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星瞬きし空の下で 第三話 Aパート [星瞬きし空の下で]

第三話 お前も鈍いな、幸せそうで結構なことじゃないか


 転入になる三人と別れ、桜は一人月始めの全校朝礼に出席していた。
「えー、五月というのは新しくなった生活にも慣れてきて、油断が……」
 全国の長の例に漏れず、ここ明洋学園高等部の校長も話は長い。それも毎年聞くようなテンプレート的な話で、もはや誰も聞いていない。桜も適当に聞き流していたのだが、小さな声で聞き流せない話が聞こえてきた。
「まったく、この手の人間は。どうしても死人を出したいらしい」
 岩井慎吾。突拍子も無いことをよく言ったりもするが、その情報網と洞察力、統率能力だけは恐ろしいものを持った桜や深耶、春香と同じ2-Cのルーム長である。
「それは流石に……」
 まぁ、こういう行事で貧血とかになる人もいるわけで、トップのわりに配慮が足りないとは桜も思う。
「そんな人が、教員なんか選ぶわけないでしょうに」
 今度は深耶が呆れ顔でつっこみを入れる。いつもどおりのやりとりに、きっと深耶はいつもと同じように目を伏せているのだろう。だが、そんなことはお構いなしと言う感じで、慎吾は再び口を開いた。
「今朝入手したばかりの情報なのだが、今日俺たちのクラスに編入生が来るらしいぞ」
 いったいどこから仕入れてきた情報なのかはわからないが、相変わらず耳の早いことだとは思う。まあ隠す必要はないことだからいいのだが、とりあえず適当にあわせておくことにする。
「へえ、そうなんだ。男? 女?」
「さあ、そこまではわからん。いかんせん時間が無かったからな、特定できなかった。だが、各所から得た情報には統合が不可能な点がある。つまり、複数という可能性も否定できないな」
 それを聞いたとたん、深耶の声が訝しげなものに変わる。
「そりゃ、編入生は複数かもしれないけど、いくらなんでもうちのクラスに入るのは一人でしょう」
 そんなことは慎吾も当然わかっている。だが、どうにも引っかかる気がする。だから……。
「陰謀か……」
「そんなわけないでしょ」
 深耶は否定するが、間違っているわけではない。というより、むしろあたっているのだが。
「まあまあ、編入生が来るってことは間違いないんだろうし、すぐにわかるよ」
 それもそうね、と深耶は会話を切り上げ、慎吾もそれにならう。おまけに、これだけ長いこと会話していても、壇上の校長はようやく話をまとめに持っていくところだった。


 つづく。
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