみたいでなんか悔しいぞ。
「あー、洋子くん」
「なによ?」
「そろそろ時間なんだが……」
言われて時計に目をやると、そろそろ独立次元泡を起動しないと、間に合わない時間になっているのは確かのようだ。
「もっと早く言いなさいよ!!」
そう言われて、あたしたちはあわててトラムへと乗り込んだ。
つづく。
第二話|第四話
二次創作 ヨーコ(4) [二次創作SS]
>SYSOP
「そういえば、エスタナトレーヒがテストマッチをやるそうですよ?」
メオ・ママンのオットーは、先ほどから来客用のソファに陣取り、黙ったままのメリ・スハンのゼンガーに対していつものように軽口をたたく。しかし、ゼンガーは反応を見せないどころか眉一つ動かさない。正直、オットーも困り果てていた。仕方なく、自分のデスクを離れてゼンガーを覗き込む。
「ヤマモトヨーコにすら反応なしですか……?」
「……」
普段は他人を脱力させるオットーだが、今は珍しく自分の方が脱力しているらしい。
「僕だって、こう見えて忙しいんです。大事なスポンサー様を無下にゃしませんが、用件はハッキリして欲しいんですけど?」
そんなことを言いながら、デスクにドカッと座り込んだ。
「貴様がそうでなければ、こうして躊躇する必要もあるまいにな」
「まぁ、僕以上の逸材がいるっていうなら止めないですけどね?」
「全く、すぐにそうやって足元を見おる。まぁいい、やはり貴様に頼るしかないのだろう」
そう言うとゼンガーは立ち上がって、オットーのデスクまでやってくる。
「誰にも負けない戦闘艦を造ってもらいたい。ヤマモトヨーコにも、フーリガーにも、もちろんオールドタイマーにもな」
「難題ですな。まぁ、それはこちらの腕の見せ所として、一つだけ条件がありますけどいいですかー」
オットーに頼らなければ、この難題はクリアできない。それなり以上の条件は覚悟していたのだが、オットーはデスクの底から凄まじい量の紙の束を取り出してゼンガーにつきつけた。手に取ってみたそれは……。
「これは、請求書か」
「そーですよー。一括で払っといてください、それが条件です」
何とも古めかしい紙の請求書、束の厚みが尋常ではないだけあって、合計金額も尋常ではない。改革派に抑えられる前になんとか持ち出せた資産をほぼ使い切るぐらいの勢いだ。流石に眉をひそめるゼンガーに、オットーは悪びれもせず言った。
「いやー、マンタの犠牲から生まれたインスピレーションが消えないうちにと、建造に着手したはいいけど、こんなレギュレーション違反にお金出してくれる人いないでしょ? 最近じゃ借金取りが……」
サングラスの下の目は、おそらく無意味に輝いているのだろうが、ゼンガーは無視してオットーの言葉を遮った。
「そんな話はいい、つまりすでに艦自体は完成しているというのだな」
「もちのろん!! 信用できないならみせましょうか」
「そうしてもらおう」
オットーがコンソールを操作すると、ホロビューに巨大な戦闘艦が映し出される。下部は白、上部は鼠色の巨大な船体が映し出される。それが何であるかを判断するのは難しくない、事実ゼンガーはすぐに気付いたようだ。
「サメか……」
「おしい、太古の海で栄えたカルカロクレス・メガロドンですよ。ま、サメは歯しか残りませんからね、細部はホホジロザメを参考にしましたけど」
まぁ、確かに力強いデザインとは言えるだろう。デザインで戦うわけではないが、金魚型の艦で勝てる気がするかと言われれば否だ。そういう意味ではこの意匠は最強の戦闘艦にふさわしい。
「性能の方を聞かせてもらおう」
「4000mに迫る大型艦ですが、高速戦闘仕様にしてあります、流石にでかすぎて高機動というわけにはいかないけど。武装は大口径持続発射式インパルス砲R4300/HC、両舷コンポジットインパルス砲、ファランクスレールガンとまぁ、雷管が三十二門ほど。防御面は電磁着散式粉粒体装甲、積層式ヴェイパーシールドでとなってますよ」
さらにアレコレとオットーは得意げに解説しているが、自分が乗るわけではないゼンガーにとって細かいところはどうでもいい。このカルカロクレス・メガロドンが最強であり、ヤマモトヨーコを倒せればそれでいいのだ。
「ああ、肝心なことを忘れるところだった」
オットーは急にしゃべるのをやめると、オットーにしては真面目な顔で向き直る。
「なにをだ」
「ハッキリ言ってこれ、現状では最強なんて程遠いですからね」
すっかりその気になりかけていたゼンガーにとって、オットーのその言葉は裏切り以外の何物でもなかった。
「貴様……」
「話は最後まで聞いてくださいよ、現状ではって言ったでしょ!?」
この上何かを要求しようという雰囲気ではないのが救いではあったが……。
「何が必要なのだ」
「ヤマモトヨーコに匹敵するプレイヤーか相応の戦闘経験。いくら今までの艦のデータをフィードバックしていたとしても、結局はそれを熟成しなければ意味がないと痛感しましてね。まぁ、それはお買い上げ後にご自分でどうぞ」
「……この状況で厄介なことを言う」
現在、ゼンガーらの一派は政権中枢からは追放されている。ただ、フーリガーの兄フィッシャーらの改革が進むにつれ、放逐された勢力がゼンガーのもとに接触してきており、状況は好転しつつある。とはいえ、長年中枢で甘い汁を吸ってきたような連中がほとんどである、戦闘艦などのリソースもあるにはあるが、ヤマモトヨーコとやりあえるだけの戦闘データを提供出来はしないだろう。
「ま、どっか適当な星系を不法占拠でもすればいいんじゃないですか? そのうち排除にカモがわんさかやってきますよ」
「……ふむ」
確かに、双方の陣営に対して目立つ行動をして時間稼ぎをする必要はある。このカルカロクレス・メガロドンでヤマモトヨーコを倒す準備が整う前に、オールドタイマーとの接触されてしまっては元も子もないのだから、オットーの言う手段は確かに手っ取り早い。なんにせよ、今はこのカルカロクレス・メガロドンを前提に戦略を練り直す必要があるのは間違いない。
「いつもの口座では危険だ、用意はしてあるのだろうな」
「もちろん、ぬかりなく」
ゼンガーは、自分の端末を操作してオットーの口座に金を振り込む。オットーも振り込まれたことを確認すると、隠しドックの位置データと艦の起動キーを引き渡す。それを受け取ると、ゼンガーは立ち上がって部屋を出ていく。その後ろ姿に、オットーはもう一度口を開いた。
「オートでやるにしても、誰かしらプレイヤーを乗せておくことをお勧めしますよ」
「なぜだ」
いつになく真面目なトーンのオットーにゼンガーは振り向かずに訊き返す。
「……マンタの二の舞は、防げるかもしれない」
「そうか」
ゼンガーは、それだけ返すとそのまま出て行く。これでもう会うことはないだろうと思いながら、コンソールを操作して別のウィンドウを立ち上げる。そこには先ほどのカルカロクレス・メガロドンと似た、しかし違う別の艦のプランが表示されていた。
「……そいつはね、ある生物の出現によって淘汰されたって学説もあるんだよね」
ウィンドウをスクロールされたことで、その艦の名前らしき表示が見えてくる。そこにはこう記されていたPR/P0“オルカ”と……。
つづく。
第三話|第五話
「そういえば、エスタナトレーヒがテストマッチをやるそうですよ?」
