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星瞬きし宇宙の海で 第一話 Bパート [星瞬きし宇宙の海で]

西暦2300年代初頭、ワームホールを利用した空間連結による超光速転移航法の理論が完成し、さらに50年の時を経て転移実験にも成功した。しかし、消費するエネルギーが膨大過ぎてジェネレーターとセットで宇宙船に組み込もうとすると、際限ない巨大化を招いてしまうことが判明し、外宇宙への夢は頓挫することとなった。しかし、逆を言えば宇宙船外に転移航法装置を設置すれば、1回限りではあるものの超長距離の移動が可能ということになる。これに目を付けたのが、国連であった。

国連は、20世紀の大戦以降、かろうじて世界規模の全面戦争は回避してきたものの、世界に散在する諸問題の解決は一向になされず、限界はだれの目にも明らかであった。そんな折のこの超光速転移航法の完成は、渡りに船。国連は、強引に恒星間移民法を採択し、その責務を盛大にブン投げたのである。

恒星間移民法の大筋は、国家・民族・企業その中心は何でもいいが、とにかく個別に移民船団を構成し、国連が製造する転移航法装置を利用して、移民可能な恒星系へ移民を行うというものである。各船団の転移先については国連が管理し、同じ恒星系を目標にしての転移は禁止される。要するに、小規模な集団には有り余るものを用意し、さらに他者とは光年単位で引き離してしまえば、大概の問題は解決ないし先送りにできる、ということだ。しかし、こんなものは誰がどう見てもハイリスクローリターンの博奕でしかない。何も変わらないだろうと誰もがそう考えた。

しかし、意外にも先進国の多くが手を挙げた。地球というリソースはその範囲を月や火星あたりまで広げたとしても、そう未来があるとは言えなかったし、長くお金を割いてきた外宇宙観測によって、テラフォーミングを経ての移住に関しては、それなりにリスクなく可能と判断できる恒星系を発見できていたからである。日本もその一つであった。
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