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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Jパート [星瞬きし宇宙の海で]

 夜中に目が覚めた挙句、もう一度はなかなか寝付けなかった俺は、居住区から遠くない外の見える通路で、ぼんやりと外を眺めていた。夕霧は今、7艦隊司令部のあるアステロイド帯の外縁で、今回のテストでデータ取りの補助等諸々を行う予定で3番惑星宙域に随行していた多目的工廠艦、一条型の六番艦、六条と合流すべく待機していた。現在の超光速航法システムでは、多少の誤差は免れない。そのため同時転移を行う場合、転移先での激突といった事故を避けるために、ある程度離れた地点へ転移してそこから通常航行で合流する必要がある。今回は六条の誤差が大きかったために、こうして待つことになっていた。今回の場合、この待ち時間は体力回復という意味では有難かったが、この後の作戦行動に影響があるという意味では焦れる事態。そして。
「寝れないなら、悪い方だけだよなあ……」
 誰もいない通路で、そんなぼやいても当然誰も返してくれないが、注意が少し内向きでなく外に向いたことで、耳に足音が届いた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Kパート [星瞬きし宇宙の海で]

「霧原さん?」
「艦長……」
 足音の主は、艦長の初音だった。
「休んでなくていいんですか?」
「いや、目が覚めてから寝れなくて」
 カッコつけても仕方ないので、ありのままを伝える。すると。
「そうですか。でもちゃんと休んでくださいね? 大変なことをさせてしまいましたし……」
 そう言って、心配げに首をかしげる。
「ありがとう」
 何気ないやり取り、その上大して知っているわけでもない相手だが、その仕草や口調に、なんとなく違和感を覚えた。
「艦長はどうして?」
「そんな、こんなときまで畏まらなくていいです。私の方が年下なんですし、普段は気軽に初葉と……」
 ちょっと待て。
「んん? 今なんて……」
「あ、え? 初音って……」
 明らかに音と言ったようには聞こえなかったし、艦長も何か動揺しているように見える。そして。
「と、とにかく、ちゃんと休んでくださいね!!」
 そういうと、走って元来た道を戻っていった……。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Lパート [星瞬きし宇宙の海で]

「うーん、どこをどうみてもただのアステロイド帯の風景だなあ」
「そうだね。3艦隊なら違うんだろうけど」
 第3艦隊も、第7艦隊と同じようにアステロイド帯に司令部を構えている。とはいえ、外縁部防衛艦隊である1艦隊が抜かれた場合の次として、早い段階で出撃してしまう第3艦隊と違い、反攻作戦用の戦力を温存するためにある第7艦隊は、あっさり見つけられては困る。そのため周辺の小惑星をくりぬいて作られたドックにきちんと格納されていて、外からはほぼなにも見えないようになっているというわけだ。だが今は。
「あ、見えてきたよ」
 桜が指差す方向にある、一際大きな小惑星。それが司令部の本体なのだが、その向こうに出撃準備中なのだろう、第7艦隊の主力と思われる艦艇が集結していた。尤も、パトロール部隊もいいところな5艦隊や6艦隊と比べれば多いが、他の4つとは比べるべくもない少数なのだが。
「3艦隊のバックアップとはいえ、心もとないよなあ……」
「そりゃね……」
 ここにある艦を全て動かせればと思わずにはいられない。そんな主力部隊を眺めているうちに、夕霧は誘導されたドックへと滑り込んでいった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Mパート [星瞬きし宇宙の海で]

「接舷、完了しました」
 ドック内のアームによって船体が固定され、続いてタラップが接続されることで接舷作業が完了する。それを聞いて、美咲はすぐに立ち上がって。
「艦長、すぐにここの作業班が来るから、彼らの指示に従って積荷の搬出作業をお願いします。それが終わる頃には呼べると思うけど、指示がなかったら待機してて。ごめんね、これがたぶん、最後だと思うから」
「わかりました」
 詳しくは分からないが、こういう隠し事があるような態度というか行動のことだろう。まぁ謝るようなことではないとは思うが。
 そんなことを考えている間に、美咲は準備を済ませて琴希とアリスに目配せする。琴希はすぐに頷いたが、アリスの方を見ると、露骨に嫌そうな顔をしていた。
「そんな顔してもダメです。いくよ」
 アリスは渋々、自分のシートを離れ、美咲たちの後を追って行った。


 つづく。

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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Nパート [星瞬きし宇宙の海で]