メオ・ママンのオットーは、先ほどから来客用のソファに陣取り、黙ったままのメリ・スハンのゼンガーに対していつものように軽口をたたく。しかし、ゼンガーは反応を見せないどころか眉一つ動かさない。正直、オットーも困り果てていた。仕方なく、自分のデスクを離れてゼンガーを覗き込む。
「ヤマモトヨーコにすら反応なしですか……?」
「……」
普段は他人を脱力させるオットーだが、今は珍しく自分の方が脱力しているらしい。
「僕だって、こう見えて忙しいんです。大事なスポンサー様を無下にゃしませんが、用件はハッキリして欲しいんですけど?」
そんなことを言いながら、デスクにドカッと座り込んだ。
「貴様がそうでなければ、こうして躊躇する必要もあるまいにな」
「まぁ、僕以上の逸材がいるっていうなら止めないですけどね?」
「全く、すぐにそうやって足元を見おる。まぁいい、やはり貴様に頼るしかないのだろう」
そう言うとゼンガーは立ち上がって、オットーのデスクまでやってくる。
「誰にも負けない戦闘艦を造ってもらいたい。ヤマモトヨーコにも、フーリガーにも、もちろんオールドタイマーにもな」
「難題ですな。まぁ、それはこちらの腕の見せ所として、一つだけ条件がありますけどいいですかー」
オットーに頼らなければ、この難題はクリアできない。それなり以上の条件は覚悟していたのだが、オットーはデスクの底から凄まじい量の紙の束を取り出してゼンガーにつきつけた。手に取ってみたそれは……。
「これは、請求書か」
「そーですよー。一括で払っといてください、それが条件です」
何とも古めかしい紙の請求書、束の厚みが尋常ではないだけあって、合計金額も尋常ではない。改革派に抑えられる前になんとか持ち出せた資産をほぼ使い切るぐらいの勢いだ。流石に眉をひそめるゼンガーに、オットーは悪びれもせず言った。
「いやー、マンタの犠牲から生まれたインスピレーションが消えないうちにと、建造に着手したはいいけど、こんなレギュレーション違反にお金出してくれる人いないでしょ? 最近じゃ借金取りが……」
サングラスの下の目は、おそらく無意味に輝いているのだろうが、ゼンガーは無視してオットーの言葉を遮った。
「そんな話はいい、つまりすでに艦自体は完成しているというのだな」
「もちのろん!! 信用できないならみせましょうか」
「そうしてもらおう」
オットーがコンソールを操作すると、ホロビューに巨大な戦闘艦が映し出される。下部は白、上部は鼠色の巨大な船体が映し出される。それが何であるかを判断するのは難しくない、事実ゼンガーはすぐに気付いたようだ。
「サメか……」
「おしい、太古の海で栄えたカルカロクレス・メガロドンですよ。ま、サメは歯しか残りませんからね、細部はホホジロザメを参考にしましたけど」
まぁ、確かに力強いデザインとは言えるだろう。デザインで戦うわけではないが、金魚型の艦で勝てる気がするかと言われれば否だ。そういう意味ではこの意匠は最強の戦闘艦にふさわしい。
「性能の方を聞かせてもらおう」
「4000mに迫る大型艦ですが、高速戦闘仕様にしてあります、流石にでかすぎて高機動というわけにはいかないけど。武装は大口径持続発射式インパルス砲R4300/HC、両舷コンポジットインパルス砲、ファランクスレールガンとまぁ、雷管が三十二門ほど。防御面は電磁着散式粉粒体装甲、積層式ヴェイパーシールドでとなってますよ」
さらにアレコレとオットーは得意げに解説しているが、自分が乗るわけではないゼンガーにとって細かいところはどうでもいい。このカルカロクレス・メガロドンが最強であり、ヤマモトヨーコを倒せればそれでいいのだ。
「ああ、肝心なことを忘れるところだった」
オットーは急にしゃべるのをやめると、オットーにしては真面目な顔で向き直る。
「なにをだ」
「ハッキリ言ってこれ、現状では最強なんて程遠いですからね」
すっかりその気になりかけていたゼンガーにとって、オットーのその言葉は裏切り以外の何物でもなかった。
「貴様……」
「話は最後まで聞いてくださいよ、現状ではって言ったでしょ!?」
この上何かを要求しようという雰囲気ではないのが救いではあったが……。
「何が必要なのだ」
「ヤマモトヨーコに匹敵するプレイヤーか相応の戦闘経験。いくら今までの艦のデータをフィードバックしていたとしても、結局はそれを熟成しなければ意味がないと痛感しましてね。まぁ、それはお買い上げ後にご自分でどうぞ」
「……この状況で厄介なことを言う」
現在、ゼンガーらの一派は政権中枢からは追放されている。ただ、フーリガーの兄フィッシャーらの改革が進むにつれ、放逐された勢力がゼンガーのもとに接触してきており、状況は好転しつつある。とはいえ、長年中枢で甘い汁を吸ってきたような連中がほとんどである、戦闘艦などのリソースもあるにはあるが、ヤマモトヨーコとやりあえるだけの戦闘データを提供出来はしないだろう。
「ま、どっか適当な星系を不法占拠でもすればいいんじゃないですか? そのうち排除にカモがわんさかやってきますよ」
「……ふむ」
確かに、双方の陣営に対して目立つ行動をして時間稼ぎをする必要はある。このカルカロクレス・メガロドンでヤマモトヨーコを倒す準備が整う前に、オールドタイマーとの接触されてしまっては元も子もないのだから、オットーの言う手段は確かに手っ取り早い。なんにせよ、今はこのカルカロクレス・メガロドンを前提に戦略を練り直す必要があるのは間違いない。
「いつもの口座では危険だ、用意はしてあるのだろうな」
「もちろん、ぬかりなく」
ゼンガーは、自分の端末を操作してオットーの口座に金を振り込む。オットーも振り込まれたことを確認すると、隠しドックの位置データと艦の起動キーを引き渡す。それを受け取ると、ゼンガーは立ち上がって部屋を出ていく。その後ろ姿に、オットーはもう一度口を開いた。
「オートでやるにしても、誰かしらプレイヤーを乗せておくことをお勧めしますよ」
「なぜだ」
いつになく真面目なトーンのオットーにゼンガーは振り向かずに訊き返す。
「……マンタの二の舞は、防げるかもしれない」
「そうか」
ゼンガーは、それだけ返すとそのまま出て行く。これでもう会うことはないだろうと思いながら、コンソールを操作して別のウィンドウを立ち上げる。そこには先ほどのカルカロクレス・メガロドンと似た、しかし違う別の艦のプランが表示されていた。
「……そいつはね、ある生物の出現によって淘汰されたって学説もあるんだよね」
ウィンドウをスクロールされたことで、その艦の名前らしき表示が見えてくる。そこにはこう記されていたPR/P0“オルカ”と……。
つづく。
第三話|第五話
二次創作SS ヨーコ(5) [二次創作SS]
>YOHKO
「アソビン教授、状況は?」
「現在、曳航船にて出撃中。完了次第、オートで所定の位置へ移動します」
「OK、任せたわ」
パドックから引き出されたマシンは、グリッドに向かう。だけど、そこはサーキットじゃなくてシルフィウムから1光秒ほど離れた演習場だ。まぁ、単純にインパルス砲のプラズマスフィアが届かない距離まで離れたってだけなんだけどね。
「ねえ、向こうのパドック艦拡大して」
「了解しました」
