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星瞬きし空の下で 第五話 Bパート [星瞬きし空の下で]

 あの深い闇の深淵で、今また密談が交わされていた。
「その後はどうなのだ」
 今度の会話も、前と同じ男と女のようであった。
「今のところ、どちらも動く様子はないようです。泳がされているということもないでしょう」
 敵の懐にもぐりこんでいるのだから、そうそううかつな動きをするわけにもいかない。それは分かっていたが、男にはそれ以外にも気にかかることがあるようだった。
「……そうか。まぁそれはいいが、予定のほうはどうなっている?」
「今のところ順調ですが、やはりあの三人の能力はかなりのものです。余裕のある今のうちに排除するべきと判断します」
 男もそんなことは十分理解している。そのための一手として送り込んだのだから。しかし、それが機能していない現状、何かしら次の一手を打つ必要があるのもまた事実だった。
「言うからには、手はあるのだろうな」
「はい」
 間髪いれずに女は答えると、部屋の壁に映像が浮かび上がる。どうやら、ただのプロジェクターのようだが、そこからの光がこの場の二人を照らし出す。しかし、そこに男の姿は見えなかった。
「この娘を使おうと思います」
 そこに映っていたのは、春香だった。
「霊力凝集体を打ち込んで、強制的に覚醒・暴走させます。三人の友人ですから、そうそう攻撃はできないはず、隙ができれば必ずそこをついてくれるはずです」
 霊力凝集体とは、所謂パワーストーンの類に霊力を大量に封入したもので、長期戦の際などに霊力のバッテリーとして使ったりするものである。しかし、霊力の低い人間に持たせたりすると、封入された霊力が個人の制御限界を超え、暴走することもある。女はそれを狙っているのだ。
「……まぁ、よかろう。やってみればいい」
 しばらく考えていたが結局、男の声はそう答える。現状では、ダメでもともとという事なのだろう。
「承知しました」
 そう言って女のほうは退出していく。気配が遠ざかると再び口を開いた。
「この娘はどこかで……」
 記憶をたどると、意外にすぐそばにその手がかりはあった。
「なるほど、これはどちらに転んでも後々面白いことになりそうだ」


 つづく。
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