「とりあえず、今のところはあの二つにプロテクトをかけておけば、普通に使う分には問題なさそうね」
 美咲たちが訪れたのは、辺境の軍事施設において珍しくそれなりの格調を持った部屋。そこに陣取る20代後半の女性、第7艦隊司令・時桐和葉その人に、先んじてデータを見せるためだった。
「こんな事態になって、やりたかったことできなかったから、負荷は上げ目に変えたし大丈夫だと思う」
「そこが大丈夫ならスキルの方は問題ないメンバーを選んでるし問題なさそうね。エスナ、そっちは」
 声を掛けられたのは、ソファにドカッと腰かけたもう一人の女、第7艦隊の技術開発部を仕切るエスナ・シャイニール。ついでに言うとアリスの母親でもある。
「艦も機動兵器も見たところ不具合は出てないけど、時間があるなら機動兵器は一回下ろして見たいところかな。そういうわけにいかないけど」
「そりゃそうよね、そういうわけにいかないけど」
 不穏な空気自体はずっと感じていたが、こんなに早くに4艦隊が動くとも思っていなかったし、またこんなに早くに7艦隊が動かなければならないとも思っていなかった。その点に関しては、甘かったと認めなければならない。
「2艦隊司令にはああいわれたけどね、まぁ夕霧をどうしても出さなきゃいけないこともないし。どうする? 和葉」
 まぁ確かに、美咲の言うことにも一理はあるが。
「それもその通りだけど、ここに残せば何事もないかって言うとそれも分からないしね」
 ここが戦力の保管場所であることは軍人なら誰でも知っている。先の先制攻撃で戦力の接収を意図したと思われる行動をしていた以上、ここが狙われる可能性も十分ある。そうなったら出さざるを得ない。もちろん、それでも多少は時間が稼げはするだろうが。
「どっちにしろ手順を踏んで、万全を期してはもう無理か」
「じゃあ、行くしかないね」
 そういうことになるが、何も手を打たないと言う訳にもいかない。
「エスナ、申し訳ないけど琴璃も出してもらえる? 乗れるのあの子しかいないから」
「専門じゃないでしょうに……。琴希、美咲の手伝いは妹に引き継いで、整備班の指導を頼むわ」
「分かりました」
 これで、ハード面はなんとかなる。あとは。
「アリス、システム関連は?」
 連れてこられた割に、長いこと蚊帳の外だったところを急に振られてびくっとしたのをあわてて取り繕って。
「私と雲居雁に不可能も問題もない」
「そう」
 まぁ長いこと一緒にやってきた、アリスと夕霧型専用統括システムの雲居雁だ。本人たちがそういうなら問題はない。
「じゃあ、呼ぶわよ」
 そういうと管制室へ回線を開いて、夕霧の主要メンバーを呼ぶように伝えた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Oパート [星瞬きし宇宙の海で]

「なんで俺たちまでなんだ?」
 これからすぐに出撃になるとは言っても、新型艦に新型機、それなりのチェックやらなんやらあるだろうといつでも機を動かせるように待機していたのだが、お呼びは整備班からではなく、司令部からだった。まぁ俺たちは新人だから、普通なら一堂に集められて入隊の式をとなるだろうが、こんな時にそんな悠長なことはないだろうし、こんな時だろうとなんだろうとそういうけじめは大事というなら、全員が呼ばれるだろう。ブリッジクルーや機動兵器隊、整備班他の長だけというのは、ちょっと解せない。
「時間無いし、他は私たちから伝えろってことなんじゃない?」
 一番シンプルに考えればそうなのだろうが、それなら俺たち機動兵器隊も誰か一人でいいと思う。
「お前はアレだろ、美咲ちゃんのことだろ」
「あー、それかも。美咲ちゃん、時桐司令に聞けって言ってたし」
 確かにそれは聞きたいが、こんな大勢いる中で聞くのは気が引ける。俺も落ち着いて話が出来ないかもしれないから、百歩譲って桜にはいてもらった方がいいかもしれないが、出来れば三人で、だろう。
「もう、そんなこと考えたって分かるわけないんだから。ほら着くよ」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Pパート [星瞬きし宇宙の海で]

「大塚初音以下、入ります」
 司令の執務室に入ると、先に出た美咲と雪原さん、アリスは当然として、第7艦隊司令の時桐和葉ともう一人、見たことのない大柄な女性が、応接用だろうソファにふんぞり返っていた。
「こんな時じゃなければ、形式に則って進めるんだけど、そんな悠長なこと言ってられる状況じゃないのは、あなたたちが一番よくわかってるでしょうから、諸々省かせてもらうわね。ようこそ、第7艦隊司令部へ」
 まぁそう言われても流石にこちらがと言うわけには行かないから、早く本題に入って欲しい気持ちはあったが、さっと敬礼だけを返す。しかし、和葉はそれさえも要らないとでも言うように手招きをしてみせる。俺たちはあわてて、執務用の机の前に改めて整列した。
「じゃあ本題に入るけど、とりあえず、この数日間のあなたたちのデータは見せてもらいました。結論から言うと問題はないようだから、あなたたちはこのまま夕霧の運用について、第4艦隊司令部へ出撃してもらいます」
 まぁ機動兵器が完全に俺たちの専用のそれだったから、そうなるような気はしていたが、冷泉型がベースとは言っても新鋭艦には違いない。それを俺たちのような新米がこのままというのは、それでいいのかという気にはなった。
「言いたいことは分かるけど、あの艦はそのために新たに集めたあなたたち以外に運用させようとすると、第7艦隊の配置を全再編レベルで動かす必要があるのよ」
「ど、どういうことですか……」
 機動兵器だろうが艦だろうが、機種転換に時間が居るのは確かとはいえ、そんなのどう考えたって普通ではない。
「それだけあの艦は特殊で、あなたたちも特別なのよ」
 そう言ったのは、いつの間にか立ち上がって隣にいた、ソファの女性だった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第二話 Qパート [星瞬きし宇宙の海で]

「特別って……」
 そう言われても全くそんな気はしない。まぁ俺たち機動兵器隊は、剣戟戦闘の俺を筆頭に普通じゃないのは集まっているかもしれないが、それはあんまりいい意味な気はしない。整備する人間なんかに言わせたら、面倒なだけだろう。良い意味で特別と言って差し支えなさそうなのは、艦長ぐらいしか思いあたらない。
「まぁ百聞は一見に如かず」
 司令が目を閉じると、なにか少し場の空気が変わったような気がした。それに気圧された感じで、身構えたそのとき、司令との間、机の上の何もない空間が突如として。

 燃えた。


 第二話・了
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星海座談会 Re:2 [星瞬きし宇宙の海で]

桜  というわけで、第二話終了です。
誠也 おつかれ。去年もそうだったと言えばそうなんだけど、回数合わせるの結構難しいな。
桜  そうだねえ……。
初葉 ここからの説明部分を入れるとオーバー、入れないと短い、でしたから。
美咲 まぁでも、そうやったら入れない方選ぶのは見えてたよね。
誠也 だよなあ……。
桜  そして更に!! 来年は22戦化されるかもしれないので、減るかもしれません!!?
誠也 一回が長くなればいいけどなあ……。

