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星瞬きし宇宙の海で 第六話 Iパート [星瞬きし宇宙の海で]

 実習ステーションへの航海は、その真の目的が“人質の確保”であったとしても、表面上はあくまでも身動きが取れなくなっている民間人の救助、ということになるが、なにせ、4艦隊は仕掛けた側、救助を申し出る通信を送っただけで、拒否されることもありうる。未成年者が多い場所で、我慢を長く続けるのが難しいのはあるので、いち早く駆け付けるというのは、態度を軟化させる可能性があるくらいだろう。それに賭けるしかない。それゆえに、ステーションへの接触で、彼らを刺激することは絶対に避けなければならない。
 となると、ステーションの鼻先に跳躍するわけにはいかない。戦闘用艦艇がいきなり現れると言うのは、やはり恐怖を煽りかねないからである。しかし、探知されない距離に跳躍して、通常航行で向かうとなれば当然時間がかかるわけで。
「隊長、予定ポイントです。引き返しますよ」
 フィールラインにそう呼びかける絵里だったが、フィールラインは反応せず、機体は慣性で飛んでいく。相転移炉と重力子放射推進を使っているので、戻れなくなるということはないものの、哨戒任務のローテーション等々、間違いなく同僚たちに迷惑は掛かる。絵里はもう一度、強く呼びかけた。
「隊長!!」
「ん、帰投する」
 謝らないフィールラインにイラっとしつつ、自分はターンして帰投コースへ自機を乗せる。しかし、この航海に入ってこういうことが増えた気がする。これが、継世の言う面倒事のおかわりなのだろうとは思うが、こういうことになっている理由によっては、まだまだ序の口なのかもしれない。
「この手の予感が外れることなんか……」
 絵里には大きく肩を落とすことしかできなかった。


 つづく。
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