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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Eパート [星瞬きし宇宙の海で]

「すみませんが、こちらでしばらく待機をお願いします!!」
 IDのチェックなどを受けトラムを降り、案内に従って施設内を5分ほど歩くと、見渡す先が水平線の桟橋へ出た。
「こんなところで待たされるってことは、迎えはまだってことか」
「そうだね」
 せめて近くにはいないかと、海の方を探してみるが、それらしい影は見えない。尤も、今の時代、艦が海面にいるものとは限らないわけだが。
「時間分かってるんだから待たせるなよなー」
 桜は、また愚痴かという表情で、俺から視線を逸らした。
「意外と同期多いね」
 確かに、知らない顔は思ったほど多くない。もちろん、いないと言う訳ではないが。
「だよなあ……。まぁ、あの辺は同期って言っていいのかわかんねえけど」
「誰のこと……って、ああ、あの子ね」
 俺の視線の先にいるのは、課程は別で戦術・戦略科を今年卒業した大塚初音。入隊で見れば同期と言うことになるが、士官学校に入学したのは俺たちよりも一年遅い一昨年度という、所謂飛び級生だ。しかも、そんな制度はないというのに、それで猶そうするしかないと言わしめたという話だから怖ろしい。
「でも、なんでここなんだろ?」
 確かにそれは思う。まぁ上には上の考えがあるんだろうが、それこそ最前線の第1艦隊や花形である第2艦隊でもいいはずだ。
「まぁなんかあるんだろうぜ?」
 急に会話に入ってきたのは、こちらは本当に同期の雨宮霜太……とその双子の妹時雨だった。
「お前らもか」
 そう言えば、IDチェックを受けたときにちらっと見えた名簿に名前があった気がしないでもない。
「おう、時雨共々これからもよろしくな」
「よろしく」
「こちらこそ」
 今まではライバル的な部分もあったが、これからは背中を預ける……と言うのは立場上来ないことを祈らないといけないところが何とも言えない。改めて挨拶をしたことで、そんなところに思い至ってしまった。またそこでループに陥る前に、話を進めることにする。
「他はいるのか?」
「いや、見てないな。まぁ転属組は分かんねえけど、機動兵器科で直は俺たちだけっぽい」
「そうか。ま、7艦隊だしな」
 ギリギリの人員がデフォルトなのだから、こんなものかもしれない。そんなことを考えながら、もう一度海の方を見ると、今度は水平線に船影を見て取ることが出来た。


 つづく。
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