桜  さて、今回からはいつも通りということなんだけど……。
初葉 何か問題が?
桜  ゲストを呼ぶにも、今の段階だと無難な方が居ません!!
美咲 北崎さん、岩井さんは?
桜  あの二人は、正直、前作とそんな変わんないんで……。
誠也 まぁなあ……、むしろ出番減る系だし。
桜  というわけで、本編で要らない情報、チョイ役系メカの解説でもしようかと思います!!
美咲 あんまり説明な行を入れたくないしねえ。

桜  今回は、多目的工廠艦の一条型です。
誠也 本編には6番艦の六条が登場してたな。
桜  はい。反攻作戦前に7艦隊司令部に集結した残存部隊の修理が目的で開発された艦です。
誠也 普通の船渠も多くあるけど、それでも足りない場合に備えてってことだな。
桜  艦体は両舷に付きだしたブームを持ち……、分かりやすくいってしまうと、ナデ〇コAです!!
初葉 言い切ってしまうものどうかと……。
誠也 まぁこんなところだから、分かりやすさ優先は仕方ないが。
初葉 でも、ナ〇シコ級にはドック艦のコス〇スがありますけど、そっちではなくてAなんですね。
桜  その両舷のブームの間に各種モジュールを接続することで、各種任務に対応しています。
美咲 具体的には、輸送・補給・前線での修理などだね。
初葉 普段は、新造艦が各艦隊に送られ更新された、旧型艦を引き取る輸送任務が多いです。
美咲 あとは、今回はテストが必要な夕霧が居たから夕霧を降ろしたけど。
初葉 普段はあの地上との連絡も一条型の仕事ですね。
誠也 一応、重力波砲のモジュールも開発はされてるけど、まぁ戦闘に出るものじゃないな。
桜  固定武装としては、対空レーザーシステムやミサイルランチャー、まぁ最低限だね。
初葉 その分、フィールドは高出力対応になってますけどね。
桜  そんな感じの艦になってます!!
誠也 で、今後の出番は?
桜  予定ではあるはず。
誠也 なるほど。

誠也 第7艦隊の真なる始動として、夕霧隊もまた出撃する。
初葉 しかし、先行する第3艦隊を待ち受ける第4艦隊は、想定と違っていた。
桜  三番惑星の戦いでの違和感の正体に気付いた初音は、先行を決断する。
美咲 次回、『あの引き際は!!』、ご期待ください。

誠也 次は?
桜  次もかも……。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Aパート [星瞬きし宇宙の海で]

第三話『あの引き際は!!』


 突然のことに、俺たち新人は一斉に一歩後ずさる。それを見た司令は、ふっと笑って机の上から降ろしていた手を、もう一度机の上にあげる。そしてそこには、なにやら流麗な筆運びで文字が書かれた、一枚の札があった。
「えっと……、手品か何かですか?」
 いきなり突拍子もないことを言う勇気もなかった俺は、見るからに違うのは承知の上で置きに行った。
「残念だけど手品ではないわ。タネがないっていうと語弊があるけどね」
「ということは、それは所謂、呪符の類……ってことですか?」
 否定の言葉を聞いて、ならばといこうとした俺よりも先に桜は切り込んだ。こういう時に口火を着ならないのは賢さなのだろうが、まぁなにかが変わるわけじゃないのだから、割り込まなくてもとちょっと思ってしまった。
「人間というか生物ならだれもが多少は持っている超常的な力、所謂霊力、魔力の類、ここでは霊力で統一するけど、とにかくそれを使った術ってことね」
「こういう力を、持ってるってことですか」
「うん。私たちというか、この第七艦隊の人間は、多かれ少なれ、といっても全人類を含めた平均値からすれば圧倒的には高いんだけど、全員が持っているんだ」
 なんでここにいるのかという俺の美咲への問いの答えがこれだよというように、美咲はこちらを見つめながらそう言った。
「なんのためにそんなことを」
「霊的災厄に備えるためよ」
「そりゃ、霊力があるならそういうこともあるのかもしれませんけど、……怪談話レベルだって聞いたことないのに」
 確かに怪談話は、今でも夏の風物詩ではある。とはいえ、それはかつて地球にいたころの話がほとんどで、この大和星系に移ってから新たに加わった話なんて聞いたことがない。
「それはね、ここに移ってからまだ時間が経ってないからだよ。人の営みがあるところに、怨念やらの感情はたまっていく、まだかつての地球の10分の1の時間も過ごしていないここで起きないのは当然」
「なるほど、そうか……」
「ですが、時間が経てば経つほど、発生する可能性は高まってくる。その時に対抗する力として、私たち第七艦隊はあるんです」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Bパート [星瞬きし宇宙の海で]

「まぁそうは言っても、霊的災厄に対処する手法の多くが、その“起きよう”がない期間に失われてしまった」
 使わなければ人は忘れてしまう、そりゃあまぁ当然のことだろう。
「お兄ちゃんが修めた三月川流剣術、それも本来は倒魔剣術だったけど、今やそこの部分は残ってない」
「そ、そうだったのか……」
 そんなこと、考えたこともなかった。言われてみれば不自然なところが、みたいなことも思いつかない。
「まぁでも、それでもこの第七艦隊ができたことで、復元、引継、研究、それらの体制がある程度整ったわ。そして、次なる段階として計画されたのが、現代技術との融合」
「それが、あの夕霧が特別の意味なんですね」
「そう。高度霊力利用型戦艦、機動兵器。その一番艦が夕霧、そしてバニティセイバーなのよ」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Cパート [星瞬きし宇宙の海で]