すぐに、相手のパドック艦リヴァードールの映像が表示された。そこには当然、同じように出撃中のRD-0系列艦4隻の姿がある。大型のサイドポンツーン状の艦載機デッキを持つのがRD-03、綾乃と同じ多数のアンカーが見えるのがRD-07、あたしと同じ大型の要塞砲を積んでるのがRD-09で、ちょっと見た目がシャープなぐらいであまり特徴がないのがたぶんRD-05。気になるカラーリングはRD-03が白地に紺の配色で、F1で言うならBMWザウバー。RD-05は水色と黄色で構成されたマイルドセブンルノー。RD-07は白と黒そして緑、ラストイヤー開幕時のミナルディ。そして、RD-09は日の丸的な配色とデザインのラッキーストライクホンダ。
「うーん、なかなかいいセンスしてるわ」
まだまだほんの数年なんだけど、タバコ広告のマシンはすごく懐かしい感じがする。まぁ、紅葉のTA-23もJPSロータスで、タバコ広告のマシンなんだけどさ。……なんて感傷に浸っているあたしのところに、無粋にもローソンが通信を入れてくる。
「ブリーフィングの時間がなかったから、伝えることだけ伝えるぞ。そのままで聞いてくれ」
「……はいはい」
時間がなかったのは、ローソンが資料を読みふけっていたせいだと思うんだけど。まぁその辺は今更なので、もうつっこまないことにする。
「とりあえずみんな、自分の艦と対応する相手と当ってくれ。できる限り詳細なデータを取りたいんだ」
「「え?」」
「もとより、そのつもりですので問題ありません」
「私もいいわよ」
まどかと綾乃が問題ないと返す中で、あたしと紅葉はお互いを見合わせる。ローソンが言いたいことは分かるけど、あたしとしては宣戦布告してきた初音とやりあうつもりマンマンだったし、紅葉も時雨と戦うつもりだったんだと思う。その反応に、珍しくローソンも察したらしい。
「さっきの話から気持ちはわかるけど、まずはそうしてくれないか?」
まぁ、分析はローソンが主役だから、主役の望むデータを引き出すのがあたしたちの仕事と言われたらそうだからね。
「わかったけど、できる限りよ? 向こうが同じように動いてくれるかわからないし」
「そのときは、……諦めるしかないな」
ローソンは頭をかいて、件の資料を見ながら話始めた。
「データを見たから分かってると思うけど、RD-0系列艦は2000m級でTA-2系列艦よりも大きい。まぁ、サイズが大きくなるということは、被弾が増えるとかのデメリットもあるから一概に大きければ強いってことはないけど、RD-03だけは注意してくれ」
「なんでや?」
「空母だけは、大きいということがニアリィイコールで搭載機の多さに繋がるからね」
確かに、TA-23の300機という搭載数は、空母型の中でも決して多い方じゃない。そりゃ、見境なしに搭載数を増やしたって、一人で操作しないといけないんだから扱いきれないのは分かるけど。
「オプションが多いに越したことはないわね」
「ファンネルも多い方がいいに決まってるわよねー」
最近、ガンダムのVSシリーズのせいで、まどかのがちょっとわかるようになってきたのが悔しいのよね……。あのシリーズも面白いからいいんだけどね。
「まどかくん、RD-05にバレルロールはやめておいた方がいい」
「はいはい、重量差で押し負けるんでしょ? そのぐらいは考えてるわ」
「そうかい? ならいいんだけど」
まどかは分かってるって言ったけど、たぶんやるしかないんじゃないかなと思う。正直、あれないと決定打がまるでないもんね。
「綾乃くん、RD-07は“剣術”戦艦というくらいだから、当然剣を使ってくるんだろうけど、僕には持続発射モードと備えた重力アンカーを振り回すくらいしか思いつかない。だから、射程にも注意してくれ」
「ライザーソードってわけね!? 赤くなって三倍になったりしない?」
「いやそれはどうだろう……」
「梓さんの剣は、どちらかというと瞬間的に間合を侵略する剣ですが……。そうですね、やはり人の身と同じように振る舞うにも限界はありますから、参考にします」
相変わらず茶化すまどかに、真面目に返す綾乃。でもホント、どうやって剣を用意するのかは興味あるけど、ローソンが言うようにワインダーさせてそれで剣っていうのはお粗末な感じがするわよねえ。
「で、洋子くんなんだけど……」
「なによ?」
「いや、RD-09だけはなにもわからないんだ」
まさかの答えに、ずっこけそうになったけど流石にそれは抑えた。
「なんなのよそれは!?」
「そうは言うけど、“要撃”ってカテゴリから多少防御よりかもしれないってくらいで、他になにも思いつかないんだよ。打撃戦艦の系統は、地道にカタログスペックを底上げするのがもっとも効果的だし」
それはそうかもしれないけど、要はオーソドックスでつまんないってことのように聞こえるわけで。
「まぁあれよ、強化系には必殺技はいらないってあれよ」
「洋子ちゃんやったら、別に情報なくても余裕やて」
「そうですよ、相手のことがわからないなんていつものことじゃないですか」
三人のフォローはありがたいけど、どうせならこんな時ぐらい、わけわかんないことをしてくる奴と戦ってみたいと思ってしまう。
「こうなったら、さくっと倒して他に行くしかないわ!!」
「せや、その意気や」
そんなコントをやっていたら、今度はアソビン教授が遠慮がちに(?) 報告してくる。
「定刻です。これよりテストマッチを開始します」
「了解、いくわよ!!」
あたしの檄に三人がそれぞれうなずく。そして。
「スーパーストライクTA-29ヤマモト・ヨーコ、ゲットレディ、GO!!」
「スーパースプリントTA-25ミドー・マドカ、行きまーす!!」
「スーパーストラグルTA-27ハクホーイン・アヤノ・エリザベス、いざ、参る!!」
「スーパーストームTA-23カガリヤ・モミジ、アクション!!」
つづく。
第四話|第六話
「アソビン教授、状況は?」
「現在、曳航船にて出撃中。完了次第、オートで所定の位置へ移動します」
「OK、任せたわ」
パドックから引き出されたマシンは、グリッドに向かう。だけど、そこはサーキットじゃなくてシルフィウムから1光秒ほど離れた演習場だ。まぁ、単純にインパルス砲のプラズマスフィアが届かない距離まで離れたってだけなんだけどね。
「ねえ、向こうのパドック艦拡大して」
「了解しました」
すぐに、相手のパドック艦リヴァードールの映像が表示された。そこには当然、同じように出撃中のRD-0系列艦4隻の姿がある。大型のサイドポンツーン状の艦載機デッキを持つのがRD-03、綾乃と同じ多数のアンカーが見えるのがRD-07、あたしと同じ大型の要塞砲を積んでるのがRD-09で、ちょっと見た目がシャープなぐらいであまり特徴がないのがたぶんRD-05。気になるカラーリングはRD-03が白地に紺の配色で、F1で言うならBMWザウバー。RD-05は水色と黄色で構成されたマイルドセブンルノー。RD-07は白と黒そして緑、ラストイヤー開幕時のミナルディ。そして、RD-09は日の丸的な配色とデザインのラッキーストライクホンダ。
「うーん、なかなかいいセンスしてるわ」
まだまだほんの数年なんだけど、タバコ広告のマシンはすごく懐かしい感じがする。まぁ、紅葉のTA-23もJPSロータスで、タバコ広告のマシンなんだけどさ。……なんて感傷に浸っているあたしのところに、無粋にもローソンが通信を入れてくる。
