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二次創作 ヨーコ(4) [二次創作SS]

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「そういえば、エスタナトレーヒがテストマッチをやるそうですよ?」
 メオ・ママンのオットーは、先ほどから来客用のソファに陣取り、黙ったままのメリ・スハンのゼンガーに対していつものように軽口をたたく。しかし、ゼンガーは反応を見せないどころか眉一つ動かさない。正直、オットーも困り果てていた。仕方なく、自分のデスクを離れてゼンガーを覗き込む。
「ヤマモトヨーコにすら反応なしですか……?」
「……」
 普段は他人を脱力させるオットーだが、今は珍しく自分の方が脱力しているらしい。
「僕だって、こう見えて忙しいんです。大事なスポンサー様を無下にゃしませんが、用件はハッキリして欲しいんですけど?」
 そんなことを言いながら、デスクにドカッと座り込んだ。
「貴様がそうでなければ、こうして躊躇する必要もあるまいにな」
「まぁ、僕以上の逸材がいるっていうなら止めないですけどね?」
「全く、すぐにそうやって足元を見おる。まぁいい、やはり貴様に頼るしかないのだろう」
 そう言うとゼンガーは立ち上がって、オットーのデスクまでやってくる。
「誰にも負けない戦闘艦を造ってもらいたい。ヤマモトヨーコにも、フーリガーにも、もちろんオールドタイマーにもな」
「難題ですな。まぁ、それはこちらの腕の見せ所として、一つだけ条件がありますけどいいですかー」
 オットーに頼らなければ、この難題はクリアできない。それなり以上の条件は覚悟していたのだが、オットーはデスクの底から凄まじい量の紙の束を取り出してゼンガーにつきつけた。手に取ってみたそれは……。
「これは、請求書か」
「そーですよー。一括で払っといてください、それが条件です」
 何とも古めかしい紙の請求書、束の厚みが尋常ではないだけあって、合計金額も尋常ではない。改革派に抑えられる前になんとか持ち出せた資産をほぼ使い切るぐらいの勢いだ。流石に眉をひそめるゼンガーに、オットーは悪びれもせず言った。
「いやー、マンタの犠牲から生まれたインスピレーションが消えないうちにと、建造に着手したはいいけど、こんなレギュレーション違反にお金出してくれる人いないでしょ? 最近じゃ借金取りが……」
 サングラスの下の目は、おそらく無意味に輝いているのだろうが、ゼンガーは無視してオットーの言葉を遮った。
「そんな話はいい、つまりすでに艦自体は完成しているというのだな」
「もちのろん!! 信用できないならみせましょうか」
「そうしてもらおう」
 オットーがコンソールを操作すると、ホロビューに巨大な戦闘艦が映し出される。下部は白、上部は鼠色の巨大な船体が映し出される。それが何であるかを判断するのは難しくない、事実ゼンガーはすぐに気付いたようだ。
「サメか……」
「おしい、太古の海で栄えたカルカロクレス・メガロドンですよ。ま、サメは歯しか残りませんからね、細部はホホジロザメを参考にしましたけど」
 まぁ、確かに力強いデザインとは言えるだろう。デザインで戦うわけではないが、金魚型の艦で勝てる気がするかと言われれば否だ。そういう意味ではこの意匠は最強の戦闘艦にふさわしい。
「性能の方を聞かせてもらおう」
「4000mに迫る大型艦ですが、高速戦闘仕様にしてあります、流石にでかすぎて高機動というわけにはいかないけど。武装は大口径持続発射式インパルス砲R4300/HC、両舷コンポジットインパルス砲、ファランクスレールガンとまぁ、雷管が三十二門ほど。防御面は電磁着散式粉粒体装甲、積層式ヴェイパーシールドでとなってますよ」
 さらにアレコレとオットーは得意げに解説しているが、自分が乗るわけではないゼンガーにとって細かいところはどうでもいい。このカルカロクレス・メガロドンが最強であり、ヤマモトヨーコを倒せればそれでいいのだ。
「ああ、肝心なことを忘れるところだった」
 オットーは急にしゃべるのをやめると、オットーにしては真面目な顔で向き直る。
「なにをだ」
「ハッキリ言ってこれ、現状では最強なんて程遠いですからね」
 すっかりその気になりかけていたゼンガーにとって、オットーのその言葉は裏切り以外の何物でもなかった。
「貴様……」
「話は最後まで聞いてくださいよ、現状ではって言ったでしょ!?」
 この上何かを要求しようという雰囲気ではないのが救いではあったが……。
「何が必要なのだ」
「ヤマモトヨーコに匹敵するプレイヤーか相応の戦闘経験。いくら今までの艦のデータをフィードバックしていたとしても、結局はそれを熟成しなければ意味がないと痛感しましてね。まぁ、それはお買い上げ後にご自分でどうぞ」
「……この状況で厄介なことを言う」
 現在、ゼンガーらの一派は政権中枢からは追放されている。ただ、フーリガーの兄フィッシャーらの改革が進むにつれ、放逐された勢力がゼンガーのもとに接触してきており、状況は好転しつつある。とはいえ、長年中枢で甘い汁を吸ってきたような連中がほとんどである、戦闘艦などのリソースもあるにはあるが、ヤマモトヨーコとやりあえるだけの戦闘データを提供出来はしないだろう。
「ま、どっか適当な星系を不法占拠でもすればいいんじゃないですか? そのうち排除にカモがわんさかやってきますよ」
「……ふむ」
 確かに、双方の陣営に対して目立つ行動をして時間稼ぎをする必要はある。このカルカロクレス・メガロドンでヤマモトヨーコを倒す準備が整う前に、オールドタイマーとの接触されてしまっては元も子もないのだから、オットーの言う手段は確かに手っ取り早い。なんにせよ、今はこのカルカロクレス・メガロドンを前提に戦略を練り直す必要があるのは間違いない。
「いつもの口座では危険だ、用意はしてあるのだろうな」
「もちろん、ぬかりなく」
 ゼンガーは、自分の端末を操作してオットーの口座に金を振り込む。オットーも振り込まれたことを確認すると、隠しドックの位置データと艦の起動キーを引き渡す。それを受け取ると、ゼンガーは立ち上がって部屋を出ていく。その後ろ姿に、オットーはもう一度口を開いた。
「オートでやるにしても、誰かしらプレイヤーを乗せておくことをお勧めしますよ」
「なぜだ」
 いつになく真面目なトーンのオットーにゼンガーは振り向かずに訊き返す。
「……マンタの二の舞は、防げるかもしれない」
「そうか」
 ゼンガーは、それだけ返すとそのまま出て行く。これでもう会うことはないだろうと思いながら、コンソールを操作して別のウィンドウを立ち上げる。そこには先ほどのカルカロクレス・メガロドンと似た、しかし違う別の艦のプランが表示されていた。
「……そいつはね、ある生物の出現によって淘汰されたって学説もあるんだよね」
 ウィンドウをスクロールされたことで、その艦の名前らしき表示が見えてくる。そこにはこう記されていたPR/P0“オルカ”と……。