「どう違うんですか?」
「今のところは、主機と兵装、そして機動兵器には追加で伝達系、この3つに霊力系のシステムを組み込んであるわ」
 今のところは、と言われても、それで全部なんじゃないか思うが、細かいことを言えば目指すところは遠いということなんだろう。
「主機・霊子相転移炉、これはまぁ抽出するのが真空のエネルギーか霊力かの違いで、基本的な原理は同じね」
 相転移炉に先ほど見せられたような札がベタベタ貼ってあるのを想像してしまうが、流石にそんなことはないだろうか。
「兵装は、言い出したら切りがないからアレだけど、霧原君、あなたの機体の刀とかね」
 便利すぎると思ったそれは、そういうことだったらしい。
「伝達系は、機体のフレームにパイロットの霊力を通すことで、操作なしに直接伝達することが出来たりするわ。これは現状だとあくまでも補助で、緊急回避とかにしか使えないけどね」
 ……なるほど、そういう意味でもまだまだなところはあるんだなと思うが、まぁ全く操作が要らないと言われても、今まで操作をする訓練をしてきた自分たちにとっては、むしろ、そのくらいの方がいいのかもしれない。
「ほかに質問は? なければ戻って、他の乗員に伝えてちょうだい」
「了解です」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Dパート [星瞬きし宇宙の海で]

「美咲」
 この話を聞けば、そういうことなのだろうというのは分かったが、それでも最後は直接聞きたいと思った。
「将来的に来てくれって言うんじゃなくて、今すぐだったのなら、きっと俺なんかじゃ及びもつかないほどお前の霊力は強いんだろうけど、それでも本当に今すぐな必要はあったのか?」
「伝えなかったのはごめんね? ……でも、潜在的に私も何かしたい気持ちはあったんだよ、たぶんね。だから」
 昔から、俺と桜によくついて来たりしていたし、二人ともがいなくなって思うところは当然あったんだろう。それは本当だとは思う。ただ、急いだのには、もう一つの感情があったんじゃないか、一瞬だけそう思わなくもなかったが、流石に邪推かと口には出さなかった。
「そっか。お前がそうしたかったんなら、俺がどうこう言うことじゃないけど……」
 ここに来ることを決めたことはいいとしても、もう一つ問題は。
「司令、美咲は役に立ってますか?」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Eパート [星瞬きし宇宙の海で]

「もちろん。美咲がいなかったら、この第7艦隊は表しか機能してないわ」
「そ、そこまでなんですか!?」
 司令以外もうんうんと頷いているところを見ると、十分周りからも認められているらしい。
「正直、私たちの霊力量とはケタが違うからね。いなきゃ再現できなかった術式も多いから、そっちの方面ではもちろんだし、夕霧も現状だと美咲がいないとまともに運用できないからね」
 一人乗りの機動兵器なら乗り手の霊力の性質も当然一つだから、そのまま流せばいいが、多人数で運用するものとなると今のところは、バラバラな性質と量を束ねなければならない、そのための変換機的な役割を担っているのだと司令は続けた。
「安心した?」
「まぁな」
「じゃあ、戻るよ」
「了解」
 心配することはなかったとはいえ、俺にとってもう一つ、頑張らなければならないことが増えたのは確かだった。気合を入れる意味でも、家族だからの言葉を止めて、そう答えた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Fパート [星瞬きし宇宙の海で]

「なあ、美咲?」
 艦に戻る途中、俺はふと気になって美咲に声をかけた。
「なに、お兄ちゃん。まだなんか納得いかないことでもあるの?」
 先を行く美咲は、鬱陶しそうに振り向いた。
「ちげーよ、これからのことだよ」
「ならいいけど、なに?」
「俺たちはこれからあの艦や機体を使って、もし霊的災厄ってやつが起きたときには対応するんだよな? なんか、特別な訓練とかしなくていいのか?」
 機械的な操縦や操作は一緒だから、アニメや漫画に出てくる修行シーンのようなことはしなくてもいいのかもしれない。が、突きつけられた現実は、まさにそういう世界の話だ。ならいっそ、そういうことをした方が安心できるかもしれない。
「んー。さっき司令が使って見せた呪符、ああいうのを使うためのレクチャーぐらいはしたいけど……、まぁ落ち着いたらだよね」
 そんな時間がないという意味と、これから戦う相手には必要ないという意味の両方なのだろう。当然の話だ。とはいえ。
「でも」
「それも大丈夫ですよ」
「え?」
 遮ったのは雪原琴希だった。
「あの艦に乗るということは、常に霊力を吸われ続けるということですからね。それだけで十分、強化につながります」
「そうなんですか」
 そういえば、この司令部までの道中、妙に疲れていたのを思い出す。あれに慣れるのが、まず第一歩なんだろう。ありがとうございましたと返そうとすると。
「あ、でもアレだね。お兄ちゃんにはちょっと、特別訓練をしてもらおうかな」
「なんで!?」
 突然真逆のことを言われて、つい大声を出してしまった。そんな俺を尻目に、美咲はいたずらっぽくこう言った。
「失われたものを、取り戻さないといけないからね」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Gパート [星瞬きし宇宙の海で]