「ブリーフィングの時間がなかったから、伝えることだけ伝えるぞ。そのままで聞いてくれ」
「……はいはい」
時間がなかったのは、ローソンが資料を読みふけっていたせいだと思うんだけど。まぁその辺は今更なので、もうつっこまないことにする。
「とりあえずみんな、自分の艦と対応する相手と当ってくれ。できる限り詳細なデータを取りたいんだ」
「「え?」」
「もとより、そのつもりですので問題ありません」
「私もいいわよ」
まどかと綾乃が問題ないと返す中で、あたしと紅葉はお互いを見合わせる。ローソンが言いたいことは分かるけど、あたしとしては宣戦布告してきた初音とやりあうつもりマンマンだったし、紅葉も時雨と戦うつもりだったんだと思う。その反応に、珍しくローソンも察したらしい。
「さっきの話から気持ちはわかるけど、まずはそうしてくれないか?」
まぁ、分析はローソンが主役だから、主役の望むデータを引き出すのがあたしたちの仕事と言われたらそうだからね。
「わかったけど、できる限りよ? 向こうが同じように動いてくれるかわからないし」
「そのときは、……諦めるしかないな」
ローソンは頭をかいて、件の資料を見ながら話始めた。
「データを見たから分かってると思うけど、RD-0系列艦は2000m級でTA-2系列艦よりも大きい。まぁ、サイズが大きくなるということは、被弾が増えるとかのデメリットもあるから一概に大きければ強いってことはないけど、RD-03だけは注意してくれ」
「なんでや?」
「空母だけは、大きいということがニアリィイコールで搭載機の多さに繋がるからね」
確かに、TA-23の300機という搭載数は、空母型の中でも決して多い方じゃない。そりゃ、見境なしに搭載数を増やしたって、一人で操作しないといけないんだから扱いきれないのは分かるけど。
「オプションが多いに越したことはないわね」
「ファンネルも多い方がいいに決まってるわよねー」
最近、ガンダムのVSシリーズのせいで、まどかのがちょっとわかるようになってきたのが悔しいのよね……。あのシリーズも面白いからいいんだけどね。
「まどかくん、RD-05にバレルロールはやめておいた方がいい」
「はいはい、重量差で押し負けるんでしょ? そのぐらいは考えてるわ」
「そうかい? ならいいんだけど」
まどかは分かってるって言ったけど、たぶんやるしかないんじゃないかなと思う。正直、あれないと決定打がまるでないもんね。
「綾乃くん、RD-07は“剣術”戦艦というくらいだから、当然剣を使ってくるんだろうけど、僕には持続発射モードと備えた重力アンカーを振り回すくらいしか思いつかない。だから、射程にも注意してくれ」
「ライザーソードってわけね!? 赤くなって三倍になったりしない?」
「いやそれはどうだろう……」
「梓さんの剣は、どちらかというと瞬間的に間合を侵略する剣ですが……。そうですね、やはり人の身と同じように振る舞うにも限界はありますから、参考にします」
相変わらず茶化すまどかに、真面目に返す綾乃。でもホント、どうやって剣を用意するのかは興味あるけど、ローソンが言うようにワインダーさせてそれで剣っていうのはお粗末な感じがするわよねえ。
「で、洋子くんなんだけど……」
「なによ?」
「いや、RD-09だけはなにもわからないんだ」
まさかの答えに、ずっこけそうになったけど流石にそれは抑えた。
「なんなのよそれは!?」
「そうは言うけど、“要撃”ってカテゴリから多少防御よりかもしれないってくらいで、他になにも思いつかないんだよ。打撃戦艦の系統は、地道にカタログスペックを底上げするのがもっとも効果的だし」
それはそうかもしれないけど、要はオーソドックスでつまんないってことのように聞こえるわけで。
「まぁあれよ、強化系には必殺技はいらないってあれよ」
「洋子ちゃんやったら、別に情報なくても余裕やて」
「そうですよ、相手のことがわからないなんていつものことじゃないですか」
三人のフォローはありがたいけど、どうせならこんな時ぐらい、わけわかんないことをしてくる奴と戦ってみたいと思ってしまう。
「こうなったら、さくっと倒して他に行くしかないわ!!」
「せや、その意気や」
そんなコントをやっていたら、今度はアソビン教授が遠慮がちに(?) 報告してくる。
「定刻です。これよりテストマッチを開始します」
「了解、いくわよ!!」
あたしの檄に三人がそれぞれうなずく。そして。
「スーパーストライクTA-29ヤマモト・ヨーコ、ゲットレディ、GO!!」
「スーパースプリントTA-25ミドー・マドカ、行きまーす!!」
「スーパーストラグルTA-27ハクホーイン・アヤノ・エリザベス、いざ、参る!!」
「スーパーストームTA-23カガリヤ・モミジ、アクション!!」
つづく。
第四話|第六話
二次創作SS ヨーコ(6) [二次創作SS]
>YOHKO
「一発かますわよ!! エヴァブラック発射ぁ!!」
なんと言ってもこういうのは、出会いがしらが重要なのよ、今回は分断もしなくちゃいけないしね。数ミリセコンドのラグを挟んで、セイル上のエヴァブラックからプラズマスフィアが吐き出され、一直線にリヴァードールチームへと飛んでいく。流石に、この距離で当たってくれるほどザコだと思っちゃいないけど、リヴァードールチームは狙い通り散開してくれた。
「ヴェイパーシールド展開!! 御堂少尉、吶喊します!!」
「アンカースタンバイ、参ります!!」
「全機発進、いったれやースティクス!!」
みんなも心得たもので、何も言わなくても察してそれぞれ自分の相手に向かっていく。こういうあたり、阿吽の呼吸ってやつよね。
「アソビン教授、距離を詰めるわよ!!」
「了解」
あたしもRD-09の方へと向かう。艦に奇抜な所がなさそうなのは残念だけど、その分性能差に絶望することはなさそうだ。流石のあたしだって、ウェンディの代役で乗ったBT-91で、TA-29に乗ったフーリガーとやりあえって言われるのは勘弁して欲しいしね。……やるけど。
「なんにせよ、あたしを唸らせる腕であって欲しいわね」
アソビン教授は何も答えない。……最近、ちょっとは人間味が出てきたから、もしかしたら呆れてたりして。
「エヴァブラック再充填完了、主インパルス砲1番から4番スタンバイ完了、RD-09有効射程圏内です」
そうこうしている間に、アタシの方は攻撃の準備が整う。まどかたちそれぞれとの距離も十分だろう、一気にスティックを返して、突っ込んでいく。
「OK、誰にケンカ売ったか教えてあげるわ!!」
>SYSOP
「抜かないのですか?」
お互いに重力アンカーをだして、がっぷりと組み合う。翼と幾度かはこういう形で戦ったこともあるが、それは二人が徒手空拳を旨とする格闘家であるから。剣術戦艦を操る剣客が抜かないというのは、どう考えても不自然だった。
「今はね。お披露目だし」
「……余裕ですね」
「まぁ、私も派手好みのところあるし、アイツが自慢したいのはわかるから」
梓が言っているのはおそらく、RD-0シリーズのデザイナーのことだろう。ということは、梓の剣はそりゃーもう画期的なのだろうが、同時に綾乃はローソンの同類なのだろうなと思った。
「それに、きっかけを待ってただけだしね?」
次の瞬間、梓は組合を切り逆噴射をかけて距離を取ろうとした。予想外のことに、綾乃は一瞬反応が遅れ二隻の距離が離れかける。
