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星瞬きし空の下で 第二話 Cパート [星瞬きし空の下で]

「別に困りはしないけど、ただついてればいいっていうのは流石に、危機感足りないような」
 居間に移動した一同は、上からの通達の詳細に目を通す。意外にも監視を怠らないようにしさえすれば、特に行動制限はなし。それどころか、組合の一員としての行動も許可されるという。いくら忙しい状況である上、中央に戦力を集める分地方の守りは薄くなるとはいえ、状況を見れば怪しいといわざるを得ない相手にまで協力を求めるというのは聞いた事がない。拍子抜けしすぎて、桜は呆れ顔になっている。
「まぁ、俺と奏や君たち二人の両親がぬければこのあたりの戦力がかなり落ちるのは間違いないからな。ある程度仕方ないだろう」
「そうですよ、どこもかしこもこの状況なのは一緒ですし」
 実際、上に対して戦力の補充を求める声はあちこちからあがっているが、そんな余裕はどこにもないのが現状だ。桜たちもかなりハードな状況になることを覚悟していたので、思いがけず補充があったと思えば、それはそれで僥倖なのかもしれない。
「さて、揃ったところで誠也君にこれを渡しておこうか」
 そういって、隆之はスマートフォンを取り出す。
「いや、そんなそこまでしてもらうわけにはいきませんよ」
「気にしなくていいよ、上からの支給品だし、逆に持っててもらわないと困るものだから」
 桜たちも同じものを取り出してみせる。どうやら、本当にそうらしい。
「それに、今時これないとなにもできないでしょ」
 梓の言うとおり、多機能化の進んだ今、身分証や財布などもこれで管理されている。なしで暮らすのはほぼ無理である。これは更に組合員用にカスタマイズされているものだ。
「そうですか、それじゃ遠慮なく」
 誠也は受け取ると、さっそく一同とアドレスの交換を行う。これで今後支障はないだろう。
「さて、あとは3人の転入の手続きを済ませないとな。来月には出発しないといけないしな」
「すみません、お手数かけます」
 組合との関係で、組合員が動くにはいろいろ面倒な手続きが必要なのである。仕方ないことではあるのだが、流石に迷惑ばかりかけている気がした。
「いやいや、俺たちが出た後大変なのは君たちのほうだからな。このぐらいで気に病むことはないよ」
 申し訳なさそうな椿に隆之はそう笑いかけて、席を立つ。
「後のことは頼むよ、椿ちゃん」
 桜に頼むといわないところがなんともだが、まぁ椿が一番しっかりしているから仕方ないところだろうか。そういって居間を出ていったが、すぐに戻ってきて言った。
「ああそうそう、誠也君。今夜零時に、裏の谷下へ来てくれ」
「え、あ、はい」
「すまないな、頼む」
 誠也の返事にそう答えると、隆之は今度こそ居間を出て行った。


 つづく。
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