「失われたものを取り戻すって、こんなところでなにを」
 美咲は俺の分の出港準備を任せる手はずをパパっと整えると、そのまま俺を引っ張って艦内のトレーニングルームへとやってきた。だが、そこにあったのは所謂トレーニングのための器械でも、シミュレーターの類でもなく、よくわからない設備の部屋だった。美咲の言う“失われたもの”とは、剣技のはず。それなのに、こんな部屋というのはよくわからなかった。
「そりゃ、さっき言ったでしょ。三月川流は、対魔剣術だって」
「だったら武道場とかそういう」
「あのね、確かにこれから習得してもらうのは剣技だけど、お兄ちゃんは三月川流の単なる剣術としての部分は修めてて、あとは霊的なものでしょ。だから、まずは霊力を操る訓練から始めないと話にならないの!!」
 ぐうの音も出ない。
「まぁでも、時間がないからね。これでイメージトレーニングというか自主練しといて」
 そう言って、今どきめずらしい紙の資料を、分厚いのをよこしてきたので、試しにぱらっと目を通す。よほど事細かに書かれているのかと思いきや、細かくないわけではないが、そもそもの量が半端じゃないようだった。しかも、最後には不思議なことが書かれていた。
「おい、奥義が3つってどういうこと……」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Hパート [星瞬きし宇宙の海で]

「あー、それはね……。話すと長くなるけど、聞く?」
「そりゃ、継いでる立場上なあ? 聞いとかないと……」
 資料をよこした後、訓練の用意に離れていた美咲は、まぁそうだねと戻ってきた。
「結論から言うと、ウチに伝わる三月川流は、三奈薙流、清月流、芳川流の三つの流派だったの」
「三奈薙の三、清月の月、芳川の川で、三月川か」
「そういうことだね」
 統合の過程で剣技の全てが残ったわけじゃないのだろうが、それぞれの奥義は捨ててしまうには惜しかったのかもしれない。その気持ちはよくわかる。
「でも、それぞれ完成されてたものを一つにする必要あったのか?」
「それはもう成り行きだから仕方ないって感じだね」
 美咲が言うには、長年に渡って霊的事象から日常を守り続けてきたことによって、霊力を用いて騒乱をもくろむ組織に、いつしかその剣をコピーされ、三つの流派を叩き込んだ人間が作り出されてしまったらしい。ところが、いざことを起こそうとした時、その人間は裏切って守る側について戦い、事なきを得たそうだ。
「なるほど、そりゃもう、その三つを合わせた状態を継承してく方がいいか」
「そうだね。まぁ厳密にいうと、三奈薙と芳川はまだ残ってるんだけど」
 なんか今までの話が、全く意味がなかった気がしてきてつい。
「なんでだよ」
「その辺に関しては分かんない。史料に書かれてないからね。でも、そうは言っても、実際に使う人間がいる以上、仕方ないでしょ?」
 確かにそれは問答無用だと思う。
「彼女たちも、ウチの艦隊にいるから、いつか組むことにはなるかもね?」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Iパート [星瞬きし宇宙の海で]

「艦長、急遽出撃ということになったので、私は艦橋は外れて、整備の方に回るように指示を受けました」
 まぁこの艦の秘密は、特に整備班にとって、単なる驚きでは済まない。わかっている人間の助けは当然必要だ。
「聞いてます、よろしくお願いします」
「はい。ここは私の妹が引き継ぎますから」
「それも。琴璃さんでしたっけ」
 琴希はうなずいて、踵を返そうとする。
「その前に一つ聞いていいですか?」
 ……が、初音はそれを引き留めた。
「なんでしょう」
「霊力系のシステムが組み込まれているのは、この艦とその搭載機だけですか?」
「いえ、まだ有人型の全艦とは行きませんが、フィールドシステムの搭載は順次進められています。それから、機種転換プログラムの構築を目的として、旗艦澪標機動兵器隊に配備されています」
 聞くところによれば、霊子フィールドはあらゆる攻撃に対して、防御効果をもち、さらに歪曲場フィールドと違って重力子を利用しないので、現状では探知もされないという夢の防御兵器。限定的にしか使えないとしても、積まない手もないだろう。
「それがなにか」
「いえ、足並みのそろえ方というか」
 まぁ確かに、今の今まで知りもしなかったどころか、想像さえしなかった突拍子もない兵器の指揮を任され、さらにそれが周りと比べて最も進められているとなれば、難しさは理解できる。
「艦長は、どう思いました?」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Jパート [星瞬きし宇宙の海で]

「どう思うと言われても、最初にあの術を見せてもらいましたからね。それに……」
 初音は一度そこで言葉を止めて、振り向いた。なんだろうとは思いつつも、琴希は先を促す。
「それに?」
「副長はなにかあるって思ってましたから」
 美咲がいないことを確認したということか、なるほど、それはその通りだ。だが、そう割り切られすぎているのも、少し気になる。そんなことを考えていると。
「私はびっくりしました!!」
 入ってもいい雰囲気と思ったのか、オペレーター席から春香が割って入ってきた。
「もちろん、私だって驚いてないわけじゃないですよ? ただ、実感もないから、やっぱりまだちょっと半信半疑なところもあるというか」
「ここまでくる間に倒れなかったんだから、あるんじゃないですか? 確かに、司令見たくカッコよく使ってみたくはありますけど」
 春香は目を輝かせてそういうが、さっきのアレは手品に毛が生えたようなもので、別にそんなかっこいいというようなものでもないと思う。まぁ初めての人間からすれば、使えるだけでかっこいいというのは分からなくもないが。
「琴希さんはどうなんです?」
「聞いておいてなんですけど、正直私もそうかもしれません。妹は、琴璃はすぐ順応して、今じゃ霧原副司令と二人でいろいろやってるぐらい、術の扱いも上手いんですけど……。私は、エスナ主任と機械をやってる方が合ってるみたいです」
「そうなんですか……」
 春香は少し悲しそうな目をするが。
「別に、それで仲が悪いってわけじゃないんですよ?」
 もうちょっと一緒にいられたらいいのにと思うぐらいのことで、妹もこの艦に乗ることになったのだから、機会も増えるだろう。そう思っていると、不意に背後のドアが開いた。
「あれ? お姉ちゃん引き継ぎに待っててくれたの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……。まぁでも、来たんならはい。任せたわよ」
「うん、任せて」
 どうやら、琴希の言葉に嘘はなかったようだ。
「じゃあ、艦長。今度こそ行きますね」
「はい、ありがとうございました」
 琴希は、手にまとめていたものを琴璃に渡すと、頭を下げて出て行った。
「えっと、じゃあ、本日付で着任しました。第7艦隊技術開発部霊力システム担当の雪原琴璃です。よろしくお願いします!!」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Kパート [星瞬きし宇宙の海で]