 つづく。

  第三話第五話


いやー、本編様とネタかぶらなくてよかったー?

というより、むしろかぶらないとかありえないと思ってました。
リヴァイアサンもウミガメということでしたから
現生の魚介類の中で最強のやつが来るだろうと思ってたので
そりゃー、もうシャチしかないだろうと? そしたら意外にもマッコウクジラでした。
まぁ、所謂ダイオウイカとの闘いのイメージは分かりますけどね。
シャチとはやることがないだろうけど、やって勝てるかはどうなのかわかりませんしね。
む、ならダイオウイカという手もあった? かっこ悪さはいかんともしがたいけども!!
あと、オットーはフェーズごとに必要なパーツを作り、試していくスタイルから考えて
終着点は最初に決めてあるだろうと思っていたので、プロジェクトR/フェイズ0かなと。
……管理人のイメージですが、この辺は予定から変わってんじゃないかと思ったりしますね。

で、発売からだいぶ経ってからなんでこんな話をしてるかというと
これの原型は、『君たちの知らないいくつかの出来事』を待ってる頃に考えてたんですよね。
なので、今回ゼンガー陣営用の最終艦として、カルカロクレス・メガロドンを設定したのですが
流石に、新たに考えただけあって、オルカより強そうに見えてしまったり。
まぁ、そんなこんなですが、結局MODEL=Ⅲ以外はなかったTA-2シリーズの
パワーアップイベントもやりたいなーと思ってるので
気が向いたら呼んでくだされば幸いです。


オットーは、少し真面目寄りです。
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