SSブログ

星瞬きし空の下で 第一話 Dパート [星瞬きし空の下で]

「ただいま。ごめん、ちょっと緊急事態!!」
「どうした、一人じゃあ対処できない状況になったとか言うなら」
 どうやら桜の父親である隆之は、桜がミスったと思ったらしい。
「違う違う。この人が突然倒れて」
 桜は、二階にある空き部屋に少年を運ぶのを手伝いながら、事の一部始終を話して聞かせた。

「なるほど、知らない顔だな」
 組合から新たに派遣されたにしても、このあたりの担当である桜の家に話を通さないのはおかしい。確認してみる必要はあるが、おそらく無駄だろう。
「まぁ、起きてくれないことにはどうしようもないだろうな」
「うん」
 とはいうものの、桜も修行時代には何度かやらかしたからわかるが、こうなると3~4日は起きれないし、起きたら起きたですさまじく体がだるい。自分が少年を闘わせるようなことをしなければ、倒れることはなかっただろうということを考えれば、申し訳ない気持ちになる。それを感じ取ったのか、母の奏が口を開いた。
「まぁ、一番体力ある頃だし2日もすれば起きてくるでしょ。責任感じてるならついててあげなさい」
「うん」
 桜がうなずくのを見た二人は、満足そうに部屋を出て行った。ドアが閉まり二人が階段を下りる音が消えると、桜は一言、
「ごめんなさい」
 そうつぶやいた。

 それから、桜はできるだけ少年のそばについていた。
「そろそろ起きてもいいと思うんだけどな」
 ついているとは言ったものの、具体的に何か看病する必要があるわけではないから、暇なのは否めない。仕方なく少年をずっと眺めているわけだが、それももうとっくに飽きた。じっくり見ると意外とかっこよかったのだが、だからなんだといわれたらそれまでだ。少しぐらい離れてもと思いかけたそのときだった。
「う、うう」
 少年は、少しうめくとゆっくりまぶたを開き上体を起こそうとしたが、やはり体がだるいのだろう、すぐに倒れこんでしまった。
「気がついた?」
桜はそう声をかけた。
「ここは?」
「私の家。あなた、私と一緒に戦った後すぐに倒れちゃったから」
 訊きたい事はいろいろあるが、まずは少年の質問に答える。
「そうか、あの時俺は」
「状況は理解できた? 早速で悪いけど、あなたの名前は?」
 起き上がれないのでは、奏が作ってくれていた料理を出すわけにもいかないので、今度はこちらから訊いていくことにしたのだが、
「俺は……」
 少年はそこで、言葉を詰まらせた。
「どうしたの?」
 訝しげに桜は、問い返す。しかしそこで返ってきたのは、予想の斜め上を遥かに超えた答えだった。
「……思い出せない」
「え、ええ~~~~~!!」


 つづく。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0