「索敵機より入電。モニターに出します」
 先行する第3艦隊は、第7艦隊と同じアステロイド帯にある司令部を発ち、4番惑星進行方向前方の公転軌道上で、終結を待っていたが、その間にも索敵機を飛ばしていた。
「ツインズから距離を取っています。次元断層結界を使うつもりはないようです」
 低軌道要塞・ツインズ。アステロイド帯からピーナッツ状の岩塊を運んで作られた4番惑星の守りの要である。その最大の特徴は、艦艇には到底積めない数の相転移炉、そしてフィールドジェネレーターによる超高出力の歪曲場フィールド。空間の歪みを通り越して、空間を切り離して隔てる寸前のところまで屈曲させるそれは、次元断層結界と呼ばれていた。しかし、通常の歪曲場フィールドでも内側からの攻撃は基本的にできないのだから、より屈曲している次元断層結界で、出来るはずもない。援軍を期待してひきこもって待つというならともかく、孤立無援のこの状況では、そうそう使えるものではない。それは、跳躍直後に重力子干渉波ソナーに反応がないことからも、分かってはいた。だが、だからこそ第3艦隊の司令、小松怜は慎重を期して索敵機を出したのである。
「艦艇の数もあっている、正攻法で疑いはないか……」
「そう思います」
 座上する第3艦隊の旗艦、空母夕顔の艦長、副長もそれに賛同する。
「分かった。集結が完了しだい進発する。全艦に通達」
「了解」
 進発するといっても、実際に交戦に突入するにはまだそれなりの時間がある。何か動きがあれば、索敵機からの報告もある。最終的な判断にはまだ早い。そう言えた。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Lパート [星瞬きし宇宙の海で]

「アステロイド帯、出ます」
 諸々の出港準備が整い、夕霧はドックを離れた。順次跳躍に入り、合流ポイントを目指すことになる。
「跳躍割り当て座標を確認後、跳躍に入ります。総員に跳躍シフトを」
「了解、アデック粒子散布開始します」
 艦隊行動時の跳躍事故を防ぐために割り当てられた目標座標を確認し、通常のシークエンスに入ろうとするアリスだったが。
「アリス待って、誘導推進のテストをするわ」
 美咲がそう止めた。
「了解、直近ポイント7-2-9へ向かいます」
 誘導推進、正式には地脈流誘導推進という、宇宙空間にも存在する地脈の流れに乗る霊力を用いた新式の超光速航法である。
「ごめん艦長、これだけは使えないと」
「いえ、確かにすべきでした。奇襲が必要になるかもしれませんし」
 地脈を利用するだけあって、地脈が流れていない場所には跳べないというデメリットはあるが、アデック粒子の凝集を必要とする通常の跳躍と違い、探知されないというメリットがある。しかも、地脈という巨大な霊力の流れを利用するため、例え霊力の観測が可能な相手でも、である。
「航路設定完了、重力制御システムカット、霊子放射推進に移行。霊子フィールド最大、地脈内に進入します」
「機関部チェック完了。他、艦内全部所問題ありません」
 初音が、美咲と琴希と交代した琴璃に目配せすると、二人はうなずいて見せた。
「誘導推進、開始!!」
「開始します」
 その瞬間、夕霧の周囲は通常の跳躍時とは違う、薄く黄色ががった白い光に包まれて消えた。

 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Mパート [星瞬きし宇宙の海で]

 結局、待ち構える第4艦隊に動きはないままに時は過ぎていた。交戦距離まではまだ36時間ほどあるにせよ、流石に作戦については最終的な決断を下さなければならない位置だった。
「セオリー通りに行くしかないか。部隊を分ける」
 ツインズは、低軌道要塞であるため、4番惑星のほうを向いている下面については、火力がそれほどでもない。フィールドも張れないわけではないが、出撃の利便性などもあって、基本的には下面側は切られている。つまり、大気圏スレスレに4番惑星とツインズの間に入りこめれば、攻略は容易ということだが、そうは言っても、奇襲をかけるためには重力制御システムが使えないため、大気圏表層を飛ばすのは容易ではない上に、どんなに隠密性に気を遣おうとも、近づくにつれて光学観測で発見される可能性が高くなる。見つかってしまえば、迎撃部隊を送られておしまい。なので、部隊を二つに分けて、正面で4艦隊をくぎ付けにするのがセオリーというわけだ。
「第3部隊は、無人17から24号艦を率いて転進」

「第3艦隊より、一部分離。下面奇襲部隊と思われます」
「セオリー通りだな」
 第3艦隊の側面に、彼らを監視する目があった。
「第3艦隊の索敵範囲外に離脱後、追撃に移る」
「了解」
 それは、2番惑星で夕霧と交戦した、竹下の艦隊だった。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Nパート [星瞬きし宇宙の海で]