「お師匠様、インパルス砲を!!」
RD-07に装備されている剣と思しきアンカーは、船体中央部に四基“重力アンカーとは別に”搭載されている。だから綾乃は組み合ったままで剣を抜いてくると読んでいたため、虚を突かれてしまった形だ。せめて牽制にとインパルス砲を撃ちこんだそのとき。
「ソードアンカー1番射出!!」
右舷上部のアンカーが正面へ向けて射出される。巨大な先端部をもつそれが、TA-27の放ったプラズマスフィアと交差する。
「えっ!?」
RD-07へ向けて飛んでいたプラズマスフィアが、突然、逆にTA-27の方へ向かってきたのである。
「どうなってるの、ローソン!?」
エスタナトレーヒのブリッジでリオン提督が叫ぶ。インパルス砲は断じて誘導弾ではない、一度発射されたらまっすぐ飛ぶだけのはずである。
「待ってください!!」
ローソンは思い当たる節がないわけではないようだ、あわてて別の観測装置からのデータを呼び出して、検討を始める。その様子を、ブリッジ要員全員が固唾をのんで見守る。ほどなく結論が出た様子のローソンは、向き直って話し始めた。
「これは……」
「……磁場?」
今の現象が不可思議なのは、RD-0シリーズの開発者、ライル・ランカスターのいるパドック艦・リヴァードールでも同じようで、指揮官である時桐和葉にランカスター本人が説明していた。
「そうです、時桐提督。プラズマには磁場から抜け出しにくいという性質があります。ですからアンカーの周囲に磁場を展開してプラズマを固定、剣として使うのがRD-07のソードアンカーと。さらに、磁場の展開範囲を広げれば、今のように盾として使うこともできるわけなんです!!」
「ランカスター、気持ちはわかるけど落ち着いてね?」
「すみません。いや、ついうれしくて」
興奮冷めやらぬ様子のランカスターも、和葉の言葉で表面上は落ち着いて見せる。しかし、瞳は相変わらず輝いたまま、RD-0シリーズが戦う姿の映るコンソールを見つめていた。
「はぁ、他の装備もお披露目の度にこうなのかな……」
「それじゃ、RD-07にインパルス砲は効かないということ?」
「同じものが四基もありますし、綾乃くんの話だとプレイヤーも剣客? として優秀みたいですから望み薄ですかねえ。インパルス砲以外の手段でアンカーを破壊できれば別ですが……」
至極当然の話ではあるのだが、射程と火力を兼ね備えた兵装というと、インパルス砲しかないのが実情である。仮にあったとしても、RD-07と戦うことはこれが最初で最後なわけで、今積んでいないのなら意味がない。
「一基だけなら、重力アンカーで押さえ込んで次元転換魚雷で済むが……、そうは問屋がおろさんか」
物静かな副官、マーチン・クライフが口を開く。実際、生身なら綾乃も認める腕というあたりが一番のネックだった。
「まぁ、もともとインパルス砲に頼らない制圧能力がTA-27のコンセプトです。綾乃くんを信じるしかないでしょう」
「そうね……」
「そういうことなら、こちらが撃たなければ済む話です」
今度は、仕掛けるべく綾乃はRD-07へ突っ込むが、梓は引いて有利な間合を保つ。
「プラズマ励起開始、フィールド収束、プラズマソード形成!!」
ソードアンカーの先端部分が解放され、インパルス砲の発振部が露出するとプラズマが放出され、光の剣が形成される。その姿は剣術戦艦を名乗るのにふさわしいものだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今度は、梓がTA-27へと斬りかかる。梓の剣は、スピード重視の三奈薙流という流派らしいが、RD-07もそれを活かしきれる瞬発力をもっている。鋭い斬撃と艦自体の身のこなしに、インパルス砲という牽制手段を失った綾乃は組み切れない。
「くっ」
このまま、押し続けられるようなことになると、どうしても間合の差で不利は続く。自身の間合に持ち込むには、TA-27のカタログスペック以上のスピードで飛び込むしかない。
「お師匠様、推力に使える位置の爆発ペレットをすべて使って飛び込みます、それから左舷前方2番と4番アンカーを回収、指示するタイミングで再射出後出力を全開でお願いします」
「了解」
サポートAIのお師匠様に指示を出すと、回避に専念しつつタイミングを待つ。狙うのは梓の突き。強烈な飛込みを伴うそれは必殺の一撃ではあるのだが、その分隙が大きい。さらに、両者が交差することで相対速度を飛躍的にあげることができる。そして、程なくそのタイミングはやってきた。
「これでっ!!」
RD-07に一瞬遅れてソードアンカーが繰り出される。太刀筋を見切られにくくするフェイントだが、その程度に引っかかる綾乃でもない。瞬時にスティックを操作して紙一重の軌道で飛び込む。
「今です!!」
綾乃の指示で後方に存在する爆発ペレットのすべてが一気に炸裂する。こんな使い方をすれば、多少船体にダメージを与えてしまうかもしれないが、そんなことに構っている場合ではない。さらにそこでRD-07をとらえるべく重力アンカーを射出して、RD-07を捕える。このまま、2番と4番アンカーを軸に回頭して1番、3番アンカーで前後からRD-07を押さえるつもりだったのだが、梓はそこで予想外の動きをした。
「当然、そう来るよね」
普通なら、重力アンカーによる呪縛から逃れようと離脱を図るものだが、梓は逆にそのまま突っ込み綾乃の思惑を利用して、TA-27の後ろを取っていた。
「くっ、5番から8番アンカー射出!!」
RD-07をはじき出すべく、重力アンカーを斥力場モードにして壁を作ろうとしたのだが。
「遅い!!」
斬!!
RD-07のソードアンカーが大上段から振り下ろされる。次の瞬間に綾乃が見たのは、コクピットを覆い尽くす真っ赤なアラートだった。
「やっぱり強いですね……、梓さん」
アラートが消えると、綾乃は梓に声をかけた。
「いやいや、RD-07は綾乃先輩を封じることだけを考えて作られてるようなものだから」
「それでも、勝ちは勝ちですよ。私たちはいつなんどき、どんな相手でも戦わないといけないときがあるんですから」
……ちょっと、現代日本でそんな状況が早々あるとは思えないが、まぁ綾乃らしいと言えば綾乃らしい。
「では、私は離脱しておきます。もうこっちでは無理でしょうけど、また手合せとか稽古とかしましょう」
そう言うと、綾乃はTA-27を離脱させ、梓はチームメイトの加勢に向かっていった。
つづく。
第五話|第七話
「一発かますわよ!! エヴァブラック発射ぁ!!」
なんと言ってもこういうのは、出会いがしらが重要なのよ、今回は分断もしなくちゃいけないしね。数ミリセコンドのラグを挟んで、セイル上のエヴァブラックからプラズマスフィアが吐き出され、一直線にリヴァードールチームへと飛んでいく。流石に、この距離で当たってくれるほどザコだと思っちゃいないけど、リヴァードールチームは狙い通り散開してくれた。
「ヴェイパーシールド展開!! 御堂少尉、吶喊します!!」
「アンカースタンバイ、参ります!!」
「全機発進、いったれやースティクス!!」
みんなも心得たもので、何も言わなくても察してそれぞれ自分の相手に向かっていく。こういうあたり、阿吽の呼吸ってやつよね。
「アソビン教授、距離を詰めるわよ!!」
