SSブログ

星瞬きし宇宙の海で 第一話 Tパート [星瞬きし宇宙の海で]

「霧原、動かすよ」
 外から声を掛けられて、俺は我に返った。射出開始予定高度まではまだだが、その間に武装を受け取ってカタパルトまでは機体を移動させなければならない。
「了解、ええっと……」
 そう言えば、名前を聞いていなかったことを思い出して、言葉に詰まる。まぁ察してくれたようなのでよかったが。
「北崎深耶。一応、機動兵器班の班長を仰せつかってます。ま、好きに呼んで」
「了解」
 あまり、長々話している場合でもないとは向こうも思っていたのだろう、俺が答えるとすぐに機体がケージごと移動を始め、カタパルトへ続く狭い通路へ進む。一旦止まって、武装が接続されると、もう一度前進してエアロックをぬけてカタパルトへと至る。
「春香、状況は」
「敵本隊が、主砲でこちらへの攻撃態勢に入りつつあります」
 まぁ隊列を組んでいるから、全部が全部攻撃してこれるわけではないだろうが、多勢に無勢、一斉砲撃をくらえばひとたまりもない。引きつけるとは言ったものの状況は良くないかと考えていると、艦長から割り込みがかかった。
「速力の高い白樺機で敵艦隊中枢を撹乱します。一緒に行くのは厳しいですけど、霧原さんも全速で突入フォローに回ってください」
 重力波砲は同じく重力子を用いる歪曲場フィールドを展開した状態では使えない、正確には干渉し合って自らのフィールドジェネレーターにダメージを与えてしまうので、使うと攻撃のその先にまで無防備になってしまう。だから、至近距離まで寄れれば実質的に相手の攻撃を止めることができる、そしてそれをさせないためには機動兵器によるエアカバーが必要なのだ。
「了解」
 艦長が通信を切ると、春香がカウントダウンを始める。刻一刻と迫る、いきなりの初陣はやはり緊張する。まぁフィールドもあるから、敵艦の対空砲火程度なら流石にどうとでもなるが、相手の機動兵器が出てくれば、新兵のこちらとは練度も違うし数も違う。だが、同時に少し自身も感じる。先ほど受け取った武装の中に、琴希が言っていた“本来やりたかったこと”それを俺にもさせてくれる、そう示すものがあったから。
「射出30秒前、カタパルト、開放します」
 ゆっくりと正面の扉が開き、漆黒の宇宙が見え始めた。
「3、2、1、発進、どうぞ」
「霧原誠也、一番機、出ます!!」


 第一話・了
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。