「夕霧より入電。地脈流誘導推進のテストを行い合流する。出現点は本艦前方方位9-2-0、距離3000」
 当然のことながら、一番に合流ポイントに到着し、後続の誘導に当たっていた第7艦隊の旗艦、冷泉型戦艦・澪標に夕霧から、そう連絡が来る。
「問題ないと伝えてくれ」
 今回の作戦には、艦隊司令の和葉は来ていない。代わりに指揮権を預かっている澪標艦長の川上大樹が、そう答えると数分の間をおいて、前方に白い光が表れて消えた。
「夕霧を確認、誤差、0.00037」
 そういう航法が開発されたことは知っていたが、実際に見るのは初めて。いきなり、これまでの方法では、絶対に出せない誤差を出して見せたことに、ブリッジにいる全員が驚きの声があげていた。
「便利なものだな」
 川上は、隣にいる副長にそう話しかける。
「ええ。しかし……」
「ん?」
「あの艦の正式採用型が回ってくる前に、自分は退役だろうと思ってましたが、こんなことになると分かりませんね」
 なるほど、確かにそうかもしれない。いい話ではないが、この件で一気に進むことになるのは間違いなさそうだ。
「夕霧にも回しておけ」
 3艦隊からの報告を含めた現況を、夕霧にも送るように伝える。そういうわけだから、というわけでもなかったが。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Oパート [星瞬きし宇宙の海で]

「澪標よりデータ来ました。出します」
 春香は、手早く開くと、まずは大型モニターに表示して、さらにそれぞれの手元にも送り届けた。
「ありがとう」
 ……。
 受け取ってすぐはそう、特になにかあるような答え方ではなかったのだが、そこからが意外にも長く、初音は送られてきたデータとにらめっこをしていた。
 ……。
「艦長?」
 同じように気になったのだろう、さらに数分が経過したところで、美咲が声をかけた。
「ごめんなさい、何か違和感があって」
「え?」
 言われて美咲ももう一度見返してみるが、表示されている布陣は特段おかしいようには見えない。第4艦隊の保有戦闘艦の数的にも合っている。嫌な予感ならしなくもないが、戦端が開く前ともなれば、全くない方がおかしいわけで、宣戦布告時のような強烈なものまでは感じなかった。
「今のというより、あの時の……」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Pパート [星瞬きし宇宙の海で]

「あの引き際は……!! 春香、澪標と回線を!!」
「りょ、了解」

「艦長、夕霧からです。回線開きます」
 モニターに初音が映し出される。その姿は、なんとか落ち着こうとしているものの、それを抑えきれていないように見えた。飛び級制度がないところを無理矢理飛び級して見せた天才とはいえ、まだ若い。その分、こちらが落ち着くよう努める。
「大塚艦長、なにか」
「川上艦長、この布陣はおかしいです。一部ダミーの可能性が」
 彼女は、思った通り少し早口だった。
「具体的には?」
「私たちが2番惑星で遭遇した先制攻撃部隊は、機動兵器に少数の損失を出しましたが、艦艇への被害は皆無、というより、こちらが有効打を与えられる状況にない段階で、早々に撤退しました」
 そのあたりの報告は既に受けていて、川上も引っ掛かる行動ではあったが、逆に言えば、帰還に十分な時間を確保できたことになる。第4艦隊は拠点防衛に最も重点を置いていることを考えれば、この布陣をきちんと敷くために早々に撤退したとも考えられた。そこは、第3艦隊の小松司令も同じ見解で、それをもとに行動している。
「いないとすれば、どう動いていると」
「3つ考えられます。一つ目は、第3艦隊主力への奇襲。二つ目は、支援にあたる我々への牽制。最後は、第7艦隊司令部への奇襲です。ただ、先々のことを考えると、一つ目の可能性が最も高いと私は考えています」
 確かに、パトロール舞台に毛が生えた程度の第5、第6艦隊を考慮しないとしても、第1、第3、第7艦隊、そして再編が終われば第2艦隊とも戦わなければならない。どこかのタイミングで第7艦隊の保管戦力の接収を敢行するとしても、いきなり正面から戦って戦力をすりつぶすのが得策でないのは確かではある。現時点で、第4艦隊と実際の戦闘経験があるのは、初音が率いる夕霧だけ。その彼女が言うのなら。しかし。


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第三話 Qパート [星瞬きし宇宙の海で]

 あと数時間もしないうちに戦端が開かれるだろう位置にいる第3艦隊に、今からそれを伝えるだけでは、被害を防ぐどころか減らして離脱させることも難しい。援護が絶対に必要な状況になっている。だが、もはや自分たちは集結を諦めて全速力で追ったとしても、通常航行では追いつかない距離にいる。覚悟を決めて跳躍する手もあるが、跳躍は探知される。ターゲットをこちらに変更して跳躍直後を狙い撃たれるのがオチだ。
「私たちの誘導推進なら」
 それしか手はない。万が一、初音の読みが外れていた場合でも、第3艦隊の作戦の邪魔をすることにはならないということもある。
「分かった。夕霧での先行を許可する。こちらも今いる分だけで再編、跳躍準備を進める。背後に艦隊を確認したら攻撃して、こちらが跳躍できるよう注意を引き付けてくれ」
「了解です」
 初音は、すぐに行動に移ろうと通信を切ろうとする。
「まて、そうは言っても戦力不足には違いない。こちらのバニティセイバー隊を送る。使ってくれ」
「ありがとうございます」
 初音は、頭を下げると、今度こそ通信を切った。


 第三話・了
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星海座談会 Re:3 [星瞬きし宇宙の海で]

桜  というわけで、やっぱり3回にしましたね!?
初葉 そうですね。まぁこの状況ですから、あとに影響するかというと……。
誠也 まぁ……、ないだろうな。
桜  だからといって、サボりまくりでは進まないのです!!
美咲 そうだよね。だからこそ、コツコツ進めないと。