「了解」
あたしもRD-09の方へと向かう。艦に奇抜な所がなさそうなのは残念だけど、その分性能差に絶望することはなさそうだ。流石のあたしだって、ウェンディの代役で乗ったBT-91で、TA-29に乗ったフーリガーとやりあえって言われるのは勘弁して欲しいしね。……やるけど。
「なんにせよ、あたしを唸らせる腕であって欲しいわね」
アソビン教授は何も答えない。……最近、ちょっとは人間味が出てきたから、もしかしたら呆れてたりして。
「エヴァブラック再充填完了、主インパルス砲1番から4番スタンバイ完了、RD-09有効射程圏内です」
そうこうしている間に、アタシの方は攻撃の準備が整う。まどかたちそれぞれとの距離も十分だろう、一気にスティックを返して、突っ込んでいく。
「OK、誰にケンカ売ったか教えてあげるわ!!」
>SYSOP
「抜かないのですか?」
お互いに重力アンカーをだして、がっぷりと組み合う。翼と幾度かはこういう形で戦ったこともあるが、それは二人が徒手空拳を旨とする格闘家であるから。剣術戦艦を操る剣客が抜かないというのは、どう考えても不自然だった。
「今はね。お披露目だし」
「……余裕ですね」
「まぁ、私も派手好みのところあるし、アイツが自慢したいのはわかるから」
梓が言っているのはおそらく、RD-0シリーズのデザイナーのことだろう。ということは、梓の剣はそりゃーもう画期的なのだろうが、同時に綾乃はローソンの同類なのだろうなと思った。
「それに、きっかけを待ってただけだしね?」
次の瞬間、梓は組合を切り逆噴射をかけて距離を取ろうとした。予想外のことに、綾乃は一瞬反応が遅れ二隻の距離が離れかける。
「お師匠様、インパルス砲を!!」
RD-07に装備されている剣と思しきアンカーは、船体中央部に四基“重力アンカーとは別に”搭載されている。だから綾乃は組み合ったままで剣を抜いてくると読んでいたため、虚を突かれてしまった形だ。せめて牽制にとインパルス砲を撃ちこんだそのとき。
「ソードアンカー1番射出!!」
右舷上部のアンカーが正面へ向けて射出される。巨大な先端部をもつそれが、TA-27の放ったプラズマスフィアと交差する。
「えっ!?」
RD-07へ向けて飛んでいたプラズマスフィアが、突然、逆にTA-27の方へ向かってきたのである。
「どうなってるの、ローソン!?」
エスタナトレーヒのブリッジでリオン提督が叫ぶ。インパルス砲は断じて誘導弾ではない、一度発射されたらまっすぐ飛ぶだけのはずである。
「待ってください!!」
ローソンは思い当たる節がないわけではないようだ、あわてて別の観測装置からのデータを呼び出して、検討を始める。その様子を、ブリッジ要員全員が固唾をのんで見守る。ほどなく結論が出た様子のローソンは、向き直って話し始めた。
「これは……」
「……磁場?」
今の現象が不可思議なのは、RD-0シリーズの開発者、ライル・ランカスターのいるパドック艦・リヴァードールでも同じようで、指揮官である時桐和葉にランカスター本人が説明していた。
「そうです、時桐提督。プラズマには磁場から抜け出しにくいという性質があります。ですからアンカーの周囲に磁場を展開してプラズマを固定、剣として使うのがRD-07のソードアンカーと。さらに、磁場の展開範囲を広げれば、今のように盾として使うこともできるわけなんです!!」
「ランカスター、気持ちはわかるけど落ち着いてね?」
「すみません。いや、ついうれしくて」
興奮冷めやらぬ様子のランカスターも、和葉の言葉で表面上は落ち着いて見せる。しかし、瞳は相変わらず輝いたまま、RD-0シリーズが戦う姿の映るコンソールを見つめていた。
「はぁ、他の装備もお披露目の度にこうなのかな……」
「それじゃ、RD-07にインパルス砲は効かないということ?」
「同じものが四基もありますし、綾乃くんの話だとプレイヤーも剣客? として優秀みたいですから望み薄ですかねえ。インパルス砲以外の手段でアンカーを破壊できれば別ですが……」
至極当然の話ではあるのだが、射程と火力を兼ね備えた兵装というと、インパルス砲しかないのが実情である。仮にあったとしても、RD-07と戦うことはこれが最初で最後なわけで、今積んでいないのなら意味がない。
「一基だけなら、重力アンカーで押さえ込んで次元転換魚雷で済むが……、そうは問屋がおろさんか」
物静かな副官、マーチン・クライフが口を開く。実際、生身なら綾乃も認める腕というあたりが一番のネックだった。
「まぁ、もともとインパルス砲に頼らない制圧能力がTA-27のコンセプトです。綾乃くんを信じるしかないでしょう」
「そうね……」
「そういうことなら、こちらが撃たなければ済む話です」
今度は、仕掛けるべく綾乃はRD-07へ突っ込むが、梓は引いて有利な間合を保つ。
「プラズマ励起開始、フィールド収束、プラズマソード形成!!」
ソードアンカーの先端部分が解放され、インパルス砲の発振部が露出するとプラズマが放出され、光の剣が形成される。その姿は剣術戦艦を名乗るのにふさわしいものだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今度は、梓がTA-27へと斬りかかる。梓の剣は、スピード重視の三奈薙流という流派らしいが、RD-07もそれを活かしきれる瞬発力をもっている。鋭い斬撃と艦自体の身のこなしに、インパルス砲という牽制手段を失った綾乃は組み切れない。
「くっ」
このまま、押し続けられるようなことになると、どうしても間合の差で不利は続く。自身の間合に持ち込むには、TA-27のカタログスペック以上のスピードで飛び込むしかない。
「お師匠様、推力に使える位置の爆発ペレットをすべて使って飛び込みます、それから左舷前方2番と4番アンカーを回収、指示するタイミングで再射出後出力を全開でお願いします」
「了解」
サポートAIのお師匠様に指示を出すと、回避に専念しつつタイミングを待つ。狙うのは梓の突き。強烈な飛込みを伴うそれは必殺の一撃ではあるのだが、その分隙が大きい。さらに、両者が交差することで相対速度を飛躍的にあげることができる。そして、程なくそのタイミングはやってきた。
「これでっ!!」
RD-07に一瞬遅れてソードアンカーが繰り出される。太刀筋を見切られにくくするフェイントだが、その程度に引っかかる綾乃でもない。瞬時にスティックを操作して紙一重の軌道で飛び込む。
「今です!!」
綾乃の指示で後方に存在する爆発ペレットのすべてが一気に炸裂する。こんな使い方をすれば、多少船体にダメージを与えてしまうかもしれないが、そんなことに構っている場合ではない。さらにそこでRD-07をとらえるべく重力アンカーを射出して、RD-07を捕える。このまま、2番と4番アンカーを軸に回頭して1番、3番アンカーで前後からRD-07を押さえるつもりだったのだが、梓はそこで予想外の動きをした。
「当然、そう来るよね」
普通なら、重力アンカーによる呪縛から逃れようと離脱を図るものだが、梓は逆にそのまま突っ込み綾乃の思惑を利用して、TA-27の後ろを取っていた。
「くっ、5番から8番アンカー射出!!」
RD-07をはじき出すべく、重力アンカーを斥力場モードにして壁を作ろうとしたのだが。
「遅い!!」
斬!!
