星瞬きし空の下で 第四話 Hパート [星瞬きし空の下で]

 椿の到着を確認すると、桜いつもどおり結界を展開した。
「今度の主は?」
 そうたずねる椿に、梓は答えずに指し示す。そこには強力な霊力を放つ大木が出現しており、校舎を破壊するつもりなのか枝や根を縦横に伸ばしていた。
「これは、どうするのがいいんだ。このサイズと成長速度じゃ少々傷つけても効果なさそうだし」
「生木だからねえ、燃やしちゃうってのも骨が折れそうよね」
「うーん、でもこの手のタイプって根とか残しちゃうとそこから再生したりするし……、大変だけど燃やしといたほうがいいかも」
といっても、あまり考えてばかりいるわけにもいかない。椿は、すぐに指示を出した。
「とりあえず、根を切ってそこから燃やしましょう。ダメなら一気に燃やす方向で」
「「「了解」」」
 大木は四人を直接攻撃してくるそぶりは見せておらず、取り巻きというべき他の異形もいないため、それぞれ狙いを定めた根へと散ろうとしたときだった。土地を護る大規模結界が急に力を失っていくの感じた。どうやら、結界そのものには問題がないものの、地脈からの霊力供給が断たれているようだった。今のところ局所的なものではあったが、護りを失ったことで地面から次々に異形たちが湧き上がってきているし、放置すればこの辺り一帯が危険だった。
「やっぱり、根から処理しないと」
 こうなってしまうと大木だけにかまっているわけにもいかない。しかし、地脈から吸い上げた霊力でぐんぐん生長している。
「桜、梓は異形たちをお願い。霧原さんは私と木の方を」
 桜はうなずくと同時に符術で道を開く。そこから椿と誠也は一気に間合いをつめる。二人も呪符を使って刀に炎をまとわせて攻撃するが、地脈からの霊力供給を受けている今、それだけでは歯が立たないようだった。根を切り落としても、すぐに代わりが生えてきていた。
「桜!! 向こうの援護もしてやって」
 桜はうなずくと、異形たちから距離をとって大木の方を攻撃する。
「光よ!!」
 大木の上に光が収束し、次の瞬間降り注ぐ。その光が消えた後の大木は、大してダメージを受けたようには見えない、むしろ元気になっているようにさえ見える。
「……もしかして、光合成?」
「あんた人に散々講釈たれといてそれなの!!」
 そこまで手加減したつもりはなかったのだが、大木が発する霊力との相殺で光合成で利用できる程度に軽減されてしまったようだ。次の瞬間、鈍い音が結界内に響く。どうやら生長した枝が結界にぶつかったようで、かなり余裕のないところまできてしまったようだ。
 ここまできたら生半可な攻撃では通用しない、椿は懐に忍ばせた特別な呪符に手をかける。だが、それを遮るように梓の唱言が聞こえた。
「数多の龍を統べし蒼き龍よ、我が三奈薙とともに在りし盟友よ、汝が力を我に。三奈薙流奥義、龍王蒼炎斬!!」
 とっさに、椿と誠也は飛び退く。梓が抜刀術にのせて放った蒼い炎は大木に直撃し、あっという間に焼き尽す。霊力を吸い上げる存在がきえたことによって、結界は力を取り戻し残った異形たちもすぐに殲滅された。
「やるならやるといってくれよ、危ねえなあ。俺はお前の技をすべて把握してるわけじゃねえんだぞ」
「わざわざ詠唱してやったでしょ!! あの程度避けれないやつはいらないっての」
 ぎゃーぎゃー言い合っている二人を尻目に桜は、あまり表情の晴れない椿に話しかける。椿も声をかけずに奥義を使ったことに一言言いたいのかと思ったが。
「椿のは、どうしても時間がかかるから……。梓の判断は正しいと思うよ」
 椿はうなずく。
「ううん、そうじゃなくてね」
 そういうと、椿は背を向ける。いつもと違う様子に、誠也は梓と言い合いを続けながらも、目は椿の後姿を追っていた。


 つづく。
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