SSブログ

星瞬きし空の下で 第五話 Aパート [星瞬きし空の下で]

第五話 私が決めたことだから


 桜は明洋学園都市の中心部にある商店街へ来ていた。桜の両親が東京へ向かって以来、白樺家の家事は交代制で本来は桜の当番ではないのだが、今日も行われた模擬戦で三人を伸してしまったため買い物ぐらいは代わろうということで訪れたのである。
「毎度」
 いつものように、八百屋の主人はおつりを渡す。スーパーもあるのだが、付き合いが長いので桜は商店街のほうを選んでいる。まぁ、ここの商店街は初等部の授業などのためにわざわざ用意されているもので、購買の延長上にある学園の施設なので、事実上潰れたりはしないのだが。
「さて、もうこれで揃ったかな」
 メモをチェックし、そう言ってうなずくと自宅のほうへと足を向ける。すると、商店街入り口に急ぎ足で入ってくる春香が見えた。
「あ、春香」
「え、ああ、桜」
 実のところ、桜と春香は飛びぬけて仲が良いわけではない。桜は仲良くしたいと思っているし、春香もおそらくは同じだと思うのだが、圧倒的な霊力の差に萎縮してしまっている部分があるのかもしれない。
「春香はなにを買いにきたの?」
「ちょっと郵便出しにね」
 春香は高等部校舎の南側にある寮住まいなので、郵便局へは商店街の中を通ったほうが近道ではある。急ぎの、春香は話を切り上げた。
「ごめん、ちょっと急ぐからもう行くね」
「うん、また明日」
 走っていく春香を見つめる桜は、虫の知らせというわけでもないが、なにか少し引っかかるものを感じていた。


 つづく。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0