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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Fパート [星瞬きし宇宙の海で]

「はぁ……、俺らみたいな新人の迎えに冷泉型とはなあ……」
 第7艦隊は、まぁ反攻作戦を実際に行うことになった場合に、型落ちばかりではまずいということで、保管装備については最新型もそれなりにあるが、逆に自分たちが使うもの関しては、他の艦隊が更新して余った旧型が多い。宇宙軍の最新鋭航宙戦艦である冷泉型は、確かまだ1隻しか回されていなかったはず。そんな虎の子を、こんな任務に使うというのは、まぁ慣熟訓練は必要だろうとはいえ、かなり豪勢だと思う。
「だねえ。……艦名は、“YS-701 YUUGIRI”夕霧かあ」
「え?」
 船体に書かれたその名を、桜は特に気にする様子もなく読み上げたが、俺は引っかからずにはいられなかった。
「どうかした?」
「いや、冷泉型の命名規則から外れてるから」
 冷泉型の命名規則は源氏物語の帖名となっているが、人名(夕霧など一般的に人名扱いされるものを含む)は前型の朱雀型で使われたために除外されている。……尤も、夕霧は光源氏の息子と言う都合上、他のくくりで使うかもということで使われないままに、冷泉型への更新が始まってしまったりはしているのだが。
「じゃあ、違うってこと?」
「そうなんだろうけど、だからって違うところも……」
 パッと見見当たらない。
「下が違うのかな?」
「そうかも」
 当然、喫水線の下は見えないのでかもしれないが、中身かも知れない。だが、どちらにしても、未知の艦が目の前にいる。それは、もしかしたら、俺の思っていた退屈な毎日とは違うものが第7艦隊にはあるのかもしれない。


 つづく。
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