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星瞬きし空の下で 第四話 Eパート [星瞬きし空の下で]

「水よ!!」
 桜は構えた呪符から大量の水を作り出し、あたり一面を押し流す。その声に反応して、三人は濁流から逃れるべく木々へと跳びあがる。やはり、符術に関しては桜には遠く及ばない。そう思いながらも、あたり一面を水で覆うというこれだけの攻撃を行ってきたのだから、本人も全く濡れていないというわけには行かないだろう。梓は、雷の属性を持つ呪符取り出し、足元の水面に向かって放つ。
「これで、合格もらい!!」
 水面を広がっていく電流が、追ってきた桜を捉えると思ったそのとき、桜の周りだけ何かに遮られるように素通りしてしまった。
「ええ!?」
 予想外の出来事に驚いて一瞬反応が遅れてしまった。桜は、梓のいる枝を、風を用いて切断してしまっていた。流石に、宙に浮いた状態の枝から跳ぶことはできない。梓は無様に落下した。
「はい、梓そこまでー」
 にっこり笑って言う桜。悔しそうな顔で見上げた梓の視界に一瞬、椿が見えた。どうやら梓が失敗すると踏んで、二人が闘っている隙を突こうとしたらしい。
「あ」
 背後を取った椿が、自分の得意とする炎で攻撃する。しかし、炎は桜を捉えられずまたしても遮られる。その一瞬の間に、桜も体勢を整え水を生み出して押し返す。剣での鍔迫り合いなら椿に分があるが、符術ではそうはいかない。本来ならば引くべきだろうが、椿は引かなかった。
「ここまでは計算のうち、今です!!」
 椿の背後の樹の上から、誠也が光をもって狙撃する。光速で迫る光に対する防御は本当に難しい。だから、威力がそこまで高くないことを鑑みて、多少の被弾には目をつぶり、動き回って狙いを定めさせないのがセオリーなのだが、この状況では桜は動けない。二人がもらったと思ったときに、倒れていたのは誠也のほうだった。
「もう一歩だね。なんか誠也も終わっちゃったし、こっちも終わらそうか」
「まだまだです、初手の大盤振る舞いが響いていつもより力がないですよ」
「そうだね、でもその代わり使える水は大量にあるんだよ」
 はっと、気付くがもう遅い。四方八方からの大量の水が椿に襲い掛かっていた。

「あー、痛てえ。なんで撃った俺が倒れてんだよ……」
「三人ともに言えるけど、符術で生み出したモノは更に操作しない限り物理法則に則って作用する。でも、普通には作り出せないようなものも作り出せるのが、符術なんだよ?」
 頭では分かっているが、実際の戦闘の場面ではどちらかの考え方に囚われてしまうことが多い。想像力と知識を常に織り交ぜて闘うのは、かなり難しい。
「誠也の光を反射して椿の炎を防御したのは、屈折率100%の細かい氷で全身守ってたから。梓の雷を防御したのは、私の近くだけ水を純水にしていたからだよ」
 流石に、符術が専門の母・奏に鍛えられただけはある。いつまでも、負けてばかりなのは問題なのだが、正直三人には勝てる気がしなかった。


 つづく。
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