RD-07のソードアンカーが大上段から振り下ろされる。次の瞬間に綾乃が見たのは、コクピットを覆い尽くす真っ赤なアラートだった。
「やっぱり強いですね……、梓さん」
アラートが消えると、綾乃は梓に声をかけた。
「いやいや、RD-07は綾乃先輩を封じることだけを考えて作られてるようなものだから」
「それでも、勝ちは勝ちですよ。私たちはいつなんどき、どんな相手でも戦わないといけないときがあるんですから」
……ちょっと、現代日本でそんな状況が早々あるとは思えないが、まぁ綾乃らしいと言えば綾乃らしい。
「では、私は離脱しておきます。もうこっちでは無理でしょうけど、また手合せとか稽古とかしましょう」
そう言うと、綾乃はTA-27を離脱させ、梓はチームメイトの加勢に向かっていった。
つづく。
第五話|第七話
二次創作SS ヨーコ(7) [二次創作SS]
>SYSOP
「攻撃が来る場所しか展開してないとはいえ、なんであんなにヴェイパーシールドが持つのよ!?」
ヴェイパーシールドは、内側から観測も攻撃も加納で、全天を覆うことのできるバリアではあるが、排熱等の問題で長時間の使用はできない。しかし、RD-05は攻撃が来ないタイミングに自ら落として節約している以外は、常時使用していた。
「おそらく、ヴェイパーシールドジェネレーターを船体各部に分散して設置し、ローテーションで稼働させているものと思われます」
「なによそれ、こっちはあっという間にダウンしちゃうっていうのに!! このままじゃジリ貧じゃない」
TA-25のインパルス砲は一発で停止させるほどの火力はないし、高速艦同士の高機動射撃戦で連続で何発も叩き込むというのも望み薄だ。おまけに、TA-25唯一の切り札バレルロールも正攻法では競り負けるのは自分から言ったことだ。先ほどは距離を詰めるために使ったが、あれは体当たりまでする気がなかったからだ。
「代わってあげよーか?」
絶妙なタイミングで、離れて戦っている洋子から通信が入る。
「うるさいわね!!」
流石にまだ、打つ手が無くなったわけではない。茶化されるのは心外と言うものだ。
「コーチ、真後ろからバレルロールなら何とかならない!?」
「相対速度が小さくなるため、大きく弾かれるようなことはありませんが、ヴェイパーシールドを停止させることが可能かどうかは現状では判断できません」
やはり、RD-05がヴェイパーシールドをいくつに分割しているのかはわからないが、一度にできる限り多く使わせなければ、バレルロールを使おうがどうしようが、攻撃を通すことは出来そうになかった。
「コーチ、次元転換魚雷をばらまいて機雷代わりにするわ。船体下部の発射管から射出して」
「了解」
かなりの速度で飛びながらなので、広くばらまくことになってしまうが、RD-05の船体の広範囲に攻撃することが目的なのだから、むしろ好都合と言っていいだろう。
「全弾散布完了」
「それじゃ、追い込むわよ!! コーチ、ブーストを!!」
「ヴェイパーシールドを分割して、個別に展開ですか……。まぁ、間違いなく有効ですけど地味ですね」
「そんな派手だったりセンセーショナルだったりは、エスタナトレーヒのカーティス・ローソンに任せておけばいいんです。独創性で、あの人に勝てる同業者はそうはいませんよ」
ランカスターは自嘲気味に言ってみせるが、なにか含みのようなものを感じる。まぁ、実際ランカスターは地道にやっていくタイプではあるが、和葉には独創性でもそこまでカーティス・ローソンに劣っているとは思えなかった。
「板野サーカスは出来なくても、ハイマットフルバーストなら!!」
まどかは、高速戦闘の経験はそんなに多くない。バラマンディは高速艦だが、それを自由に振り回せるプレイヤーに巡り合ったことはないし、ならエース級のプレイヤーはと言っても、フーリガーは洋子に突っかかっていくし、エリュトロンも紅葉とじゃれあってることがほとんどで、まどか自身もルブルムの相手で忙しい、必然的に機会がなかったわけだ。
「RD-05、衝突コース上に乗っています」
「よしっ、このまま追撃するわ!!」
ヴェイパーシールドさえ抜ければ、後ろを取っているまどかの方が圧倒的に有利である。いつもと違い、ゆっくりとしか縮まらない距離に焦れながらも、訪れる衝突の瞬間を集中して見極めようとしていた時だった。
「TA-25、予測通り追撃を開始しました」
RD-05のサポートAI、『虎哲』がそう報告してくる。RD-05の火力ならば、TA-25のヴェイパーシールドをダウンさせ撃ち落とすことは不可能ではないのだが、RD-05の速力を初めて体感する可奈にとって、まだまどかを撃ち落すことは容易ではないので、こうしてまどかの策を逆に利用することにしたのである。
「うん、了解。それじゃこのまま進路維持、両舷スラスタースタンバイ、超信地旋回!!」
まどかの思惑通り動いていたRD-05は、突然艦の向きだけをくるりと変えるとインパルス砲を発射した。
「ヴェイパーシールドを!!」
避ければ、タイミングを逃すと判断したまどかはとっさに防御するが、当然その分稼働時間は減る。残り時間は、もう一度当たれば諦めて離脱するしかないところまで来ていた。
「くっ!!!!」
進路を変えさせないための牽制をやめ、次を撃たせないために直撃させる。しかし、TA-25から放たれたプラズマスフィアは、RD-05の目前でむなしく停止した。
「RD-05にも積んでいるの!!?」
「落ち着いてください提督、便利な楯なんです、当然他の艦にも装備されていると考えるべきです」
流石に、一度見たものであるためかローソンは落ち着いている。しかし、分割式のヴェイパーシールドという防御専用装備を積んでいるのに、さらに別のものを搭載する意味が分からなかった。
「まぁ、バレルロールのような攻撃を行うなら、敵艦へのアプローチ前にヴェイパーシールドへの直撃は出来るだけ避けたいか……」
そう一人ごちるローソンに、クライフが口をはさむ。
「……いや、あれは攻撃のためだろう」
「ん? RD-07のように振り回せるわけでもないんだ、あまり攻撃に使えるとは……。……いや強襲戦艦、……そうか!!」
ローソンも気づいたようでお互いに視線を合わせると、クライフは大きくうなずいた。
「ああ、衝角だ」
受け止められたプラズマスフィアが収束し、艦首のヴェイパーシールドの先にプラズマ衝角を形成する。まずいと思ったその時、RD-05からの通信ウィンドウが開き、勝利を確信したプレイヤー杉崎可奈の声が聞こえた。
「逃がさない!! Fダクト全開放、フルブースト!!!」
まどかも、なんとか回避を試みるが時既に遅く、RD-05は急制動をかけると次の瞬間には凄まじい加速でTA-25に肉薄していた。
「いっけえ!! ブルースライダー!!!」
思わず目を瞑ったまどかが恐る恐る瞼を開くと、TA-25をかすめて飛び去ったRD-05と撃沈を示すアラートが映し出されていた。
「はぁ、何よあの加速性能。あんなの避けれるわけないじゃない」
大回りして戻ってきたRD-05の可奈にまどかは話しかけた。
「あれは、この艦の各部姿勢制御用反動推進システムを、船体内部を貫くFダクトを通してすべて後方へ集めることで、爆発的な加速を得ることができるんですよ」
「Fダクト?」
「はい。初音さんが名付けたんですけどね、なんでもF1マシンの中に空気を流して、直線のスピードを速くするんだそうです」
そういえば、ちょっと前に洋子がなんか熱く語ってたような気もする。
「そう……。そっちは分かったけどもう一つ。ブルースライダーの方は?」
「えっと、確か洋子先輩が好きなゲームにそんな技があるとか?」
そういえば、それも語っていたような気がしなくもない。
「あんな猫娘なんかどうでもいいから。……そうね、TRANS-AMに……」
「特攻してるわけじゃないんですけど……。それに、私の艦は青系で結構あってると思うから、このままでいいんです」