誠也 で、今回は何を紹介するんだ?
初葉 第4艦隊の新型機動兵器、コンクエスターでしょうか?
桜  まぁそれでもいいんだけどね。今回はミサイルと魚雷の違いをやるよ。
誠也 なるほど、確かに設定関係は早めにしとかないとなあ。
初葉 当たり前ですけど、宇宙じゃ言葉を分ける意味なんて本当はないですもんね。
美咲 ミサイルも魚雷も誘導弾で、推進方式も宇宙じゃ同じに……。
桜  あくまで“この話では”だけど、誰かに説明を……誠也くん!!
誠也 お前が説明するんじゃないのかよ!?
桜  せっかくだし?
誠也 ……まぁいいか、歪曲場フィールドジェネレーターと積んでいるのが魚雷。
美咲 積んでないのがミサイルだね。
桜  正解!! じゃあ、ついでに理由もお願い。
誠也 お前なあ……。
桜  まぁまぁ、補足はするから。
誠也 今の世の中、軍用艦艇も民間船舶もフィールドは標準装備となってる。
初葉 なので、致命傷を与えるには、フィールドを突破する必要があります。
誠也 それができる兵器はいくつかあるけど、誘導弾は基本的にはできない。
美咲 フィールドに引っかかると破壊されちゃう。破片は内側にも飛ぶけど……。
初葉 機動兵器ならともかく、艦艇に致命傷は難しいですね。
誠也 かといって、誘導弾を完全に諦めるには、惜しい利点もある。
桜  同じく突破できる重力波兵装と違って発射兆候を探知されづらいとか。
美咲 だから、苦肉の策でフィールドジェネレーター搭載になったってことだね。
誠也 そうだけど、そのせいでコストは跳ね上がってしまった。
初葉 なので、隠密性も付加して超遠距離からひっそり狙う巡航魚雷が主流になりました。
誠也 さらにさらにコストが上がってしまったけどな……。
美咲 安いのは機動兵器用のぐらいだね……。
桜  じゃあ、最後、ミサイルの使い道は? 初葉さん。
初葉 近接防空用として、対機動兵器で使用されてますね。
桜  以上、ミサイルと魚雷の使い分けについて、でした。
誠也 なんだかなあ……。

美咲 初音の予想通り、第3艦隊主力の背後に現れた別動隊。
桜  なんとか第3艦隊の被害を抑え、撤退を支援するために夕霧は攻撃を開始する。
初葉 そんな中、脇目もふらず、一直線に誠也を目指す敵機がいた。
誠也 次回「この癖は!!」、ご期待ください!!


誠也 しかし、来年が影響なくできるってもんでもなさそうだよなあ……。
桜  客を入れる入れないとかは置いといて、日程だけでも正常になって欲しいね。
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星瞬きし宇宙の海で 第四話 Aパート [星瞬きし宇宙の海で]

「はあ……」
「橘隊長? 何か問題でも?」
 澪標バニティセイバー隊の隊長、橘椿は、整備班員が離れたタイミングを見てため息をついたが、あまり意味なくばっちり聞かれてしまっていた。
「ごめんなさい。特に何かというわけじゃなくて、いよいよかと思うちょっと」
「気にしなくていいわよ。私たちみたいな学校からずーっとトゥエルの人間にとって、初めての新型だもん、緊張もするわよ」
「そういうことですか、ならいいんですけど」
 隣の機体に乗っている、柊梓が横やりを入れてくるが、まぁ実際のところ彼女の言う通りなので、椿は特に訂正はしなかった。そんなとき、モニターに通信が入っていることを知らせる表示が踊りだした。
「艦長から直通……? はい、橘」
「隊長、直ぐに発艦して夕霧へ移乗してくれ」


 つづく。
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星瞬きし宇宙の海で 第四話 Bパート [星瞬きし宇宙の海で]

「夕霧へですか?」
「そうだ。緒戦を戦った大塚艦長が言うには、3艦隊が誘いこまれた可能性があるとのことだ。今からでは夕霧の誘導推進を使わなければ間に合わないが、夕霧の戦力だけでは明らかに不足だ」
 もちろん、4機しか配備されていない澪標バニティセイバー隊が合流したところで、不足なことに変わりはないが、夕霧に乗れる人間が限られている以上、どうしようもない。ないよりはマシというやつである。
「了解しました」
 艦長からの回線を切ると、待っていたのだろう、今度は他の隊員から通信が入った。
「椿、なんだったの?」
「先行する夕霧の応援として入ることになったから。全員、発艦準備して」
 梓だけは、少し大げさにえっというような反応を見せるが、他の二人、十和崎京子と大崎諒一は、すぐに準備に入る。椿もそれに続いた。


 つづく。

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星瞬きし宇宙の海で 第四話 Cパート [星瞬きし宇宙の海で]

「バニティセイバーって他にも配備されてたんですね」
 出撃準備を急ぐため、整備班に加わって作業に入っている琴希に俺はそう尋ねた。
「今のところはその一つだけですけどね」
「司令の話からして、てっきり俺たちだけなのかと……」
 よくよく考えれば、霊力の利用を前提として設計されているとはいえ、機動兵器として通常型のそれと同じ手順を踏んで作られていることは間違いないだろうから、その段階においてはテストパイロットの方々が、みっちりテストしまくってはいるはずではある。
「バニティセイバーの場合、霊力の要求が高いですから、全員というわけにはいきませんけど、それでも最終的には機種転換を進めていくことになりますからね。そのためのプログラムの策定なんかを目的に、澪標にも先行配備されてるんです」
 まぁ俺たちだって、学校では散々トゥエルに乗り倒してきて、それで特に違和感もなく適応できたのだから、そこら辺の問題ではなく、やはり霊力の問題なんだとは思う。もしかすると、追加の訓練次第では乗れるところまで引き上げられるぐらいの霊力量の人間にどうすればいいか、とかそういうことかもしれない。
「どういう人たちか知ってます?」
「まぁ。でも、今は」
 そりゃそうだろう。俺は謝って、大人しく作業の進み具合を見守ることにした。


 つづく。
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