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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Lパート [星瞬きし宇宙の海で]

「艦長を拝命しました、大塚初音です。正直に言って、私のような若輩がこの大任に着くことに皆さん不安があるとは思いますが、全員でまずはたどり着く、そのために力を貸してください。よろしくお願いします」
 噂に聞く大塚初音と言う人は、もっとこう自信家タイプだと聞いていたが、噂が当てにならないのか、それとも考えて抑えているのかは分からないが、ともかく意外な挨拶だった。まぁ、ここには他からの転属で、初音の噂なんて聞いたこともない人も居るだろうし、よく耳にしていた俺たちだって実際のところその指揮を見たことがあるわけじゃないから、全員に不安はあるはずだ。もし、ないとするなら美咲と雪原さんとそれともう一人いるらしい最初からの乗員、つまりは初音を選んだ側の人間だけ。だから、こうやって自分にまだないものを認めるのは信頼できると思う。
 そんなことを考えていると、初音を映していたウィンドウが消え、再びオペレーターの彼女のウィンドウが大きくなる。
「機動兵器隊の皆さん、艦載機管制を担当する谷澤春香です。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしく、……ってのはいいんだけど、この機体って」
「あ、そうですよね。気になりますよね」
 そういうと、またしても後ろを向いて今度は雪原さんを呼んだ。
「このほどロールアウトした新型機、AA-01バニティ・セイヴァーです。2番機以外は、基本的にトゥエルとほぼ同じ機動特性を維持しつつ、それぞれの実機・シミュレーターでの運用データを反映してありますから、そう違和感なく使えるはずです」
 まぁそう言われても、今は動かせる状態じゃないので俺や霜太、時雨の機体が変わらないと言われても何とも言えないのだが。
「え? 私は変わるんですか!?」
 変わると言われてしまった桜はどうすればいいのか。
「ええまぁ。……でも」
「でも?」
「本来やりたかったことが、出来るようになってるはずだから安心して。と言われて安心できるものじゃないですね、今シミュレーターモードを」
 そう言いながら雪原さんがコンソールを操作すると、俺の方もシミュレーターモードが起動した。すぐにいじくってみると、確かにそう変わらないようで、実機もこの感じなら問題なくやれそうではある。だが、このときはまだ、桜が言われた“本来やりたかったこと”が、俺にとってもそうだということをまだ知らなかった。


 つづく。
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