まどかは最終決戦で大量に出てきた特攻兵器を指して言ったわけではないが、まぁ、その名前で体当たりするとなれば、そっちを連想するのもわからない話ではないので、苦笑いして流すことにした。
「流石にそろそろどかないと邪魔かしらね」
「私もそろそろ行かないと。それじゃ先輩、またあとで会いましょう」
「ええ」
通信を切って、離れていくRD-05を見つめるまどかの口から、珍しくため息が漏れた。
「はぁ。やっぱり、乗換やシステムの封印解除は必要よねえ……」
つづく。
第六話
「攻撃が来る場所しか展開してないとはいえ、なんであんなにヴェイパーシールドが持つのよ!?」
ヴェイパーシールドは、内側から観測も攻撃も加納で、全天を覆うことのできるバリアではあるが、排熱等の問題で長時間の使用はできない。しかし、RD-05は攻撃が来ないタイミングに自ら落として節約している以外は、常時使用していた。
「おそらく、ヴェイパーシールドジェネレーターを船体各部に分散して設置し、ローテーションで稼働させているものと思われます」
「なによそれ、こっちはあっという間にダウンしちゃうっていうのに!! このままじゃジリ貧じゃない」
TA-25のインパルス砲は一発で停止させるほどの火力はないし、高速艦同士の高機動射撃戦で連続で何発も叩き込むというのも望み薄だ。おまけに、TA-25唯一の切り札バレルロールも正攻法では競り負けるのは自分から言ったことだ。先ほどは距離を詰めるために使ったが、あれは体当たりまでする気がなかったからだ。
「代わってあげよーか?」
絶妙なタイミングで、離れて戦っている洋子から通信が入る。
「うるさいわね!!」
流石にまだ、打つ手が無くなったわけではない。茶化されるのは心外と言うものだ。
「コーチ、真後ろからバレルロールなら何とかならない!?」
「相対速度が小さくなるため、大きく弾かれるようなことはありませんが、ヴェイパーシールドを停止させることが可能かどうかは現状では判断できません」
やはり、RD-05がヴェイパーシールドをいくつに分割しているのかはわからないが、一度にできる限り多く使わせなければ、バレルロールを使おうがどうしようが、攻撃を通すことは出来そうになかった。
「コーチ、次元転換魚雷をばらまいて機雷代わりにするわ。船体下部の発射管から射出して」
「了解」
かなりの速度で飛びながらなので、広くばらまくことになってしまうが、RD-05の船体の広範囲に攻撃することが目的なのだから、むしろ好都合と言っていいだろう。
「全弾散布完了」
「それじゃ、追い込むわよ!! コーチ、ブーストを!!」
「ヴェイパーシールドを分割して、個別に展開ですか……。まぁ、間違いなく有効ですけど地味ですね」
「そんな派手だったりセンセーショナルだったりは、エスタナトレーヒのカーティス・ローソンに任せておけばいいんです。独創性で、あの人に勝てる同業者はそうはいませんよ」
ランカスターは自嘲気味に言ってみせるが、なにか含みのようなものを感じる。まぁ、実際ランカスターは地道にやっていくタイプではあるが、和葉には独創性でもそこまでカーティス・ローソンに劣っているとは思えなかった。
「板野サーカスは出来なくても、ハイマットフルバーストなら!!」
まどかは、高速戦闘の経験はそんなに多くない。バラマンディは高速艦だが、それを自由に振り回せるプレイヤーに巡り合ったことはないし、ならエース級のプレイヤーはと言っても、フーリガーは洋子に突っかかっていくし、エリュトロンも紅葉とじゃれあってることがほとんどで、まどか自身もルブルムの相手で忙しい、必然的に機会がなかったわけだ。
「RD-05、衝突コース上に乗っています」
「よしっ、このまま追撃するわ!!」
ヴェイパーシールドさえ抜ければ、後ろを取っているまどかの方が圧倒的に有利である。いつもと違い、ゆっくりとしか縮まらない距離に焦れながらも、訪れる衝突の瞬間を集中して見極めようとしていた時だった。
「TA-25、予測通り追撃を開始しました」
RD-05のサポートAI、『虎哲』がそう報告してくる。RD-05の火力ならば、TA-25のヴェイパーシールドをダウンさせ撃ち落とすことは不可能ではないのだが、RD-05の速力を初めて体感する可奈にとって、まだまどかを撃ち落すことは容易ではないので、こうしてまどかの策を逆に利用することにしたのである。
「うん、了解。それじゃこのまま進路維持、両舷スラスタースタンバイ、超信地旋回!!」
まどかの思惑通り動いていたRD-05は、突然艦の向きだけをくるりと変えるとインパルス砲を発射した。
「ヴェイパーシールドを!!」
避ければ、タイミングを逃すと判断したまどかはとっさに防御するが、当然その分稼働時間は減る。残り時間は、もう一度当たれば諦めて離脱するしかないところまで来ていた。
「くっ!!!!」
進路を変えさせないための牽制をやめ、次を撃たせないために直撃させる。しかし、TA-25から放たれたプラズマスフィアは、RD-05の目前でむなしく停止した。
「RD-05にも積んでいるの!!?」
「落ち着いてください提督、便利な楯なんです、当然他の艦にも装備されていると考えるべきです」
流石に、一度見たものであるためかローソンは落ち着いている。しかし、分割式のヴェイパーシールドという防御専用装備を積んでいるのに、さらに別のものを搭載する意味が分からなかった。
「まぁ、バレルロールのような攻撃を行うなら、敵艦へのアプローチ前にヴェイパーシールドへの直撃は出来るだけ避けたいか……」
そう一人ごちるローソンに、クライフが口をはさむ。
「……いや、あれは攻撃のためだろう」
「ん? RD-07のように振り回せるわけでもないんだ、あまり攻撃に使えるとは……。……いや強襲戦艦、……そうか!!」
ローソンも気づいたようでお互いに視線を合わせると、クライフは大きくうなずいた。
「ああ、衝角だ」
受け止められたプラズマスフィアが収束し、艦首のヴェイパーシールドの先にプラズマ衝角を形成する。まずいと思ったその時、RD-05からの通信ウィンドウが開き、勝利を確信したプレイヤー杉崎可奈の声が聞こえた。
「逃がさない!! Fダクト全開放、フルブースト!!!」
まどかも、なんとか回避を試みるが時既に遅く、RD-05は急制動をかけると次の瞬間には凄まじい加速でTA-25に肉薄していた。
「いっけえ!! ブルースライダー!!!」
思わず目を瞑ったまどかが恐る恐る瞼を開くと、TA-25をかすめて飛び去ったRD-05と撃沈を示すアラートが映し出されていた。
「はぁ、何よあの加速性能。あんなの避けれるわけないじゃない」
大回りして戻ってきたRD-05の可奈にまどかは話しかけた。
「あれは、この艦の各部姿勢制御用反動推進システムを、船体内部を貫くFダクトを通してすべて後方へ集めることで、爆発的な加速を得ることができるんですよ」
「Fダクト?」
「はい。初音さんが名付けたんですけどね、なんでもF1マシンの中に空気を流して、直線のスピードを速くするんだそうです」
そういえば、ちょっと前に洋子がなんか熱く語ってたような気もする。
「そう……。そっちは分かったけどもう一つ。ブルースライダーの方は?」
「えっと、確か洋子先輩が好きなゲームにそんな技があるとか?」
そういえば、それも語っていたような気がしなくもない。
「あんな猫娘なんかどうでもいいから。……そうね、TRANS-AMに……」
「特攻してるわけじゃないんですけど……。それに、私の艦は青系で結構あってると思うから、このままでいいんです」
まどかは最終決戦で大量に出てきた特攻兵器を指して言ったわけではないが、まぁ、その名前で体当たりするとなれば、そっちを連想するのもわからない話ではないので、苦笑いして流すことにした。
「流石にそろそろどかないと邪魔かしらね」
「私もそろそろ行かないと。それじゃ先輩、またあとで会いましょう」
「ええ」
通信を切って、離れていくRD-05を見つめるまどかの口から、珍しくため息が漏れた。
「はぁ。やっぱり、乗換やシステムの封印解除は必要よねえ……」
つづく。
第六話